クライアントが抱えていた課題

これまでの主力事業における販売数成長を支えてきた代理店・特約店網は、その数が3000店以上にものぼる兆大なチャネルとなっていた。

市場が成長し、年々販売数が伸びている環境下では、この兆大な代理店チャネルは有効に作用したが、市場成長が鈍化し思うように販売台数が伸びない環境下に突入すると、一転してこの代理店チャネルの非効率性や不透明性が浮き彫りになってきた。

販売数を伸ばすために多くの代理店サポート人員が投入されるようになり、また代理店のモチベーションを高めるためにカンフル剤的な過剰な販売奨励金が各エリア個別に手を変え品を変え投入され続ける、消耗度の激しい戦い方に変貌していた。

それにより、代理店チャネルの利益率は、年々低下の一途をたどっていた。

レイヤーズのアプローチ

非効率な販売プロセスとなっている根本原因として、プロジェクトでは、過去慣習的に積み重なって発生している販売奨励金に着目をした。取引の中で発生する販売奨励金について、ひとつひとつ、活き金・死に金の見極めを行いながら、販売奨励金が有効に作用しているのかを調査していった。

すると代理店によっては13種類もの名目の販売奨励金が張り付いていたが、そのほとんどが販売数成長につながらない値引であることが判明した。このような複雑かつ不透明な取引は、多くの手間がかかり、また組織的な管理が不能になってしまうため、代理店向け価格制度のシンプル化・標準化という形でメスを入れることにプロジェクトフォーカスを絞っていった。

また、そもそもの見積りプロセス自体も抜本的な変革を図っていった。これまでは現地・現地で営業担当者が個別に見積りをしていたが、そのプロセス自体をAI化を図ったのである。人間が見積りを行うと「値引きをする」「スピードが遅い」という問題があるが、AI化を図ることによって、見積もり提示スピードがは早まるとともに、本部が主導でプライスコントロールを図ることも同時に意味していた。

成果と顧客満足

この制度・仕組みの導入前は、代理店からの多くの反発が生まれ取引離反が発生することが危惧されていた。しかし、いざふたを開け、全国の代理店に対して説明を進めていくと、実際は想定以上に代理店から理解が得られ、離反を示唆する代理店の発生数も最小限に抑えられていった。むしろ代理店側はフェアでオープンな取引体系を望んでいたようにも見えた。

一方で、この変化に対応することに難色を示したのが、自社内の代理店営業担当者たちであった。これまで自分達の活動の多くを、値引や奨励金の調整に費やしていた訳だが、その工数はほぼなくなり自分達の活動の向け先を見失いかけでいた。

その余力は、本来やるべきだったエリアマーケティング活動や代理店に対する販売指導やフォローなど、付加価値の生まれる領域へ振り向けることで、代理店及び自社の双方の成長促進につながる形で好転をし始めていくことになった。結果的に数年後には代理店チャネルの利益率は大きく好転していくことになった。