2011/11/15
創刊号:企業・事業統合にみる失敗の本質!?
企業・事業統合にみる失敗の本質!?
2011年1~6月の日本企業のM&A件数は800件強と昨年実績を下回りました。が、円高の影響もあり今後もIN-OUT型M&Aが増えると予想されています。日本企業同士のM&Aですらうまくいかない場合が多いのに海外なら大丈夫なのでしょうか。
地理的に遠い?言葉が通じない?だから何となく連結していればうまくいく??という感じでしょうか。翻って国内企業・事業の統合は想定通りの結果を出していますでしょうか??
当社は、この2年半で多数のPMI(統合実務支援)を実施していますが、本当に違う文化やDNAを持つ企業同士の“結婚”の難しさを実感しています。なぜうまくいかないのでしょうか?
我々は、失敗の本質を以下の3つと捉えています。
失敗の本質① 【受け身買い】
経営戦略にもとづき、自ら決めた「買収」ターゲットではなく、第三者からの“持込案件”をもとに買収を決める場合があります。受け身的M&Aは、資産価値があるからとか、リスクがあまりないからという理由で買ってしまうことが多く、本業とのシナジーがない“飛び地”ビジネスになってしまい、全体の戦略と外れてしまう可能性が高くなります。
M&A戦略を中期経営計画としてしっかり立てたうえで、買収先ロングリストの作成から自主的に実施する必要があります。
失敗の本質② 【高値掴み】
国内案件にも見られますが、特にグローバルでの買収の場合、デューデリジェンスをしっかりと実施することなく買収を決定している場合があります。国内事業の閉塞感と円高によるスピード先行の決定によるものと思われます。
現状の事業性に加えて、将来の事業の成長についてもしっかりと議論を重ねるべきはないでしょうか。財務デューデリジェンスと法務デューデリジェンス中心のデューデリジェンスから、ビジネスの成長のために行うM&Aとして、ビジネスデューデリジェンスに力を注ぐべきです。
失敗の本質③ 【放ったらかし経営】
買収した企業や事業の業績が悪いと、「あれは買収した会社だから…」と説明する会社が残念ながらあります。あるいは大型M&Aを実施したものの受付は一つなのですが、旧A社は受付の左ドアから、旧B社は受付の右ドアから、と商談スペースも別れ、機能も重複という会社も見受けられます。
ある企業は、共同開発した新製品を出したり、本社機能を一つにするまでに10年という歳月がかかっていました。まさに失われた10年ではないでしょうか?
我々の経験では、買収を検討した担当者(主に経営層)と、統合日までに事業・機能統合を推進する担当者(主に現場部長)は別の場合が多いですし、意識面でも異なります。「後は任せた」との指示のもと、統合後は“放ったらかし”の企業が多いと感じます。
歴史もプライドもある2社以上が一緒になるわけですから、事業統合や個別機能の統合には、 統合後少なくとも3か年は並々ならぬエネルギーとノウハウが必要となります。
統合の現場を中心にコンサルティングを行っていますと、「M&A」という御旗に隠れてしまっている現場の葛藤や取り組みの難しさが見えてきます。
3つの失敗の本質についての回避方法を、次回以降の「目からウロコのレイヤーズ経営通信」で説明したいと思います。
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部 バイスマネージングディレクター
箕野 博之