2011/12/1

第3号:【高値掴み】の回避方法。ビジネスデューデリジェンスの重要性、方法。

#トピックス

【高値掴み】の回避方法。ビジネスデューデリジェンスの重要性、方法。

前回は「【受け身買い】を回避するためには」というテーマで述べさせていただきました。
その中で、「受け身買い」を回避するためには「普段の備え」が重要であり、そのポイントは

①自社のM&A方針の策定(投資方針の明確化)
②ターゲット会社の選定と積極的コミュニケーション

にあるとご説明いたしました。

第3回の今回は、「高値掴みの回避方法。ビジネスデューデリジェンスの重要性、方法」について議論をさせていただきたいと思います。

我々は、「高値掴み」を回避するためには、財務デューデリジェンスと法務デューデリジェンス中心のデューデリジェンスから、ビジネスの成長のために行うM&Aとして、「ビジネスデューデリジェンス」に力を注ぐことが重要であると考えております。
「ビジネスデューデリジェンス」を適切に行い、ターゲット会社に対して有利に交渉を進めるための4つのポイントをご説明いたします。

ポイント① 事業のキードライバー(業績先行指標)を見抜く

「高値掴み」を回避するための第1の鉄則は、ターゲット企業から提出された過去の財務諸表や事業計画に依存するのではなく、自らターゲット企業の事業に対し成長仮説を持ち、今後の事業予測を立案することです。その際に、ターゲット企業の売上高・利益等を生み出すためにキーとなるドライバー(指標)を見抜き、それに関連する情報を徹底的に収集できるか否かが、成否を分けるといっても過言ではありません。しかし、異業種のM&Aの場合は、自社内だけでキードライバーを見抜くことはなかなかできません。
我々がビジネスデューデリジェンスを行う際は、幅広い業種・業界に対するコンサルティング経験および外部専門家ネットワークを駆使してターゲット企業のキードライバーを抽出し、事業成長シナリオを構築するところからスタートします。

ポイント② キーマンを見抜く

例えばキードライバーの1つが「継続受注率」であった場合は、重要顧客への関与度の高い人材は欠かすことができません。通常はターゲット企業に対するインタビュー調査などからキードライバー向上に寄与する人材を抽出しますが、必要に応じて顧客および同業他社へのヒアリングによりキーマン抽出を行うこともあります。

ポイント③ 現場・現物・現実を見極める

「高値掴み」を回避する第3の鉄則は、必ず現場・現物・現実に直接触れることです。デューデリジェンス業務は、とかく机上での定量分析に傾倒しがちですが、ビジネスの本質を見極めるためには、現場・現物・現実を自らの目で見て、そこから得られた生の情報が何よりも重要です。
製造部門であれば、設備やラインを見る、また設計、生産技術部門に対しインタビューを実施して、品質・コストに対する改善力を見極めることが重要です。営業部門であれば、実際に顧客に提出された提案書や報告書などを精査し、またキー営業マンに対しインタビューを実施することが重要です。現場・現物・現実を見て、そこから得られた直感が、ビジネスデューデリジェンスでは重要な判断基準となります。

ポイント④ 価格算定は自らの事業予測を基に。価格提示は相手の事業予測を基に。

「高値掴み」を回避する第4の鉄則は、自らの事業成長仮説に基づく冷徹な価格算定を行うことです。キードライバーの見極めと現場・現物の見極めから得られた事実情報を基に、実現可能性のある事業計画を自ら策定し、それを持って買収価格の算定を行います。ここには、曖昧な要素は持ち込まないことが重要です。
一方、相手方にLOI(意思表明書)にて買収価格を提示する際には、自らの価格算定根拠を示すことはご法度です。自らの算定根拠を持っていることを匂わすことさえもすべきではありません。価格交渉の場面では、相手方は価格を吊り上げるために、当然ながら算定根拠の妥当性を追及してきます。そういった重箱の隅を突く様な交渉に陥らないためにも、「相手が提示した事業計画を基に算定した結果、この金額になった」というニュアンスで価格提示を行うことが、「高値掴み」をしないための交渉テクニックのひとつです。
なお、買収条件の中には、キーマンの雇用維持に関する条件、キーマンが離反した場合の減額条件をしっかりと盛り込んでおくことも忘れてはなりません。

 以上、「高値掴み」を回避するため4つのポイントをご説明しました。

 次回は4つ目のポイント「放ったらかし経営から真のシナジー経営へ 事業統合のポイント」について、説明させていただきます。

株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部 マネージャー
佐藤 隆太

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