VUCA時代の経営管理
~各企業はどのように取り組んでいるか~

近年の企業を取り巻く環境は、コロナ禍にはじまり半導体不足やロシアによるウクライナ軍事侵攻など、まさに先の見えない激動の時代=VUCA時代にあるといえます。
今回はVUCA時代の経営管理のポイントをご説明するとともに、各企業がどのように経営管理の高度化に取り組んでいるのかも併せてご紹介いたします。

VUCA時代に求められる経営管理とは

先日、ある企業の方がこんなことを話していました。「ロシアの軍事侵攻を受けてロシア向け出荷状況を調べたが、国別の出荷データがすぐに収集できず、手作業で調べるのに大変な時間がかかった。」
これまでの安定した事業環境においては中長期目線での計画を立案し、それを四半期・年次といった周期でモニタリングしていくことで十分でした。しかしVUCA(Volatility:変動、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる今の時代では、計画や目指す姿に対して逐次観察(Observe)し、迅速な情勢判断を行うことが経営の舵取りにおいてより重要になってきています。日々刻々と事業環境が変化する世の中において、現況を見極めることができなければ計画の良し悪しを判断することも、次のアクションを取ることもできません。冒頭の企業は、手作業とはいえデータが存在していたのはまだよかったと言えるでしょう。
また昨今では2021年6月のコーポレート・ガバナンス・コード改訂にもあるように、「サステナビリティを巡る課題への取り組み=非財務情報の開示」が求められています。非財務情報においても情報開示に留めるのではなく、非財務情報が企業価値にどのような影響を与えるのかを注視し、財務情報との関連付けや財務・非財務の2軸によるマネジメントを行うことで、より適切な経営判断を行うことができると考えます。

【図1】VUCA時代の経営管理

早期に経営に貢献するためのポイント

では、迅速な情勢判断が行えるような経営管理を実践するためにはどうすればよいのでしょうか。グループの各所に点在しているデータをExcelでかき集めて予算や実績を掴んでいるケースはまだまだ多く見受けられます。しかしそれでは収集や集計に労力を費やし、分析や施策検討を十分に行うことができません。一方でグループ全体のシステムを統合してデータを一元化することは、理想的ではあるかもしれませんが莫大なコストと時間を要します。日々情勢が変化する昨今において、少しでも早く経営に必要な情報を把握するためにも、To-Beとしてのあるべき姿を描きつつクイックで実現できる現実解の姿(Can-Be)を導き出し、実現にこぎつけることが重要です。
その際、100点満点を目指していては早期に実現することが困難になってしまいます。既存システム・既存データを可能な限り活かしつつ、経営の判断を誤らないレベルに目的・品質を絞り込み、まずは60点でもいいので経営に情報をもたらすことを狙う、という姿勢が重要になります。例えば地域・製品階層・得意先・勘定科目など、どのレベルであれば経営としての意思決定が可能になるのかを見極めた上で実現可能な範囲から取り組んでいくことがポイントになりますし、そのレベルに応じて簡易DBの構築による実現やグループ間インターフェースシステムの構築による実現など、実現方法も変わってくるでしょう。

【図2】クイック導入の現実解に向けたアプローチ

企業が直面する課題や取組推進事例

それでは、経営管理の高度化に向けて企業はどのように取り組んでいるか、どのような課題に直面しているか、何点かご紹介いたします。
まず、多くの企業の方からお聞きする課題として、「海外グループ会社の情報取得」が挙げられます。「海外子会社はシステムが異なっており、詳細情報が入ってこない」「親会社と同じパッケージシステムを使っていても、勘定科目や製品軸が異なっているためデータを取得しても十分活用できていない」などの悩みを抱えている企業が散見されます。
一方で取組を推進している企業では、「ERPのグローバル統一を推進、システムが異なっていてもDB化を推進してリアルタイムに近い状態で業績を把握している」「グループ会社で異なるシステムを使っていてもインターフェースシステムを通してグローバル統一の実績を把握している」「通常の損益データだけでなく、受注情報や品質・デリバリーに関する詳細情報をデータ化し活用することにトライしている」といった状況も見受けられます。
海外グループ会社の情報取得に苦戦している企業がまだまだ散見される一方で、システムの統合以外にも各社で工夫しながらグループ会社の情報を取得して経営の意思決定に結び付けている、という企業も増えてきております。

非財務情報の経営管理実現に向けて

非財務情報に関しては、まだまだ発展途上にある企業が多いと見受けられます。主管部門を設置して情報の取得・開示に取り組んでいるものの、「部門ごとに個別にマニュアルでデータ収集しており、精度が担保されていない」「財務データとの整合性が把握できていない」という状況で試行錯誤している様子が窺えます。
冒頭にも記載したように、非財務情報と企業価値への影響を結び付けることや財務・非財務の2軸によるマネジメントを行うことで、より適切な経営判断を行うことができると考えます。そのためにも、非財務情報と現場の活動・施策を結びつけるようなKPIマネジメントの設計や、ROEなどの財務指標に紐づく現場活動のKPIと非財務指標に基づく現場活動のKPIを結び付けてそれぞれのトレードオフや相互関係を明確にしてマネジメントの舵取りを行っていくことが重要になってきます。

【図3】ROE×ESGの2軸のKGI・KPI設定

この記事に興味をもったらメールで送信して共有! ×

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。