2019/5/24
攻めるダイバーシティ戦略 ~競争力を強化する多様性深化の仕掛け 第2回 ダイバーシティ3.0の導入ポイントは「土壌」とそれを醸成する「リーダー」
※『月刊人事マネジメント2019年1月号』掲載
株式会社 レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部 シニアコンサルタント 尾上 浩介
ダイバーシティ3.0と経営(競争力)強化
施策を効果的に実践するためには“土壌”が必要
成功の鍵は土壌を作るリーダー
ここからは,土壌を作るうえで不可欠なリーダーについて説明したい。これまでのリーダーというと「決められたルールに従って正しく実行すること」に力点を置いた人材(管理者)を指すケースが多かった。こうした人材の場合,制度や仕組みの通りに運用したり,組織内の役割を果たしたりすることはできるものの,個人や組織で発生する日々の変動に対応し進めていくことには不向きである。そこで求められるのが新たなリーダーである。ここでいうリーダーとは「正しいことを自ら見定めたうえで実行できる人材」であり,要件としては「方向づけや戦略立案を行い,自身の率先垂範によって変化を加速させること」が挙げられる(図表2 )。こうしたリーダーがどのように土壌を作るかについて具体的に掘り下げてみよう。まず,「個人」に対しては,頭で理屈が分かってもいざ体を動かそうとするとできないのと同じで,「体で覚えさせる」ことが重要である。その方法の1 つに,リーダーをロールモデルとすることが挙げられる。率先垂範しているリーダーと一緒に仕事をすることで,なぜリーダーのような働き方が必要であり,リーダーの他者との関わり方がどういった効果を生むかをまさに「体で覚えさせる」ことが重要である。次に「組織」に対しては,プロジェクト型組織等になっていたとしても,実際の仕事の仕方が旧来の組織と変わらないと意味がない。そこで,リーダーが組織の特徴を活かすために,仕事の進め方そのものを変えるアクセルとなる必要がある。具体的には情報の収集やステークホルダーへの働きかけなどの「仕事の進め方」を変えることである。そうすることで組織の壁を打破し,組織が連携・協働できるようにするといったことが期待できる。
図表2 “土壌”を醸成する“リーダー”とは
「ダイバーシティ3.0」と掲げると,とかくその施策に目が向きがちだが,「ダイバーシティ3.0」をより効果的に実践するためには,その施策を受け入れる土壌が必要であり,その土壌を作るリーダーこそが重要である旨述べてきた。この意味で,「ダイバーシティ3.0」のKSFはまさにリーダーの育成であるといっても過言ではない。
尾上 浩介: 株式会社レイヤーズ・コンサルティング 事業戦略事業部 シニアコンサルタント
国内電機メーカー人事部門、コンサルティングファーム人事コンサル部門を経て,現職に至る。中期経営計画における人事戦略策定、人事制度構築および導入支援、組織再編(会社統合・分割)に伴うコミュニケーションプラン策定等,人事・組織領域全般のプロジェクトを担当。人事実務経験を踏まえた、制度の現場展開に強みを持つ。Mail: onoe.kosuke@layers.co.jp