2013/9/10
第19号:『企業価値を決定づける「真実の瞬間」への経営の積極関与』<その2>
『企業価値を決定づける「真実の瞬間」への経営の積極関与』<その2>
日本企業が本格的にグローバルで勝ち残るためには、
①世界で通用する製品・サービス開発(ダントツ製品の開発)
②現地の優秀な経営者の登用
③真実の瞬間に届く経営
を推進することが重要となります。
今回のメールマガジンでは、上記対応の③に関連した『企業価値を決定づける「真実の瞬間」への経営の積極的関与』について、利益インパクトの大きい開発段階でのスペックマネジメントポイントについてお話します。
開発段階でのスペックマネジメントのポイント
通常、開発上流段階で製品コストの7割~8割が決まります。したがって、開発段階におけるスペックマネジメント(仕様決定)は、売り上げ、製造原価、メンテナンスコスト等に大きなインパクトを与えて企業価値を決定する最大の瞬間=(真実の瞬間)となります。
スペックマネジメントとは、顧客ニーズ(売価)→ベネフィット(便益)→機能仕様→コスト(原価)という関係を明確化したうえで、製品利益を最大化する機能仕様を決定することです。
スペックマネジメントは下記がポイントとなります。
①機能仕様とコストのトレードオフ検討
顧客ニーズ・ベネフィットを満たすために、機能仕様を増やす(または品質を上げる)と当然コストは増えます。
したがって、製品利益の最大化には、顧客ニーズ・ベネフィットを満たすギリギリの機能仕様とコストを見極めることが重要です。そのためには、ターゲット顧客およびそのニーズ・ベネフィットを明確化し、複数の検討パターンを設定したうえで、各パターンの利益がでるギリギリの機能仕様を決定します。
また、上記検討には、開発プロセスにおける管理ゲートを設定して、目標の利益が達成できる機能仕様となるまで次のフェーズに進めないようにすることも重要です。(この時点での目標利益の達成がなく、次のフェーズに通してしまうと、以降のフェーズで目標利益を達成することは非常に困難となります。)
特に重要案件については、開発のみならず、営業、調達、経営企画、会計、原価の精鋭を集めて検討することが重要です。また、経営も検討結果に対する承認のみならず、検討自体に参加し、意思決定を行うことが重要です。
②プロダクトライフサイクルでの利益シミュレーション
プロダクトライフサイクルの利益シミュレーションでは、下記が重要です。1.今後採用する(目指す)ビジネスモデルの利益構造をシミュレーションする
ターゲット顧客の変更、顧客のニーズの変化、競合の取り組みの変化等に応じて、ビジネスモデル自体の変革が求められるケースがあります。(例:モノ売りからサービス化への転換等。)その場合、今までと異なるプロダクトライフサイクル期間、投資回収期間、投資回収方法となり、利益構造が異なってきます。今後のビジネスモデル変化による利益構造をシミュレーションで明確化した上で、どのビジネスモデルを採用する(目指す)のかを判断することが重要です。
2.新規開発も含めた複数代替案でシミュレーションする
現行製品に対する次期機種の検討においては、必ずしも新規開発が最良の案とは限りません。
新規開発ばかりでなく、一部機能改良、現行継続等の複数代替案で、総合的にプロダクトライフサイクル利益のシミュレーション(イニシャルコストの規模、製品コストダウン効果、販売台数の増減等)を行い、プロダクトライフサイクルの利益が最大化する代替案を明確化します。
以上、特に利益インパクトの大きい開発段階でのスペックマネジメントでは、機能仕様とコストのトレードオフ検討およびプロダクトライフサイクルでの利益シミュレーションが重要です。
株式会社レイヤーズ・コンサルティング経営管理事業部
ディレクター
村田 俊博
マネージャー
岩井 佳子