2019/9/4

パフォーマンスを最高度に引き出す 働き方改革~ストラテジック・ワークスタイル・デザインのすすめ~第2回 ストラテジック・ワークスタイル・デザイン ~働き方の7つのドライバー~

#メディア掲載

※『月刊人事マネジメント2019年6月号』掲載

株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部 シニアマネージャー  若島 薫

 

真の働き方改革は、ビジネスに従い、ビジネスをドライブするものであるべきだ。働き方は「企業のパフォーマンス」に直結し、競争力の1つの源泉になる。
ここに戦略的な「働き方デザイン」が必要である。すなわち、ビジネスの戦略や外部環境を踏まえ、「どうありたいか(ワークスタイルや行動、組織、風土)」を定め、「そのためにどうするか(変革ドライバー)」を設計することである。

働き方改革の7つのドライバー

働き方に関わるドライバーは7種類に整理できる。①社内制度、②デジタルツール、③業務プロセス、④オフィス空間、⑤コンディション、⑥エンゲージメント、⑦チーム・組織パフォーマンスである。戦略的な「働き方デザイン」とは、ありたい姿に対して、7つのドライバーを統合的にデザインすることである(図1)。そして、7つのドライバーのデザインには順序がある。働き方改革の3つのレベルに合わせて、ポイントを述べたい(図2)。

 

【図1】戦略的な「働き方デザイン」

 

【図2】働き方改革のレベルと7つのドライバー

 

レベル1:“働かせ方”改革「どうしたら、もっと残業時間が減らせるか?」

①社内制度
残業時間削減のための制度やルール作り、勤務関連制度の見直しが行われる。残業時間削減の取り組みとして、ノー残業デーの実施、残業時間の見える化、会議やメールのルール化がなされる。これにより、いわば社員の意識次第の時間は短縮できる。しかし、当然ながら、それだけではうまくいかない。仕事自体が変わらない以上、限界がある。

レベル2:“作業の効率性”改革(インプット改革)「どうしたら、もっと業務を効率化できるか?」

②デジタルツール
取り組みには、2つのステップがある。ステップ1は、紙ベースの仕事をデジタル化すること。古典的な日本企業では、未だに紙が仕事のベースになっている。その結果、新しい会社と比べると、承認プロセスや情報の共有に時間を要し、デジタルツールを試そうにも連携できない状態になっている。いち早くこの段階から脱出するべきだ。ステップ2は、RPA、AIなどの導入により、人が行っていた仕事をデジタルに置き換える。人がやるべき仕事そのものを減らすのだ。
 
③業務プロセス
これからの業務プロセスはデジタルツールの活用が前提となる。人でなければできないこととデジタルに置き換えられることを見極め、人の仕事を再定義する。加えて、デジタルツールを使い倒すこと。重要なのは、単に既存の業務をデジタルツールに置き換えるのではなく、デジタルツールに合わせてプロセスに変えることである。

レベル3:“仕事の質”改革(パフォーマンス改革)「どうしたら、もっと人と組織のパフォーマンスが向上するか?」

④オフィス空間
オフィスは単なる作業場所である時代は終わった。これからのオフィスは、パフォーマンスが出せる場でなければならない。そうでなければ物理的に空間に集う意味がなくなってくる。どういう空間ならパフォーマンスが出せるか。1つの方向性は、業務に合わせて空間を選べるようにすることである。1人で集中して作業するときと、チームで新しいアイデアを出すときには、それぞれふさわしい空間がある。
 
⑤コンディション
「健康管理は自己責任」とは言っていられない。当社の調査では、各企業で心身の不調によるパフォーマンスの低下は、平均して20%程度発生している。これをプレゼンティズムと呼んでいる。これを金額に換算してみると重大さに気づくだろう。社員の心身のコンディションを改善させプレゼンティズムを減らすことは生産性向上のためにマストである。
 
⑥エンゲージメント
エンゲージメントの定義は2種類ある。「会社が好きか」と「仕事が好きか」という問いがありうる。働き方に関わるエンゲージメントのデザインのポイントは後者である。コンディションの施策を行い、心身は万全となったとしたら、その次は、我々の仕事へのやる気であり、打ち込み方である。当社はこれを「イキイキ度」として測定している。シンプルに言い換えると、仕事が楽しいか、やりがいがあるか、となる。ここでのポイントは、ストーリー、パーパスの設定とパフォーマンスマネジメントのデザインである。
 
⑦チーム・組織パフォーマンス
チーム・組織パフォーマンスの向上はゴールであり、施策の1つである。施策のポイントは、最高の人材配置を実現、チームを最高に機能させることである。前者は、人と仕事、人と人の最適なマッチングを実現することで、ここではデータアナリティクスが手段となる。後者は、心理的安全性やナレッジマネジメントのデザインである。

データアナリティクスとHR改革

改めて、真の働き方改革は「人と組織のパフォーマンス向上」を目指すものだ。だとすると、これはHR部門のミッションであり、HR改革そのものである。真の働き方改革=HR改革のポイントは、データアナリティクスの活用であり、データの活用により「人や組織のパフォーマンスを“科学的に”上げること」である。

 

若島 薫 : 株式会社レイヤーズ・コンサルティング 事業戦略事業部 シニアマネージャー

大学院卒業後、レイヤーズ・コンサルティングに入社。大手消費財メーカー・食品メーカーの営業改革・マーケティング施策立案等のプロジェクト経験を経て、直近は、大手エネルギー系企業、製薬メーカー、大手メーカー等の人材要件検討、人事戦略立案、組織風土・働き方変革を中心とした人事全体での改革プロジェクトに取り組んでいる。 Mail:wakashima.kaoru@layers.co.jp

「第1回 真の働き方改革とは?~本来働き方はビジネスに従う~」

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