2019/5/28
攻めるダイバーシティ戦略 ~競争力を強化する多様性深化の仕掛け 第4回 DXと脳科学で加速するダイバーシティ4.0の世界
※『月刊人事マネジメント2019年3月号』掲載
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部 マネージャー 若島 薫
ダイバーシティには段階がある。規制等への対応を主とする「ダイバーシティ1.0」,多様性を受容し始める「ダイバーシティ2.0」,そして,経営戦略の実現のために戦略的に多様な人材を活用する「ダイバーシティ3.0」である。これまで我々は,「ダイバーシティ3.0」が「攻めのダイバーシティ」であり,早くこの段階にシフトするべきだと主張してきた。しかし実は,この先に「ダイバーシティ4.0」というべき世界がある。それは,究極の多様性が実現した世界であり,もはや多様性というイシューを超越した世界なのだ(図表1)
図表1 ダイバーシティの4段階
「ダイバーシティ4.0」の究極世界とは
デジタルテクノロジーを味方につける
「脳科学」により,ポテンシャルを最大化
ロボットやAIが我々をサイボーグ化させる一方,人間自身のパフォーマンスをさらに引き出す可能性が脳科学に期待できる。脳科学の進歩により,脳のクセや特徴が分かってきた。ここに,人間のパフォーマンスをより引き出すヒントがある。3つのヒントを紹介したい。①超集中状態(フロー状態):脳は超集中状態であるフロー状態(ゾーンとも呼ばれる)に入ると,生産性は4倍,学習スピードは2 倍になるともいわれている。従って,フロー状態に入りやすい環境や仕掛けをデザインし,人材をフロー状態に没入させ続けることができれば,生産性は高まる。②パフォーマンスマネジメント:脳内物質が人間の気分や心理状況に影響することが分かってきた。「ドーパミン」は意欲と自信を持たせ,「ノルアドレナリン」は集中力・注意力を高め,「オキシトシン」「セロトニン」は心理的安全性を感じさせる。これらの特性を利用したパフォーマンスマネジメントができれば,やる気・集中力・チームパフォーマンスは最大化されるだろう。③アンコンシャスバイアス:脳は 90%以上,無意識下で判断していることが知られている。このため,脳は様々なバイアスを持ち,判断をショートカットしていく。ステレオタイプな判断や,ハロー効果はその一例である。ダイバーシティを実現するためには,不可避の無意識下の判断を自覚し,克服していくことが必要である。
「ダイバーシティ4.0」の世界は,多様性を超越し,個が個として語られ,個とチームのパフォーマンスは最大化される。パフォーマンスの最大化やイノベーションを希求する企業ならば,一刻も早い到達が望まれるだろう。
若島 薫: 株式会社レイヤーズ・コンサルティング 事業戦略事業部 マネージャー
大学院卒業後,レイヤーズ・コンサルティングに入社。大手消費財メーカー・食品メーカーの営業改革・マーケティング施策立案等のプロジェクト経験を経て,直近は,大手エネルギー系企業,製薬メーカー,大手メーカー等の人材要件検討,人事戦略立案,組織風土変革を中心とした人事全体での改革プロジェクトに取り組んでいる。 Mail: wakashima.kaoru@layers.co.jp