【連載第6回/2018.01】東京大学 藤本教授エッセイ 「アメリカ人とソーシャルネットワーク」 

東京大学大学院 経済学研究科 教授 
東京大学ものづくり経営研究センター センター長

藤本 隆宏

*レイヤーズ・コンサルティング「ものづくり賢人倶楽部」ファシリテーター

2017年は、4月から8月まで古巣のハーバード大学ビジネススクールに滞在しました。そこで、いくつものセミナーを聴講し、自分もセミナーをやりましたが、印象に残っているものに、4月のハーバード・デジタルイニシアティブ・セミナーで聴いたノースウェスタン大のBoczkouwski教授の「ソーシャルネットワーク上でのニュース消費」という話です。まず、アメリカ人とソーシャルネットワークについて概要を見ておきましょう。

今やアメリカ人の約40%はニュースをウェブサイトからとっていますが、特に18歳から29歳の若年層では、半分以上の人間がニュースを、フェイスブックやツイッターといったソーシャルメディアから得ています。すでにソーシャルメディアはニュースソースとしてはとっくにテレビを追い抜いています。

ソーシャルネットワークを通じて得られるニュースの消費は「インシデンタル・ラーニング(偶発学習)とも呼ばれます。こうした偶発学習は、かつてはニュース商品の周辺部分にありましたが、現在はそれが中心となりつつあります。そして、ネットワークニュースとソーシャルメディアが結合したものが「ソーシャル・ネットワーク・ニュース」です。しかしこの分野は、研究がまだ進んでいない。

ソーシャルメディアには3つの構成要素がある。第一はハードウェア。第2はソフトウェアあるいはインフラで、アクセスプラン、アルゴリズム、プラットフォームなどと呼ばれるフェイスブックやツイッターはこれです。そして、第3は中身つまりコンテンツです。

アメリカでの調査の結果を見ると、アメリカのソーシャルメディアの消費者は、たとえば電車やバスで移動中に、何もやることがない時にフェイスブックやツイッターを非常に短時間使う。寝ている時以外は常に断続的に見ているというに近い状況です。

特に18歳から29歳までの若年層の90%はソーシャルメディアをずっと使っている。一方、コンピューターは仕事以外ではあまり使わいません。この傾向は年齢層によってかなり異なり、若い人は90%がモバイルフォンを使っているが、高齢者の場合はモバイルフォンの比率がより低く、パーソナルコンピューターの比率が比較的高いのです。特にアメリカでは、ツイッターというよりはフェイスブックで、利用率は若い人は55%、60歳以上は35%です。ちなみにツイッターは10%以下インスタグラムも10%以下です。

今日、若年層のアメリカ人は、様々な画面(スクリーンあるいはモニター)に囲まれていますが、その中で最も重要なスクリーンはどれかと言うと、スマートフォンや携帯電話の画面が70%、ノートブックパソコンのスクリーンが20%、その他が10%で、スマートフォンが今やパソコンをも圧倒しているのです。

携帯電話のスクリーンの強みは、バーサティリティー(融通が利くこと)、ポータビリティー(携帯して持ち歩けること)、ユビキタス(どこにでも存在すること)、この3点に集約されます。漫画的に言えば、アメリカの若年層の多くは、寝ている時と教会にいる時以外は、ソーシャルメディアを見続けている。「いや、今や教会内でもだ」と年配者は顔をしかめます。自動車の運転中は当然で、これが交通事故など社会問題にもつながります。

これに対してコンピューターの特徴はインストルメンタルであること、つまり機能的に役に立つことですが、しかし若者がパソコンの画面を見る頻度は下がっています。仕事では使うが、仕事が終わったら使いたくないと考えている人が多いようです。

かくして、いまや若いスマートフォンのユーザは、対面ではなく、こうしたデバイスを通じてコミュニケーションをとることが多いわけです。

では、アメリカ人がこのようにスマホ漬け、ソーシャルネットワーク漬けになっている中で、人々はどのようにしてニュースを見ているのでしょうか。これについて次に考えます。

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