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2019年10月28日

【vol.3】LAYERS’ Business Insight 「企業価値を高める『構え』と『打ち手』とは?」

 レイヤーズ・コンサルティングは、9月13日(金)に東京會舘で、「『社会価値創出』に繋がる 『次世代企業価値向上経営』のあり方」と題したセミナーを開催いたしました。
「企業価値向上の新機軸」と題した弊社講演の内容をご紹介いたします。

SDGsに向き合うのは当たり前

 昨今のSDGsの潮流を踏まえ、日本企業に対して「社会」への向き合い方が再定義されました。2016年までの経団連の行動憲章は「企業は経済社会の発展を担うとともに、広く社会にとって有用な存在でなければならない」と、“社会に有用な存在”という定義は脇役でした。しかし、2017年以降、「企業は社会に有用な付加価値および雇用を創出し、持続可能な社会の実現を牽引する役割を担う」と謳われ、完全に社会的企業価値が主役となりました。つまりSDGsに向き合うか、向き合わないかではなく、向き合っていくのが当たり前の時代なのです。

「次世代企業価値」向上経営の三つの切り口

1.どこをゴールに置くか?
 企業はこれまで経済価値を最優先にしながらCSR配分とのバランスを取ってきましたが、今は潮目が変わり、まず社会価値を追求し、結果として中長期的に持続的な経済価値を得ることが求められています。

2.誰に対する価値創造なのか?
 これまでは米国的な株主至上主義と日本的な「三方よし」が対比されていましたが、ステークホルダーエンゲージメントでは、取引先、株主・債権者、地域社会、顧客、従業員の『全方よし』が求められています。
 SDGsの17の目標すべてにトライはできませんが、自分たちの強みを生かせる領域で社会価値ドメインを設定し、社会に向けて高らかに宣言するのが第一歩と考えます。そして共感してくれるステークホルダーと一体となり、価値提供を目指すことで、『次世代よし』につなげます。長期的には、利便性、快適性だけを追求する製品やサービスを提供する発想ではなく、社会価値創造につながるモノ・コトの提供を通じ、お客様の行動・生活を変えて、次世代をお客様と一緒に創っていくべきというのが、私どもの提言です。

3.経営の論点である価値向上
 現有の人材、調達などのリソース、資源をどう最適配置するのか。オペレーションとしては、統制、ガバナンス、指揮命令系統をどう構築するかが従来の経営の論点でした。ガバナンスには建設的対話が重要ですが、私は少し違和感があります。対話とは、双方が向かい合うイメージですが、対立のイメージを取り払うために、「融話」という造語を作りました。「融話」とは、仲間意識を持ち、心から打ち解けてコミュニケーションを取るイメージです。ステークホルダーと建設的に議論を進める際にも「対話」ではなく、「融話」が大切だと考えます。そして、社会価値の意義・アンビシャス(独自の社会価値ドメインで何を成し遂げるか)をどのように掲げ、世の中の戦力(ナレッジ・エネルギー・カネ)を「この指とまれ」で結集させ、一歩ずつ価値を共創し、実現させていくかが経営の新たな論点になります。

 続きまして「次世代企業価値」を高めるための実践として、『構え』と『打ち手』に分けて話を進めていきます。

金元 伸太郎(かねもと・しんたろう)
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
経営管理事業部 副統括マネージングディレクター

製造・流通・サービス業等の数多くの業種・業界の上場企業に対し、コーポレートガバナンスの整備、中期経営計画の策定、グループ企業価値向上のためのコーポレート部門の改革、グローバルでの経営管理制度構築など経営層・経営企画・財務経理や人事部門等の経営課題に関するコンサルティングに多数従事。
また、成長戦略策定からオペレーション改革に至る一気通貫でのプロジェクト等、責任者として多数実施。

「次世代企業価値向上経営」実践の『構え』のポイント

1.理念との整合・再考
 SDGsへの取り組みが求められる中、脳である理念と、手足である現場が、バラバラになっているところを構え直さなければなりません。経営のど真ん中、つまり、理念や行動原則・規範に社会価値やサステナビリティを据え、企業の原点・パーパスに立ち返り、独自ターゲットを設定します。日本企業はSDGsと親和性の高い理念を持つ企業がほとんどです。しかし、ボードメンバーの中には利益優先で社会価値を理解できない方もいらっしゃいます。理念と結び付けて言語化し、幹部全員の心根を合わせ、コミットメントすることがまず重要なプロセスになります。

2.「潮流」をつくる仕掛け
 従業員の実感からスタートし、自分事化して、実践・行動できる環境を整備します。イノベーションのアイデアを募る社内コンテストを行ったり、SDGsのゴールに対して目標を宣言し、SNSから盛り上げる仕掛けを作っている企業もあります。中期のサステナビリティ指標や評価・報酬制度の改定なども人事部門は取り組まなければいけません。人事面からモチベーションを上げようと取り組む企業も出てきています。

3.推進組織の位置付け直し
 弊社が66社を対象に行った調査では7割近くが2018年以降、組織を見直していました。CSRからサステナビリティへ組織名を変更したり、社長・取締役直轄組織への建付けの変更が主でした。SDGsなど社会価値への取り組みを経営のど真ん中でやるためには、中心的な立ち位置で推進しないと盛り上がりません。SDGsの担当者を経営企画の中に配置する企業も増えてきています。メンバー構成も、先進的な欧州や国連に近い距離感にいる北米の役員を入れている企業が機能していると感じます。

 執行アクションとなる『打ち手』につきましては、社会的課題解決につながる新規ビジネスの創出、既存事業の見直し、最後には戦略的融話のコミュニケーションに分けて話します。

社会課題解決につながる新規事業創出のポイント

1.トップ直轄の枠組み構築が成否の分け目
 新規事業を立ち上げる際、アイデア、中身、オペレーションを検討することはもちろん大切ですが、それと同等、またはそれ以上に「どのような体制で検討を進めるか」が成功を左右する重要なポイントです。

 一つ目の要件は、社長直轄のプロジェクトであること。大企業のボードメンバーになっている方々は既存の事業の枠組みで成功されている方がほとんどです。その方々が経験のない分野について適切な判断を下すことは困難です。よって社長自ら決断をしてもらえるプロジェクトでなければ、なかなか前に進みません。社長直轄の枠組みを構築するために時間を費やすことは、中身を考えることと同じくらい重要です。

 二つ目の要件は、人財・場所・評価を既存事業と分離することです。100億円の事業を101億円にするよりも、ゼロから1000万円を生み出す新規事業の方が難しいのですが、これらを同じフィールドで進めると、うまく進みません。世界的には、シリコンバレーなどに新規事業の舞台を移す傾向がありますが、日本型で成功の可能性が高まるのは「SOUPの冷めない距離」に拠点を置くことです。トップや社員に立ち寄ってもらい、事業内容を知ってもらうことで手助けをしてもらいやすい環境を作れます。異なる場所に拠点を置きつつ、適度な近さなのがポイントです。

2.周囲(社内・社外)の巻き込みを推進力のエンジンにせよ
 私どももドローン事業を行っておりますが、月例の全社会議で定期報告をしたり、アライアンス先と共同でプレスリリースを出しています。プレスリリースなどで、半年間で約6000万円の広告費換算効果を出しましたが、ドローン事業のように世の中全体に認知が高まっていない事業は、自治体や住民を巻き込むことで、自分事にしてもらうことも重要になります。

3.社会課題解決型事業を発想するアプローチ
 このアプローチには、二つの手法があります。

 一つ目の手法は、未来を見定めて逆算するアプローチです。PEST(Politics、Economics、Society、Technology)要因を整理し、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と呼ばれるグローバルディスラプターなどの動きから 未来の「兆し」は見えてきます。そこから10年後の未来シナリオを数パターン立案し、そこを起点として課題を見つけ、解決する方法を探る発想です。PESTの中であらかじめ決まっている要因を整理し、未来を左右する分かれ道となる要因をいくつかに分け、それぞれシナリオを作ります。

 二つ目の手法は、スーパーダイバーシティアプローチです。新しいデジタルテクノロジーと自社の強みを活かし、イノベーションの創出を目指します。社会課題を解決するための新規事業は営業、経営企画など特定の部門だけではできませんので、どのような人員、体制をつくるかが重要になります。私どもはスーパープロデューサーという役割を担い、スーパーデザイナー、スーパープログラマーという機能を持った方々と新しく発想していきます。スーパープロデューサーはヒト・モノ・カネを手配し、全体をコントロールします。スーパーデザイナーは顧客価値と顧客体験を作りこみ、消費者に分かりやすく、新しいビジネスのストーリーメイキングをします。スーパープログラマーは設計された顧客体験をアプリなどのデジタルテクノロジーで具体化します。このような三竦みの体制で検討するのがスーパーダイバーシティアプローチのカギとなります。

4.マネタイズを片時も忘れるな
 最後に、新規事業においてマネタイズはPoC(Proof of Concept)の企画段階から片時も忘れてはいけません。PoCの前にマネタイズの仮説を立て、PoCを通じて、顧客の価格感を検証していきます。また、PoCの前後で投資回収計画のスクリーニングを実施し、サービスオペレーションを一から作っていく上で、徹底的にデジタル技術で効率化を図ります。PoC段階でも可能な限り課金をしたり、補助金を活用することも重要です。

草加 好弘(くさか・よしひろ)
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部 統括マネージングディレクター

自動車、精密機械、食品メーカーなどの製造業、情報通信、不動産、商社、リース等のサービス業を中心とした上場企業に対し、ビジネスモデル変革、事業戦略、業務改革、営業強化プロジェクトの責任者として数多く参画。直近ではドローン事業自体の経営やPoCも主体的に実施。講演・執筆も多数。

既存事業を社会価値の点でどう評価するか

 国連のSDGsコンパスというフレームワークがあります。これを用いて事業のInput、Processの場面でどのようなリスクがあるかを評価します。サプライチェーンを横断的にどれだけリスクがあるかを見つめ直して評価し、社会に悪影響を与えているサービスは大胆にモデルチェンジをしていかなければなりません。「できる」「できない」ではなく、「やろう」と手を打つアプローチです。一方、メーカーなどはOutputで終わりではなく、商品の市場投入後の悪影響にも目を向けて、手を打つことも重要です。Outcomeとは社会への真の成果で、SDGs貢献指数となります。SDGsのソーシャルインパクトに関しては一企業では難しい部分もあるので、やわらかな結びつきになりますが、Outcomeで社会に対しての貢献指標を設定し、数値検証が可能なものでマネジメントしていく経営管理が必要です。Outcome、Social Impactのほとんどは短期で成果は出せません。緻密に数字を追いかけるのではなく、いかに事業責任者やミドルが野望を持って、打ち出すスタンスを持てるかがカギです。(図表1)

<図表1:社会価値視点での既存事業評価・モデルチェンジ>

戦略的「融話」からの価値共創

 これまではオールステークホルダーといえども、従業員は人事、株主はIR、お客様は営業などとそれぞれの役割で価値提供をし、コミュニケーションを図ってきました。そして各部門でステークホルダーの声やフィードバックをいただき、CSR部門がそれをまとめ、取締役会で議論をしてきました。しかし、これからは社長直轄の組織(例えばサステナビリティ推進部)が自ら出向いてステークホルダーと直接「融和」を行い、世の中の枠組み作りに積極的に参画し、価値共創をはかっていくことを提言したいと思います。N=1で個々のステークホルダーと融話をすることで、その価値観に迫り、得たものを経営に生かすスタンスが重要になります。

「MZ世代」を主役に社会価値創出を

 ミレニアル世代では、63%が「企業の主たる目的は利益をあげることではなく、社会を良くすることだ」と考えている調査結果があります。ジェネレーションZの教科書にはSDGsの内容が盛り込まれます。次世代はSDGsを幼少期から学んだ 「SDGsネイティブ」がビジネスを動かす時代になるでしょう。もちろんSDGsの実践にはトップダウンも、ボトムアップで機運醸成をすることも、ミドルアップも、ミドルダウンも重要です。それとともに、ミレニアル世代とジェネレーションZの「MZ世代」が主役となって、新たな企業の社会価値創出を進めていくべきだと考えます。

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