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2019年6月25日

【vol.1・前編】LAYERS’ Business Insight 「その働き方改革は本質的な働き方を追求しているか」


レイヤーズ・コンサルティングは、1983年に設立した日本発の独立系のコンサルティングファームです。本連載では、企業が直面している経営課題に対し、第三者として客観的に分析するとともに、これまでの経験と今後の潮流をふまえ深く考察していきます。
 初回のテーマは「働き方改革」です。戦略人事の第一人者でありダイバーシティ推進に取り組むpeople firstの八木洋介氏と、長年の海外駐在経験をもとにCIOとしてグローバルにIT人材活用に取り組まれているコニカミノルタの仲川幾夫氏に意見を交換し合ってもらいました。今、日本企業に求められている「働き方改革」について、本質的に何を変えていくべきなのか? その変革を実現するために何が必要なのかについて、前後編の特別対談でお届けします。
●聞き手|佐藤隆太(レイヤーズ・コンサルティング)

政府が推進する「働き方改革」で
生産性は向上するのか

佐藤隆太(以下、佐藤) 日本の労働生産性は、世界各国と比較して「非常に低い」と以前より言われています。この原因は何だとみていますか。また、政府が推進する「働き方改革」で生産性は向上するものなのでしょうか。

八木洋介氏(以下、八木) 日本の大企業のほとんどが、未だに年功序列、終身雇用、それから職能資格制度という昭和30~40年代の制度を使い続けています。これでは生産性は上がりません。その仕事に必要のない人材だと本当はわかっていながら、その人を昇格させていく制度だからです。

八木洋介(やぎ・ようすけ)
株式会社people first代表取締役。1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。National Steelに出向し、CEOを補佐。1999年にGEに入社し、複数のビジネスで人事責任者などを歴任。2012年に株式会社LIXILグループ 執行役副社長に就任。Grohe, American Standard, Permasteelisaの取締役を歴任。17年より現職。経済同友会幹事。現在、東証一部上場企業などのアドバイザーを務めている。著書に「戦略人事のビジョン」。活発に講演活動を行い、雑誌などに記事多数。

 日本の生産性はアメリカやドイツに比べて40%ほど低い状態です。「あー忙しい、あー疲れた」と、長時間働いているように見えますが、実際は無駄な仕事だらけ。挨拶といえば「お疲れさま」。こんなことをやっていたら、グローバルで勝てるわけがない。

 日本的経営の象徴と言われた、これらの制度や仕組みが生産性向上の足を引っ張っていることはみんなわかっています。でもやめられない。

 その中で、政府が「働き方改革」を推進している。ここでは「長時間労働」の改善に主眼が置かれてしまっています。働き方改革の本丸は、「無駄なことはやめよう」「より効率的に仕事をして、高いプロフィットを上げよう」というところに置くべきです。

仲川幾夫氏(以下、仲川) 日本で言われている「働き方改革」が残業規制や時短を意味するなら、欧米から考えると「働き方改革」以前のことを言っていることになります。それより、「生産性の向上」、それによって得られる「創造性の向上」、究極的には「事業の持続的な成長」への貢献が無ければ企業にとっては意味がありません。

仲川幾夫(なかがわ・いくお)
コニカミノルタ株式会社常務執行役。デジタルワークプレイス事業部・IT企画部(CIO)・DXブランド推進部を管掌。ミノルタ株式会社に入社後、海外営業に携わり、香港、米国の販売会社駐在を経て、2003年にはコニカミノルタUSA上級副社長として、コニカミノルタUSA販社の経営統合を推進。米国で買収した米国上場企業の会長職を経て、2009年にコニカミノルタホールディングスUSA社長、2011年にコニカミノルタ中国社長、2014年にコニカミノルタ欧州社長兼本社執行役を歴任。2018年4月より現職。

 働く人々のEngagementを向上させ、生産性を上げ、想像力を発揮できる時間を作っていくこと、国内だけでなくグローバルで人材を獲得し、育成することに目を向けていかないと日本のグローバルでの競争力はますます遅れをとっていくことになると思います。

 ドイツに住んでみてドイツの生産性は高いことを実感しましたが、仕事の目的が明確で、役割・責任も明確であるからこそ、決められた時間内でOutputも出せて、休暇もしっかり4週間取ることができるのだと思います。

八木 政府から出てくる資料が「長時間労働の是正」や「非正規社員の問題」に偏っていて、「そういうものを社員のためにもう少しクリーンにしていこう」という話になっている。社員の視点から見たそういうアプローチが別に悪いことだとは思わない。だが、産業界の人たちは社員視点の「長時間労働の是正」「残業削減」だけではなく、企業として「働き方改革」を経営に生かしていくという視点をもっと持たなければならないと思っています。

 産業界にいる人たちは、「本質的な働き方とは何だろう」というのを、自分たちの頭を使って、その「本質的なところを掴まなければダメだ」と、私は言っているのです。「働き方」を改めて生産性を上げるにはどうすればいいかと考えれば自ずと答えは出てきます。

グローバルの視点で
人材を活用することに尽きる

佐藤 「働き方改革」、さらには「生産性の向上」において、多様性や創造性のある職場づくりのためのダイバーシティへの取り組み、生産力強化のための人材育成・開発も重要なテーマの一つかと思います。例えば、デジタル戦略という側面で日本企業が取り組むべき課題についてはどうお考えですか?

佐藤隆太(さとう・りゅうた)
株式会社レイヤーズ・コンサルティング 事業戦略事業部 マネージングディレクター。消費財、流通、情報・通信、ヘルスケア業界等の上場企業を中心に、事業戦略、マーケティング戦略、営業改革、新規事業開発、M&A戦略、組織改革のプロジェクトを責任者・リーダーとして多数手がける。

仲川 日本企業は日本だけを見ているのではなく、グローバルでの視点で人材を活用しないといけないと思います。私はアメリカやヨーロッパ、中国の人も含めてマネジメントする立場にあります。したがって、適材適所という面で見ると日本ではなく、ITやデータというとやはりアメリカやインドになる。そういう人材をもっとグローバル視点で見て活用していかないと、日本だけ見ていたら競争力は上がっていかないと思います。

八木 「分け隔てなくベストな人材を使う」。それがグローバル化です。それに尽きます。なぜ多くの日本企業は相変わらず日本人ばかり使っているのでしょうか。日本側は、英語ができないし困るから日本人がいた方が便利だって思って送り込むが、現地では「日本人のスパイが来た」と思っている。それでは信頼感のある経営はできない。私が言う「グローバル」は、いろいろな人がいる「ダイバーシティ」(多様性)を活用して分け隔てのない経営をすることです。

仲川 「ダイバーシティ」は欧米や中国では当たり前のことで、日本に帰ってくるまであまり意識したことがありませんでした。グローバルでの人材獲得、育成、人材開発も日本企業にとって、必須のことです。日本だけでDX人材の獲得は難しく、グローバルで適材適所を考えてみるべきだと思います。

八木 グローバルの観点で見て、ポジションに最適な人材がアメリカ、ヨーロッパや中国にいるなら、その人たちを雇用し、分け隔てなく活用する。こんな当たり前のことを、なぜやらないのか、不思議でなりませんね。

仲川 私がドイツでIT・デジタル人材を採用しようとしたときの話です。ドイツはワークス・カウンシル(労使協議会)があるのでなかなか人を解雇できなかったりする。そこで、たとえばチェコ共和国でM&Aした会社でIT・デジタル人材を採用し、その人材を活用してドイツ社内のITもカバーしていくようなこともやりました。

 日本でも同じようなことをやろうと言っています。インドの子会社のIT人材が非常に優秀で、そこで人材を採用して、日本のITもカバーしてもらってはということを言っています。そういうことをしていかないと、日本だけでIT・デジタル人材を集めようとしても非常に大変で、無理があるのです。

働き方改革は
自分ゴト化して本気で推進する

佐藤 働き方改革を推進していくには、自分たちの働き方に対する従業員の考え方、思想を変えていかなければなりません。グローバル競争力を高めるために、多くの企業が次世代リーダーの育成や社員教育に力を入れています。これについて、コニカミノルタ独自の考え方や具体的な取り組みについて教えてください。

仲川 もちろん強力なトップダウンとリーダーシップも必要条件ですが、関係者を巻き込んで、皆に自分ゴトと思わせて推進しなければ長続きしません。

 当社では、2015年からGlobal Engagement Survey(GES)を行っており、その結果に対する取り組みは、ヨーロッパで言えば、約30カ国それぞれで自分ゴトとして、フォローされています。

 コニカミノルタでは2013年に持ち株会社と事業会社を統合した際に、グローバルで欧米人も中国人も巻き込んで策定した「6Value」(Open and Honest, Inclusive and Collaborative, Passionate, Accountable, Innovative, Customer Centric)を定着させる取り組みが始まっています。このうちOpen and Honest、Inclusive and CollaborativeでGESに真摯に向き合って、対策を取っていくさまざまな取り組みが行われています。

「Guiding Principlesという原理原則に適っていれば、現場で物事を決めてもいい」と日本の経営者は海外に向けても発信しています。ヨーロッパには約30カ国に会社があるのですが、言葉も違う中で、すごく浸透していてびっくりしました。「6Value」が隅々まで浸透し、みんなが自分ゴトとして理解している。すばらしいことだと思っています。

八木 本気だったから浸透したのだと思いますよ。だって、どこの会社だって「Value」はよく似ています。違いは、本気かそうじゃないかです。コニカミノルタさんの経営陣は自分の個性をしっかり出して経営されている。言ったことをちゃんとやる。

 グローバル=ダイバーシティと言えます。ダイバーシファイした組織のいちばんの危険性はバラバラになること。バラバラにしたくなければ、共通のビジョン、共通のミッション、共通の戦略、共通のバリュー、そういうところできちんと同じ基盤を作って、その上にダイバーシティを乗っけないとおかしなことになる。そこをきちんとわかっている会社かどうかということだと思います。

佐藤 そこまで浸透させた具体的な施策はあるのでしょうか。

仲川 アンバサダーというものをそれぞれの国に作りました。その人たちがとにかく「6Value」を浸透させるために働く。人事部門の人だったりマーケティングの人だったり、国によって違いますが、とにかく彼らのミッションは「6 Valueをそれぞれの国で浸透させる」こと。それが一年目でうまくいった国もあれば、なかなかうまくいかなかった国もありますが、ヨーロッパの場合は成功事例をみんなで共有して、「こういう活動をしていったら浸透する」というのが広がり、割とうまくいったのかなと思っています。

佐藤 「目標に対してどうか」ではなく、「6Valueでどうだったか」と、目標設定や評価基準もグローバルで統一されていたということですね。

八木 よく「企業文化は簡単には変えられない」と言う人たちがいますが、「経営を文化にするな」と言いたいですね。文化というと「伝統を守って」となる。しかし、われわれは環境が変化する中で、お客さまに受け入れられる商品を作って売っている。どんどん変化する環境に適用しようと必死に努力しているわけです。

「文化」とは、戦略を実現するための企業風土です。環境が変わって戦略が変わったら企業風土だって当然変えなければならない。だからそれを「文化」というから、「文化を変えるのは難しい」とか言い始めるのです。「文化」なんて、変えるのは何にも難しくない。グローバルで勝ち続けている会社は、やっているのですから。

(後編)「階層はもう不要、グローバルで勝てる働き方改革とは」

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