2012/2/16
第7号:日本企業が直面する課題とその解決に向けて
日本企業が直面する課題とその解決に向けて
「②グローバルでの競合企業が続出」に対する「コストマネジメント」のポイント
グローバル経営が要求される中で日本企業が直面する課題として、以下の3点があげられます。
①ビジネスモデル変更の必要性
②グローバルでの競合企業が続出
③アウェイでの戦いを強いられる
今回は、「②グローバルでの競合企業が続出」することに対し、これを迎え撃つための「コストマネジメント」のポイントについて、述べさせていただきたいと思います。
グローバル競争においては、国内でよく知る競合企業に加えて、グローバル競合企業、エリア競合企業、ローカル競合企業と競争者が一気に続出します。
日本企業は、こうした競争者に対し、常に品質・納期・価格で対抗しなければならず、特に彼らに価格で負けないためのグローバルコストマネジメントが不可欠となります。
しかし、グローバルコストマネジメントの観点から、多くの企業では自社のコスト実態が把握できていないのが実情です。私どもの経験でも、海外工場の原価計算は、財務会計用の原価として大雑把にしか把握していないことが多く見受けられます。
「いやいや、我が社はしっかりコストを捉えている」といった会社であっても、下記の項目が一つでもあれば、再度実態を見直した方が賢明です。
- 標準原価の改訂が年1回、数年に1回(数か月前の原価で今の製品別損益を計算)
- 原価差異が、数%発生(利益が数%で喘いでいるのに無頓着)
- 製造間接費を製造直接費の比率で配賦(間接費の発生実態を表していない)
グローバルコストマネジメントを実践するためには、そうした実態を把握したうえで、下記のポイントを自社に合わせて実践していくことが重要です。
ポイントその1:製造間接費・販管費も含めた全原価コストダウン(ABC)
従来のコストダウンは、直接材料費、直接加工費が中心でした。しかし、日本企業のコスト構造は製造間接費、販売費及び一般管理費が増大し、この部分で中国企業、韓国企業に負けていると言えます。
したがって、グローバルコストマネジメントは、製造間接費・販管費を含めた全原価のコストダウンに寄与するものであることが求められています。
このためには、企業活動といった観点から製造間接費・販管費のいかに適正にとらえ製品・顧客に結びつけるかというABC(活動原価計算)を取り入れることが必要です。
ABCを実施した場合、一般に売上高の上位の製品、顧客ほど製造間接費、販管費が掛かっておらず、逆に下位の製品や顧客は、営業利益ベースで赤字ケースがほとんどです。全原価のコストダウンを進めるうえでは、適切な数字に基づきこの赤字の製品、顧客の対策を検討しなければいけません。
また、コストダウンを進めるうえでは、下記のABCDを活用することが重要です。
- Auction:集中購買による競争入札
- Benchmark:他社比較、他社との購買情報の交換等
- Collaboration:社内各部門の協働化、サプライヤー・顧客との協働化
- Deregulation:設計基準、品質基準等の規制緩和
ポイントその2:競合企業に負けない価格戦略~マーケットインの目標原価設定~
差別化による競争優位期間が短縮化している昨今では、その市場で求められる価格で製品を提供しなければ、競争に負けてしまいます。すなわち、マーケットが求める市場価格に見合った目標原価を設定し、これを部門横断的に作り込むことが求められます。
目標原価は、グローバル市場で戦うために、「市場価格-目標利益」として設定します。この目標原価を達成するためは、原価費目ごとに原価を積み上げて、具体的な原価低減施策を織り込んだ原価を作り込みます。
こうした目標原価を達成するための活動は、量産開始前だけでなく、日々の市場価格および実際原価の変動に応じ、量産後も絶え間なく続けることが求められます。
ポイントその3:業績評価連動したライン別利益管理
グローバルのいかなる環境においても、目標とする利益を生み出す強靭な利益体質を獲得するためには、業績評価と連動したライン別利益管理を実施するべきです。利益管理は、各部門の利益責任が曖昧であったり、人事的な評価に結びつかないと、利益達成へのモチベーションが維持できません。
ライン別利益管理は、ライン単位での利益責任を明確化し、ライン別利益で組織・人を評価する(業績評価と連動する)ことにより、飽くなき目標達成への執念・意欲を醸造することを実現します。
また、ライン別に週次で利益管理することで、従来の月次単位のPDCAサイクルを、週次単位に短縮し、各部門を利益に敏感に反応する体質へ変革することを目指します。
まとめ
ダイエットの世界では、日々体重計に乗ることが不可欠です。一説には、体重計に乗って体重を記録するだけでも、痩せると言われます(『計るだけダイエット』)。
原価の世界も同じです。日々原価を適正に把握しなければ、日々のコストダウンを実現することは、到底不可能です。まずは、日々の実際原価を適正に把握することがコストダウンの出発点です。
次回は、3つ目の「アウェイでの戦いを強いられる」ことに対し、これを克服するための「DNAを注入した業務標準」のポイントについて、議論させていただきます。
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
経営管理事業部
統括マネージングディレクター
真貝 勝