2013/5/16
第17号:経営者を駆り立てて結果を出させる仕組み
経営者を駆り立てて結果を出させる仕組み
前回のメールマガジンでは、日本企業が海外へ進出し、グローバルで戦う場合、国内と比較して『1,000倍の環境変化』があり、これに対する下記3つの対応についてお話しました。
①世界で通用する製品・サービス開発
②現地の優秀な経営者の登用
③コーポレートガバナンス
今回は、上記②③に関連した『経営者を奮い立てて結果を出させる仕組み』について、より具体的ポイントをお話いたします。
『経営者を奮い立てて結果を出させる仕組み』とは
日本企業が現地化・地域化や真のグルーバル化で戦っていくためには、従来の本社中心の考え方から脱却して、実行主体である現地トップ等に任せる部分は任せ、一方で彼らを結果に向けて駆り立てていく、メリハリの利いた権限委譲と信賞必罰が重要となります。
この場合の重要な要素としては、
- 企業理念・イズムの共有
- 役員の現地登用とメリハリの利いた報酬・待遇
- メリハリをつけた情報のオープン化
の3つのポイントが挙げられます。
企業理念・イズムの共有
まず現地トップ・従業員の、企業理念へのロイヤルティの弱い状態から企業理念・イズムの共有の状態への変換が重要となります。
そのためには、企業理念とその背景を現地トップに“コテで塗るように”語り続けるとともに、企業理念を浸透するために、見える部分、例えば、目標と業績・具体的な行動・組織体制等に落とし込むとが必要です。
また、企業理念を営業、生産等の各機能に実際に当てはめ、価値観して具体化する場合には、「基本的考え方」と「行動モデル」に分けてて定義することが効果的です。
- 基本的考え方:
企業理念に沿って具体的にどの様なことを重視するべきかを明らかにする
⇒固定的に定義 - 行動モデル:
基本的にやらなければいけないことを踏まえ、望ましい着眼点・知識を理解し、自分流の行動を具体化する
⇒変化に柔軟に対応して定義役員の現地登用とメリハリの利いた報酬・待遇
現状、現地法人のトップ(現地CEO・社外取締役等)人事は本社から選抜することが一般的だと思いますが、現地文化への適応や事業環境(ローカルニーズ・ルールなど)の理解を考え、現地から登用することが重要です。登用したCEO等が期待にそぐわない場合には現地で交代することを基本と考えます。
現地の役員報酬については、業績連動(変動)部分を高め、メリハリを効かせ、場合によっては本社トップの役員報酬を超えることも良しとする必要があります。(現地の役員報酬を、目標達成に必要不可欠な優秀な人材を確保するためのコストの一つと考える)
また、本社役員は現地法人のトップから選抜して任命することも考慮すべきです。(あるグローバル食品メーカーでは、グローバルの現地法人TOP10を本社役員に任命している)メリハリをつけた情報のオープン化
現地法人の情報については、現状、見ない・見せない(現地が見せない)場合が多いと思いますが、細部まで全てオープン化するのではなく、現地の環境や戦略、現地法人の重要度・グループにおける役割に応じて、情報の粒度を絞る、柔軟に変える等メリハリをつけることが重要です。
情報のオープン化においては、中長期的にはシステム化を図り、数字をベースとした(数字で語る、数字は嘘をつかない)グループ業績管理を実現する視野に入れるべきと考えます。
ただし、システム化の前においても、現地法人に人を送るなどして縦のレポートラインを作ることも必要ですし、その前提として、共通言語を確保する意味でグループデータガバナンス(チャートオブアカウント(COA)統一、アカウンティングポリシー統一、重要コード・マスタ統一等)の整備を行うべきです。以上、事業責任者や現地トップを駆り立てて、結果を出させるためには、「理念」「人事」「情報」において、上記の様な『メリハリ』をつけるとこが重要だということをお話ししました。
次回は、『1,000倍の環境変化』のような多様な環境で意思決定や実行が複雑化するなか、『真実の瞬間:企業価値を決定づける意思決定や実行の局面』に資する情報を提供し、いかにして日本企業が勝ち残っていくかを解説いたします。
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
経営管理事業部
プリンシパルディレクター
薄井 賢治