2017/1/6
【連載第1回/2016年12月】東京大学 藤本教授 在外研究エッセイ「プロローグ~リヨンの再開発と国際美食学拠点~」
東京大学大学院 経済学研究科 教授
東京大学ものづくり経営研究センター センター長
仏国 社会科学高等研究院 在外研究中
藤本 隆宏
2016年11月から2017年3月まで、リヨン高等研究院のフェローでリヨンにきています。久しぶりのシンプルなひとり暮らしです。
リヨンは、フランス第2の都市ですが、ポールボキューズなどあり美食の都として有名なことを除くと、旧市街が世界文化遺産である割には観光的には地味な扱いでした。
ここに様々な新拠点やイベントを集めることに市は力を入れています。所得が低く右翼傾向のフランス南部ですが社会党の今の市長は指導力も人気もあります。ローヌ川とソーヌ川の合流点に博物館やショッピングセンターを建設。非常にゆっくりですが自動走行車も稼働しています。
スマートシティ関連のプロジェクトも多く、街中での小型電気自動車や電気自動車のカーシェアリングや、1回200円以下の切符で1時間以内なら何回でも地下鉄、路面電車、バスなどに乗れるシステムなどの工夫があります。その一方で、鉄道の大幅遅れやストライキは頻繁に起こり、サービス精神は日本に比べれば総じて低い。斬新な企画は得意だが、実施面に難があるのがフランスの特徴かもしれません。
リヨンの中心街に大きな病院がありましたが、老朽化したため2010年に閉鎖。しかし歴史的な建物なので取り壊しができず、跡地利用で議論がありました。市政府はお金がないので、民間プロジェクトです。外観も内装も残し、一流ホテル、レストラン、商店街、アパートの他に「国際美食学拠点」を建設することになりました。これは、食の都リヨンにふさわしい美食学すなわち料理と文化、健康、発祥と歴史、海外の料理などの展示を常設、特設展示のスペースも確保します。
完成は2018年ですが、最初の特設展示は「日本の食」に決まっています。どのような展示会になるか楽しみです。ここは「良い食事が良い人生をもたらす」というコンセプトなので、食と健康が結びついた日本の料理観とは相性が良いようです。