FP&A導入を成功に導くIT基盤の要旨
◆この記事の要約
VUCA時代におけるFP&Aの重要性と導入課題
加速するVUCA時代において、日本企業は過去の実績に基づく『バックミラー型経営』から、未来予測を重視する『フロントガラス型経営』への転換を迫られています。この変革を支えるのがFP&A(財務計画・分析)です。
しかし、導入に成功している企業は限られており、多くの企業が課題に直面しています。そこでこの記事では、FP&Aの概要と導入における主な課題と解決に向けたアプローチをIT基盤の側面から解説します。
【課題例】
- データ品質: 分析の元データに問題があると、意思決定が難しくなる。
- 工数不足: FP&Aアナリストが多忙で、付加価値の高い業務に集中できない。
- 予測精度: 正確な予測を行うための基盤が整っていない。
【解決アプローチ:IT基盤の強化】
- 自動化: 定型業務を自動化し、アナリストが戦略的業務に集中できる環境を整える。
- データ整備: 高品質なデータを確保し、分析基盤を整える。
- AI活用: AIを用いて多様なデータソースからの分析を強化し、予測精度の向上を図る。
FP&Aの重要性
そもそもFP&Aとは何なのか、先ずはその点からふれていきましょう。
FP&Aとは、“Financial Planning&Analysis”の頭文字をとった略語で、日本語で“財務計画・分析”と訳されます。財務計画とは、中期経営計画や年次予算などの財務目標を定め、それらを達成するための計画を立案する活動を指します。財務分析とは、設定したKGI/KPIのモニタリングや財務目標に対する未来予測を行い、その分析結果を計画に反映する活動を指します。
これらは従来の管理会計と何が異なるのでしょうか。これまでの管理会計では、過去実績を軸に業績評価を行い、効率的な経営を支援することが主たる目的でした。しかしFP&Aは、未来の財務分析や予測を行いマネジメントの意思決定を支援することが主たる目的です。VUCA時代における企業の成功は、いかに合理的かつレジリエントな事業計画を立て、変化へ迅速に適応していくかが鍵になります。そのような背景から、多くの企業で未来予測に重きを置くFP&Aの重要性がますます高まっています。
【図1】FP&Aの概念
FP&Aのプロセス
FP&Aのプロセスは計画立案から始まります。一般的に計画とは中期経営計画と年度計画を指します。
中期経営計画は、長期経営戦略の実現に向けて3年~5年を対象に財務目標を具体的な数値で示し、それを実現する施策をまとめます。年度計画は、中期経営計画をさらに具体化し、1年間のビジネス活動を行ううえでの財務目標・プロジェクト・資源配分・リスク/対策などを示します。通常、年度計画の作成と並行して人員計画や設備計画なども作成します。また、計画の達成状況を定量的にモニタリングするために、計画実行前にKGIやKPIを予め定義します。
計画を実行に移したら、それまでの実績と将来の着地見込みを予測して分析します。その結果、計画と実績や見込みに差異が発生した場合は、改善施策(アクション)を講じ、時には計画自体を見直して軌道修正を行います。計画は年次計画のみでなく、必要に応じて中期経営計画や長期経営戦略に遡って修正します。この一連のモニタリングサイクルは、月次で回すのが理想とされています。
【図2】FP&Aプロセスフロー
FP&A導入上の課題
FP&Aの重要性は年々高まっているものの、導入に成功している日本企業は数が少ないのが現状です。
多くの日本企業はその過程で苦労しているか、それ以前に二の足を踏んでいる状況になっているかではないでしょうか。その要因は組織体制や人材面など多岐にわたりますが、その中でもIT基盤に係わる課題が大きな壁となっています。
では、具体的にどのような課題があるのでしょうか。上述のとおり、FP&Aのプロセスは大きく『財務計画』と『財務分析』に分かれます。『財務計画』、すなわち中期経営計画や年度計画の策定などの活動は、上場企業を中心にこれまですでに行ってきたものであり、FP&A導入の障壁となるケースはあまり耳にしません。問題は『財務分析』にあります。『財務分析』は、計画と予測のギャップを分析して改善施策を講じるサイクルを指しますが、実践するにあたってデータ品質、工数不足、予測精度などの課題が多くの企業で発生しています。これら課題の解消には、以下の観点でIT基盤の強化が必要と考えます。
- 自動化
FP&Aアナリストは、予測作成・分析・改善施策の推進など膨大な時間を必要とします。そのうえFP&Aアナリストは、経営企画や財務などと兼任している場合も多くあります。定型業務を自動化し、FP&Aアナリストが付加価値の高い業務に集中できる環境を整備する必要があります。 - データ整備・分析基盤整備
分析の元データに不足や品質に問題があると分析精度の低下に直結し、正しい意思決定を行うことが難しくなります。また、分析には大量のデータを扱うため、分析基盤の整備が必要となります。 - AI活用
AIの活用でより多くのデータソースから予測や分析が可能となります。それにより、本来見落とされていた傾向やインサイトの発見、ディープラーニングにより予測精度の持続的な向上が期待できます。
【図3】FP&A導入上の課題
本記事では、FP&Aの概要や導入上の課題についてふれてきましたが、IT基盤の強化ポイントとしてあげた『自動化』、『データ整備・分析基盤整備』、『AI活用』につきましては、別の機会に詳細をご紹介させていただきます。
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この記事の執筆者
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東 智之DX事業部
ディレクター -
松井 駿DX事業部
シニアコンサルタント
職種別ソリューション