リモートファーストでの顧客戦略の新常識
お客様の真実の瞬間に着目した、
顧客接点のデジタルイノベーション
リモート・オンライン環境でのパフォーマンス2極化
コロナ禍で従来型発想から抜け出せているのか?
昨年から続く新型コロナ感染拡大により2度目の緊急事態宣言が解除された今でも不安定な情勢が続いています。あらゆるビジネスシーンでリモート化・WFH(work from home)化が進行しましたが、この変化に対応できている企業と対応できていない企業の2極化がますます広がっています。営業活動でいえば、弊社が独自に行ったアンケート調査によると、『1日5件以上』顧客と打合せしている営業担当者と、『1日1件か1件未満』しか打合せしていない営業担当者の比率が、リモート化が進むにつれて拡大していることがわかりました。コロナ禍で新たな顧客タッチポイントを構築できた企業と、従来型発想から抜け出せずに低生産性に陥っている企業の2極化がどんどん進んでいる様子がうかがえます。
リモートワークの流れは逆戻りしない。「リモートファースト」で顧客タッチポイントを再設計
コロナ禍では「マーケティング」「セールス」「カスタマーサービス」の各活動で革新が求められます。マーケティングでは潜在顧客の『興味・関心の拡大』、セールスでは見込み顧客の『エンゲージメントの強化』、カスタマーサービスでは既存顧客の『顧客体験価値の向上』を大幅に躍進させることが成長の鍵となります。
そしてコロナ鎮静化後も、リモートワークの流れは完全に逆戻りすることはなく、リモートでのマーケティング・セールス・サービスが定常化する世界になっていくと考えられます。ビヨンド・コロナの新常態を鑑みて「リモート・ファースト」発想で顧客タッチポイントの再設計を行うことが、今後の企業間の競争力の差になっていくことは必須です。
ビヨンド・コロナの顧客戦略キーワードは「お客様の真実の瞬間」
顧客が抱えるジレンマ~顧客の価値享受と、営業の価値享受は相反する~
多くの顧客は「顧客の価値享受のタイミングのズレ」の問題を抱えています。以下の図のように製品・サービス提供する企業側の価値享受のピークは「売った瞬間・契約した瞬間」ですが、顧客はこの時点では「期待」を買ったにすぎません。例えば自動車ディーラーの販売プロセスで考えてみましょう。営業担当者は「成約1件」を獲得した瞬間が最もボルテージが上がる瞬間ですが、顧客はまだ「新しい車でのドライビング体験」を夢見ているにすぎないのです。顧客から見れば、実際に納車され、自分の手でエンジンをかけアクセルを踏みだした瞬間、つまり「新しい車を利用している瞬間」こそが、顧客にとっての価値享受の瞬間なのです。残念ながら、営業担当者は、この顧客の価値享受のタイミングには“次の獲物”を狙って別のお客様を探しにいっていることが多いのです。顧客が期待通りの価値享受をできているのかどうかを、本当の意味で把握している企業は圧倒的に少ないのです。
顧客は何にお金を払うのか?
企業が提供する製品やサービスに対して、顧客は2つの価値を感じています。1つが「合理的な満足」です。顧客が利用する前に抱いていた期待値に対して、それを満たしているかを客観的・合理的に判断する思考プロセスです。機能・性能・価格・情報の質などを、製品・サービスの利用を通じて検証し、自身が払った価額に見合った満足が得られているかを検証しています。相手の事前期待に到達できていればリピートオーダーを得られますが、これだけでは他に機能面や価格面ですぐれた代替品が出てくると、すぐに乗り換えされてしまうリスクを内包しています。
もう1つが「心理的・感情的な満足」です。顧客が事前に期待したよりもはるかに優れた体験価値を享受できると、人は感動し、他には替え難いロイヤリティ・愛着の心理を持つのです。非常に主観的な基準ですが、これは差異化・固有化につながるとともに、人に紹介してくれるという副次的な効果(ロイヤリティの移転)を生み出すのです。
『お客様の真実の瞬間』に着目し、顧客体験価値を最大化する
お客様が「利用する瞬間」「欲しいと思う瞬間」に着目し、お客様の心理的・感情的な価値、すなわち顧客体験価値を高めることは経済的な効果創出にも直結していきます。アメリカのとある研究者のレポートでは、「感情的つながり」を持った顧客は平均して約40%も顧客価値が高まるという研究結果が得られています。
当社でも、大手ホテルチェーンにおける顧客接点改革プロジェクトをご支援した際に、取組前の客室単価の平均が14,500円だったのに対して、滞在中のお客様との感情的なつながりを高めるための複数の施策を実行したところ、6か月後には客室単価が20,000円まで上昇する結果が得られました。提供するサービスに機能的価値だけでなく、感情的価値を持っていただいたお客様は、より多くのお金を使っていただけるということが実感できました。
デジタル化が、真実の瞬間での顧客体験価値の向上を加速させる
とある大手の機械工具卸では、デジタル技術を用いて「納期ゼロ」の工具提供サービスに挑んでいます。顧客工場内に専用の棚を設置し在庫の増減を常に把握。工具や消耗品の需要を、季節変動などを加味して予測し、「置き薬」の要領で先回りして顧客工場内に配送しておく。これにより製造現場が「ほしいと思う瞬間」に、必要なものが現地に置いてあるという顧客体験価値を実現しているのです。これまでは在庫が少なくなるたびに問屋に発注したり、急ぎの場合はホームセンターに買い出しに走っていたりしていました。顧客の手間を大幅に削減するとともに、過剰在庫となるリスクの軽減も実現しています。過去から社内に眠っていた顧客ごとに見積もりや受発注データを分析・活用して、棚に配備すべき商品の種類と量を把握し供給しているのです。
また、とある化粧品メーカーでは、商品を販売したお客様とLINEの“お友達”となり、購入してから数日経過したタイミングで、お肌の改善効果の実感度合を、チャットボットを利用したアンケートによって収集しています。従来の売り切り型モデルから、お肌の悩みを改善したいというお客様の課題に寄り添い、利用する瞬間のお客様感情を把握して解決に向けた更なる提案を行う、まさにカスタマーサクセス型のサービス提供に挑んでいるのです。
真実の瞬間に着目した顧客体験プロセスの構築・実践ポイント
エクスペリエンス・デザイン・シンキングにより顧客体験プロセス設計
顧客の一連のプロセスの中に、いかに体験価値を埋め込むかを検討するにあたって、デザイン思考の手法を使ったプロセス設計が有効です。お客様の購買シーンに限定せず、お客様が製品・サービスを探してから購入し利用して結果・効果を享受するまでの一連のプロセスを棚卸し、各シーンの中でのお客様が抱く感情を抽出していきながら、それぞれのタッチポイントの在り方を設計していきます。ここで重要になるのがプロトタイピングです。実際に簡易なプロトタイプを構築して、主人公(お客様)の視点で実際に体験してみることで、新たな発見は発想が生まれ、プロセスの進化につながっていくのです。
奇をてらったデジタル施策よりも、お客様にとってわかりやすい「地に足の着いたDX」がカギ
新たな顧客接点プロセス設計において、デジタル技術の応用は欠かすことができません。お客様の利用・体験シーンのデータを瞬時に捉え、解析し、次の提案につなげていくためにはデジタル技術の活用なしには実現が難しくなります。
他方、お客様プロセスにおいて重視しなければならないのが、「お客様にとって直観的・わかりやすいかどうか」の判断基準です。新たな顧客接点プロセス設計を行っていると、ついつい提供者側のエゴとなり、最新技術の活用や過度の負荷を必要とするものを使いがちですが、お客様に長く・継続的に利用いただき、長期的な関係構築を図るためには分かりやすさや使いやすさが重要になります。お客様にデジタル・ストレスを与え逆効果にならないよう、地に足の着いたDX施策を設計していくことが重要となります。
ビヨンド・コロナに向けて世の中が変化していくこのタイミングに、従来発想に先祖返りせずに、新たな顧客戦略、顧客接点プロセス設計に取り組んでいくことが、数年先の勝敗を大きく分けることになると考えます。
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