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2019年9月6日

パフォーマンスを最高度に引き出す 働き方改革
~ストラテジック・ワークスタイル・デザインのすすめ~
第4回 脳科学で生産性を最高度に引き上げる

※『月刊人事マネジメント2019年8月号』掲載

株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部 シニアマネージャー  若島 薫

 

働き方改革「レベル3」へ

 働き方改革の究極のゴールは「人と組織のパフォーマンス向上」である。この前提で,各企業の取り組みを見ると,働き方改革は3つのレベルに分けられる。レベル1「働かせ方改革」,レベル2「作業の効率性改革」,レベル3「仕事の質の改革」である。現段階の各企業の取り組みはレベル2「作業の効率性改革」が主流だが,先進企業はレベル3「仕事の質の改革」に取り組みはじめている(図表1)。
 すなわち,働き方改革として「作業の効率化」の段階を終えて,人や組織のパフォーマンスを高めようとする取り組みの段階に入ってきているのである。これには目下,2つのアプローチがある。1つは,データアナリティクスであり,もう1つが脳科学である。

 

図表1 働き方改革のレベルと7つのドライバー
 

 

なぜ脳科学なのか?

前回,人と組織のパフォーマンス向上について,データを活用した採用,育成,配置の施策を述べた。データアナリティクスを活用すれば,より適性の高い人材を採用し,最も効果的な育成を仕掛け,最も成功確率の高いチームに人をアサインすることができるだろう。しかしまだこの先がある。 “どうすれば,人やチームのパフォーマンスを最高度まで引き出すことができるか?” そのヒントが「脳科学」にある。
 各企業の働き方改革は,仕事の効率を高めるために,仕事の無駄をなくし,より早くできるやり方に変えてきた。デジタルテクノロジーの急速な進歩により,ロボットやAIなど機械にできることを機械にやらせることが当たり前になりつつある。そうなると,残るのは,人間にしかできない仕事だけだ。結果,手順やルールが決まっている仕事など,誰がやっても同じ結果になる仕事の割合は減っていき,複雑な判断や意思決定が必要なものや,創造性が要求されることが仕事の中心になる。このような仕事の成果は,人のやる気や集中力といった,個人の状態に左右されるのだ。

 

脳科学に基づく生産性向上のヒント

 生産性を向上させるには,人材のやる気を引き出し,集中させ,信頼し合って仕事ができるような仕組みをデザインすることである。脳科学の知見によると,脳内物質が気分や心理に影響することが分かってきている。すなわち,ドーパミンが放出されると意欲や自信につながり,アドレナリンが出ると集中力や注意力が高まる。そして,オキシトシンやセロトニンはチームパフォーマンスを高める安心感(心理的安全性)を引き出す。 従って,脳科学で説明すると,やる気を引き出すにはドーパミンを引き出せばよいのだ。例えば,ドーパミンについて,次のような事実が分かっている。

・ 成功確率が50%の時に最もドーパミンが出る
・ ゴール間近だとやる気が低下する
・ 同じことを繰り返すとドーパミンが出なくなる
・ 自己決定感がパフォーマンスを高める
・ 笑顔を作るとドーパミンが出る
・ 称賛・感謝はしてもされてもドーパミンが出る

これらの知見は,パフォーマンスマネジメントのあり方に対して,大きなヒントになる。

 

脳科学に基づくパフォーマンスマネジメント

 脳科学の知見に基づき,パフォーマンスマネジメントを設計する場合, 3つのプロセスのデザインがポイントになる(図表2)。

【1】目標設定
・ 本人のキャリア選択:何か少しでも自分で決めるという要素を入れること。
・ ストレッチな目標設定:目標は不可能なくらい高すぎても,簡単すぎてもいけない。また,目標の難しさを維持するために,随時,目標の再設定をすること。
【2】サポート
・ 信頼感と安心感の構築:上司と部下の信頼感を構築し,部下が安心して仕事をできる状態にしておくこと。
【3】フィードバック
・ 賞賛と感謝:チーム内で,称賛と感謝を惜しみなく送ること。 

これらを施策に組み込むことでパフォーマンス向上が期待できる。

 

 

図表2 脳科学に基づくパフォーマンスマネジメント
 
 

働き方改革における科学的アプローチの必要性

本稿の主張は,働き方改革のレベル3では,脳科学を活用した生産性向上が重要だということである。しかし,実は,脳はあまりに複雑でその多くはまだ解明されていないのも確かである。従って,重要なのは,働き方改革にあたり,「人や組織のパフォーマンスを高める」をゴールとして設定することであり,このゴールに対して,「科学的に」施策に取り組むことである。科学的とは,仮説を立て,実験をし,検証を繰り返すことである。こうした仕事の仕方やマインドへのシフトが求められるだろう。
 脳科学による働き方改革のアプローチは,文字通り「1人ひとり」の人材の能力を最大限発揮させることを目指すものである。その根底にあるのは,人材は従業員である前に, 1人の人間であるということだ。それは「1人ひとり」の人材の個性と存在に敬意を払い,生物である人間の本質に向き合うことに他ならない。
 
 

若島 薫 : 株式会社レイヤーズ・コンサルティング 事業戦略事業部 シニアマネージャー

大学院卒業後,レイヤーズ・コンサルティングに入社。大手消費財メーカー・食品メーカーの営業改革・マーケティング施策立案等のプロジェクト経験を経て,直近は,大手エネルギー系企業,製薬メーカー,大手メーカー等の人材要件検討,人事戦略立案,組織風土・働き方変革を中心とした人事全体での改革プロジェクトに取り組んでいる。 Mail:wakashima.kaoru@layers.co.jp

「第1回  真の働き方改革とは?~本来働き方はビジネスに従う~」

「第2回 ストラテジック・ワークスタイル・デザイン ~働き方の7つのドライバー~」

「第3回 データアナリティクスの活用による組織パフォーマンスの向上施策」

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