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セミナーレポート

ベンチャーではなく大企業でデジタルイノベーションを起こすための要諦

欧米と同じ道筋では日本にイノベーションは起こせない


株式会社レイヤーズ・コンサルティング 代表取締役CEO 杉野 尚志

最初に、思い起こすたびに胸が痛くなるような事実を、あえて共有したいと思います。1989年、世界時価総額ランキングのトップ50社のうち32社が日本企業でした。そこから約30年が経ち、同ランキングのトップ50社に入っている日本企業はトヨタ自動車1社のみになってしまいました。労働生産性はOECD加盟35ヵ国中、日本は20位です(2015年現在)。次世代を担うスタートアップ企業やユニコーン企業も育っておらず、ユニコーン企業の世界ランキングのトップ10社は全て米国と中国の企業によって占められている状況です。この状況を踏まえ、世界で日本がもう一度輝きを取り戻すためには、大企業がイノベーションの先導役を担っていくしかありません。

では、日本の大企業が至上命題として取り組んでいるデジタル変革で成功するためには、どうすればよいでしょうか? その答えは「新規事業開発」、「既存事業におけるビジネスモデル改革」、「超効率経営」の3つであると考えます。

■大企業でデジタルイノベーションを起こすには、「新規事業開発」「ビジネスモデル改革」「超効率経営」を推進する必要がある。

 

われわれレイヤーズ・コンサルティングは、クライアント企業のさまざまな課題に対し、共に向き合っていますが、私の認識が間違っていなければ、多くの企業では「超効率経営」ばかりに注力しています。RPA(Robotic Process Automation)だけを導入し、デジタル変革を実現したという企業が見受けられます。超効率的な経営を達成するのもデジタル変革ではありますが、「新規事業開発」「既存事業におけるビジネスモデル改革」が伴わなければ本当の意味でのイノベーション実現には至らないでしょう。

 

では、デジタル変革による新規事業開発を成功させるには何が必要なのでしょうか? われわれは「スーパーダイバーシティ」、「デザインシンキング」、「脱城下町」、「企業風土の変革」の4つが必要であると考えます。

 

「スーパーダイバーシティ」とはつまり、イノベーションを創出・デザインし、具現化するための組織・人材づくりです。スーパーデザイナー、スーパープログラマー、スーパープロデューサーという3つの異種人材を擁立・育成することが不可欠になります。スーパーデザイナーは顧客の真のニーズや困り事を基にした体験をデザインし、ストーリーメイキングしていく存在。スーパープログラマーはデザインされた顧客体験を先進テクノロジーで具現化していく存在。そしてスーパープロデューサーは、両者を取りまとめ、事業モデルを創造し、ヒト・モノ・カネをコントロールしていく存在です。この3つの人材を確保するのは容易ではありませんが、レイヤーズ・コンサルティングでは大企業を中心とする400の企業の1,000の変革プロジェクトに携わっている強みを生かし、これら企業ネットワークの活用を通じてデジタル変革に必要な陣容づくりを支援しています。

 

次に挙げた「デザインシンキング」とは、先に述べたスーパーダイバーシティを連携させ、短いサイクルでアイデアの創出・検証・具現化・見直しを繰り返していく手法です。一方、「脱城下町」というのは既存のビジネススタイルからの脱却を意味します。連続的な成長を同質のメンバーでクローズドに進めてきたのが多くの大企業の既存事業であり、当然のように企業城下町のようなものが定まっていました。ところが、デジタルによる破壊的なイノベーションが導く非連続な成長は、多様性を積極的に受け入れながら、オープンな連携の下、不完全なものでもトライしていくことで達成されます。城下町にこだわっていても変革は実現しません。事実、ドイツのSAP社は、「脱城下町」として遠く離れた米国サンフランシスコに変革のための拠点を設け、同時に「企業風土の変革」も実行したことによってコア事業であったERP以外のビジネスが全体の6割を占めるようになったのです。

 

6つの常識の壁を打ち破りビジネスモデル変革を実現

では、冒頭に挙げた「大企業がデジタル変革を成功させるための3条件」の2つ目、「既存事業におけるビジネスモデル改革」を実行するにはどうすればよいかというと、私たちは6つの常識の壁を打ち破ることだと考えています。「時間の壁」、「場所の壁」、「顧客の壁」、「製品技術の壁」、「ニーズの壁」、「提供方法の壁」です。それぞれの事象で今まで常識だと思っていたものが、デジタル変革においては壁となって立ち塞がります。これらを「ぶっ飛んだ事業戦略」によって打ち破る必要があります。例えば白物家電で世界№1のシェアを誇る中国のハイアール社は、ユーザーが投げかけたアイデアを7ヶ月後には製品化して販売を開始しています。

 

以上、「新規事業開発」、「既存事業におけるビジネスモデル改革」、「超効率経営」という3つの条件全てを満たし、同時に実行できたとき、大企業はデジタル変革を成功させることが可能になります。大企業が自らイノベーションを先導し、デジタル変革のための条件をクリアし、なおかつリスクをとって「まず行動を起こす」という姿勢を徹底的に遂行する。この3つのポイントがそろえば、日本は独自のやり方でイノベーションを成功させ、再び世界で輝くことができる。われわれはそう確信して、多くの企業と共にチャレンジを実行していますし、今後さらに多くの企業と取り組んでいきたいと考えています。

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