マトリクス経営管理

マトリクス経営管理とは、事業の多角化やグローバル化に伴い製品軸、顧客軸、地域軸などの観点からマトリクス組織(それに準じた組織)を採用している企業において、複数の観点から多角的にマネジメントを行うための体制・制度・マネジメントメカニズムなどを構築してPDCAを回していくことです。

事業の多角化やグローバル化に伴い、経営環境の複雑性や不確実性が高まっている企業グループにおいては、マトリクス組織(それに準じた組織)による多角的なマネジメントを行う必要があるため、マトリクス経営管理の重要性も高まっております。

レイヤーズでは、事業の多角化やグローバル化の進展を踏まえたマトリクス経営管理のあるべき姿や具体的な経営管理体制、各軸における事業責任者の権限・責任と業績管理制度、PDCAサイクルを支えるマネジメントメカニズムなどを構築するコンサルティングサービスを提供しています。

事業の多角化・グローバル化に伴う環境変化

多くの日本企業は、多角化や海外進出を推し進めているものの「真の多角化企業・グローバル企業」としては思うように成長できていません。それは、1,000倍の環境変化への対応が出来ていないからです。
 
例えば、グローバル化においては、単一的な国内から海外へ進出すると、
 

  • 顧客で10倍
  • 競合で10倍
  • 自社で10倍

 
それぞれ10倍の複雑さに直面します。
 
つまり、10×10×10で1,000倍の環境変化への対応が必要になります。
更に、VUCA(Volatility:変動、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)時代を迎え、変数自体が増加するとともに、各変数の予測も困難になっています。
 
そういった複雑かつ予測困難な環境変化に対応するには、従来のマネジメント体制では限界があります。
 
顧客・競合の外部環境変化への対応力を高めるとともに、内部環境としての複雑化する自社の経営管理力の高度化を両立させる、多軸でのマネジメント体制が求められます。

【図1】1,000倍の環境変化

マトリクス経営管理を実現する上での重要視点

1,000倍の環境変化に対応するには、事業軸/顧客軸/エリア軸/機能軸等の様々な軸での視点が必要となります。
従来の事業別組織での意思決定では、これらの変化への対応は難しく、多軸の組み合わせによるマトリクス型のマネジメント体制が必要となってきています。
 
ここでは、こうしたマトリクス経営管理を実現する上で特に重要な視点を3つご紹介します。
 
① 縦軸と横軸の業務分担の明確化
② マトリクス管理会計の実現
③ マトリクス組織を支える仕組みの構築

縦軸と横軸の業務分担の明確化

管理軸が増えていくと、組織の意思決定が遅れ、社内調整作業が増えていくリスクがあります。
 
特に、
 
マトリクスの交点にいる2ボスマネージャーの意思決定プロセスをどうするか?
どちらかの言うことを聞くのか?

対立した場合の解決方法は?

 
といったコンフリクトが起こります。
 
そういった縦軸・横軸のコンフリクトを回避するためには、特に、縦軸・横軸の責任者、及び交点にいる2ボスマネージャーの権限・責任を明確にすることが必要となります。

【図2】縦軸・横軸のコンフリクトの回避

マトリクス管理会計の実現

全社最適の意思決定を実現するためには計数によるマネジメントが欠かせません。
製品・サービス×顧客・エリアといった縦軸×横軸のトレードオフ関係を会計数値(PL/BS/CF)で捉え評価できることは全社最適の意思決定の必要条件になります。
 
例えば、製品・サービス軸で開発・生産・販売機能、売価決定権を保持した場合、製品・サービス軸を主軸とし、本社費を配賦した税引前利益で管理します。それに対して顧客軸では、販売費の効率的投資による顧客開拓と製品ミックスの最適化を目指し、貢献利益での管理とします。

 

このようにグローバルの戦略実行・目標達成に向けて縦軸・横軸の整合を図り、成長を加速させるためには、マトリクス管理会計を構築することが必須となります。

【図3】PL・BS・CF管理による戦略・目標達成の整合担保

マトリクス経営を支える仕組みの構築

マトリクス経営管理を実現するためには、上記の役割分担・管理会計といったプロセス・制度の構築に加え、各種の仕組みの構築が必要となります。
 
特に“連結経営管理システム等の構築により情報を統合していくこと”はマトリクス経営における必須条件と言えます。
グローバル化に伴い情報も分散化されていきます。事業ごとにバラバラな情報ではコーポレートが事業に横串を通し、全社最適での意思決定を行うことは難しくなるばかりです。
 
一般的には、基幹システム更改にあわせ情報の集約・統合を目指しますが、それには、多くの期間と投資を要します。環境変化の多い中、まずは分散化されたままでも各社との情報連携基盤を築き、各社情報を共通定義された情報に読み替えて統合化し、完璧ではなくとも活用していくことがポイントになります。

【図4】マトリクス経営管理を支える7つの仕組み

レイヤーズのマトリクス経営の構築ステップ

レイヤーズでは、下記のステップでマトリクス経営管理の実現を推進しています。
 
STEP1:グランドデザイン策定(コーポレート・事業のミッション・役割の定義 等)
STEP2:マネジメントの仕組み検討(会議体、組織体、経営管理システムの検討 等)
STEP3:実行計画の策定(To-Be計画、Can-Be計画 等)
 
まずは、「経営として、またビジネスとして、何のためにマトリクス経営管理を実現していくのか」のグランドデザインを策定します。その上で、実現のためのマネジメントの仕組みを検討し、すぐにできること(Can-Be)、中長期的に実現すること(To-Be)を明確にし、実行をしていきます。
大がかりなシステム更改を待たずして、既存のシステム・業務の中ですぐ効果が出せそうなこと(=Can-Be)を明らかにして進めていくことが重要です。

【図5】マトリクス経営の構築ステップ

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