2012/2/1

第6号:日本企業が直面する課題とその解決に向けて

#トピックス

日本企業が直面する課題とその解決に向けて
「①ビジネスモデル変更の必要性」に対する「新グループ経営管理」のポイント

前号では、グローバル経営が要求される中で日本企業が直面する課題として、
①ビジネスモデル変更の必要性
②グローバルでの競合企業が続出
③アウェイでの戦いを強いられる
の3点について説明して参りました。

今回は、「①ビジネスモデル変更の必要性」に対する「新グループ経営管理」のポイントについて、掘下げて議論させて頂きたいと思います。

日本企業各社は、ビジネスモデルの再構築を迫られています。
既存の事業を起点としつつ、「ターゲットとする市場・顧客」や「製品・サービスの売り方」を急ピッチでがらっと変える企業が益々増えています。例えば、「単体製品のモノ売り型事業」から「モノ+サービスの複合価値提供事業」へのシフトや、「地域限定事業」から「グローバル横断事業」への拡張等です。

今までにないスピードでの環境変化・ビジネスモデルの変革に対して、とかく経営管理の仕組みの整備は置いてかれがちです。グローバルでのグループ経営管理も、今までとは発想を変えて、柔軟に見直していく事が求められます。

 ■ポイントその1:新たなプロフィットセンター、コストセンターの設定
グローバル化で従来と市場・顧客を変えていくビジネスモデルにおいては、プロフィットセンターを顧客・市場軸で設定することが必須になってきます。
また、顧客自体も特定エリアに居座る訳ではなく、どんどんグローバル展開するわけですから、ローカルアカウントとグローバルアカウントを区別して管理し、グローバルアカウントに対しては地域横断で名寄せ・合算してプロフィットを捉えて、対策を講じていく事が求められます。

 「モノ+サービスの複合価値提供事業」では、モノ(製品軸)の管理に加えて、サービス管理の必要性が高まるため、コストセンターは製品軸と機能軸で設定し、サービス機能に対するコスト管理を強化していく事が求められます。
サービス機能強化にあたっては、サービスの内容・質は顧客によって様々である為、サービスを一定のレベル・水準で標準化し、パッケージ化して地域横断で管理・コスト比較して、より強いサービス提供体制を整えていく事が大事です。

 ■ポイントその2:顧客コード・製品コード・勘定科目等マスタ統合
上記の様に新たなプロフィット・コスト管理を行う為には、グローバルでのコード・マスタの統合化は必須です。
しかし、統合化の手段を論じる際に、何から何まで全てを「共通にする」という必要はありません。統合化には2種類の方法があります。
一つは、ローカルコードを廃止し、変換テーブルによりグローバル共通コードを定めてグローバル共通で運用する方法です。
もう一方は、ローカルコードの存在を許し、グローバル経営管理上で見たい粒度でのコードをグローバルコードとして切り分け、ローカルコードが新設された都度、ローカルコードとグローバルコードの関連を取り、グローバルコードに変換する方法があります。

例えば、顧客コード・サービスコード等については、グローバル化が進んで対象顧客やサービスも現地で目まぐるしく変わるはずです。変化への対応が必要なコード類の場合には、前者の方法では限界があり、後者の方法を選択していく事が望ましいと考えます。

 ■ポイントその3:内部データ中心→外部データ取り込み
経営管理システムを「社内の会計データを蓄積して提供するもの」と勘違いしている人は多いはずです。不確実な情報を嫌い、社内の確実な情報しか経営管理システムに保持しない発想が多いのですが、社内データだけでは役に立ちづらく、競争に勝つための打ち手を講じるには限界があります。

社外データには、不確実で部分的なデータが多いのは事実ですが、顧客・競合との関係から見たデータを経営管理システムに取り込んで意思決定していく事が必要です。
例えば、メーカーにおける川下の物流・販売データ(POSデータ等)や営業現場から取得できる競合の状況・シェア情報等は、部分的または不確実であったとしても、活用価値は十分にあります。
また、最近注目される大容量でかつ非定型データも含む「ビッグデータ」の経営管理への積極的活用も考えていかねばいけません。例えば、フェイスブックやツイッター上にある生の声やネット上で公開されるランキングや口コミ情報等を解析し、これをマーケティングだけでなく経営意思決定の情報としても提供・活用していく視点が益々重要になります。

以上、【①ビジネスモデル変更の必要性】に対する「新グループ経営管理」についてのポイントをご説明しました。

次回は2つ目の【②グローバルでの競合企業が続出】することに対する「グローバルコストマネジメント」のポイントについて、議論させていただきます。

(経営管理事業部 バイスマネージングディレクター 金元 伸太郎)

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