経済安全保障とインテリジェンス(後編)

今回は「経済安全保障とインテリジェンス」をテーマに、経済安全安全保障に関係する部門と、経済安全保障リスクへの対策として企業が最初に着手すべき点について、この分野で多数のプロジェクト実績を持つマネージャーの内村 大地よりご紹介します。

Q1. 経済安全保障に関係する部門とは

A. 経済安全保障はまさに経営課題。特定の部門だけに関係する問題ではなく、情報システム、調達・物流、法務、IR・広報など全社が関係する

内村 経済安全保障はまさに経営課題であると考えています。グローバルな事業環境が変化していく中で、企業として事業を継続し、さらに成長させていく上で、これからの経営層には経済安全保障を強く意識する必要があります。
そして、経営課題となった経済安全保障ですが、あらゆる部門に関わってくると考えています。

例えば、サイバー攻撃であれば情報システム部門、サプライチェーンであれば物流や調達部門、当然ながら各事業部門も関わる部分があると言えます。
製品の輸出入であれば、トレードコンプライアンスといった問題もありますし、国によってはデータの扱いについての法律もあるということで、法務・コンプライアンス関連部門の方も経済安全保障を無視できなくなります。

また企業として、経済安全保障という問題にどのように対応していくか、どのように取り組んでいくかということをさまざまなステークホルダーに向けて発信していく上では、
IR部門や、広報部門も経済安全保障とは無縁ではなくなります。

Q2. 経済安全保障リスクへの対策として企業が最初に着手すべき点とは

A. インテリジェンスの活用から着手すべき

内村 全ての起点になるのはインテリジェンス、すなわち情報です。情報にも様々な種類があり、事業環境の中から集まってくる生のデータや、取引先と日々のやり取りの中で集まってくる情報などがあります。
ただ、インテリジェンスというのは情報を分析・評価したり、繋げたりして意思決定、判断の材料にする「アウトプットとしてのインテリジェンス」が重要になってくると思います。

特に企業として必要なのが、まさに経済安全保障や、地政学といったマクロの環境、事業環境などのインテリジェンスを集めていくということも重要ですし、それぞれの業界であったり、市場・マーケットの動き、動向などのインテリジェンスも重要になってきます。
インテリジェンスを有効に活用する上では、この社外のインテリジェンスと社内のインテリジェンスを組み合わせ、その上で判断を行うシナリオを作っていくことが大切になります。
インテリジェンスを企業の中に持っていると、それに基づきどのような事業シナリオが描けるかが見えてきます。
そして、それぞれのシナリオの中で、財務分析、キャッシュフローやバランスシートにどのようなインパクトがあるかを見ることもできますし、
その上でリスクが顕在化した経済安全保障の問題が起きた際にどうに対処すればいいか、リスクを低減する対策を講じることもできます。

さらに、こうしたインテリジェンスを常に更新して、社内で共有できるような情報基盤といったものを整備していくことが重要になってくるかと思います。

この記事の執筆者

内村 大地

内村 大地

株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部
マネージャー

株式会社レイヤーズ・コンサルティング
事業戦略事業部
マネージャー

ロンドン大学キングスカレッジ大学院で安全保障を専攻・修了。米パシフィ ックフォーラム笹川平和財団非常駐フェローや在エチオピア日本大使館政務 班勤務を経験した後、グローバル有数の企業調査・リスクコンサルティング ファームを経て現職。コンサルタントとして、これまでに企業の海外事業展 開や拡大にあたってのカントリーリスク評価、台湾拠点における有事を想定 したリスク管理の枠組み及び事態対処計画策定、シナリオ作成を通じた地政 学リスクへの対応、全社的リスク管理(ERM)の高度化、リスクアセスメン トなどのプロジェクトに従事。

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