アフターサービスのシステム刷新 成功のポイント

◆この記事の要約

アフターサービスのDX化は、顧客満足度向上と収益力強化の鍵です。しかし、単にシステムを導入するだけでは成功しません。そのため本記事では、属人化しがちな業務を標準化するためのステップをご紹介します。また、ノウハウの宝庫である過去データを正しく移行して活用するという、システム刷新を成功に導くための具体的なポイントを独自の視点で解説します。

  • アフターサービス業務基幹システム :問い合わせから修理、ナレッジ管理までを一元化し、業務効率とサービス品質を向上させる専門システムです。
  • 過去データの移行: 紙やExcelに散在する過去の対応履歴を資産として新システムに集約、全社的なナレッジとして活用する基盤を築きます。
  • 業務の標準化 :システム導入前に業務プロセスを見直し標準化することで、属人化を解消し、導入効果を最大化させるために必須なステップです。
アフターサービス業務は、顧客満足度を左右する重要な業務の一つですが、属人化や手作業での業務が多く、DXによる改善余地が大きな分野です。また、不具合情報の管理・共有・活用が十分にできていない企業もあり、結果として、顧客満足度の低下=顧客離れにつながるリスクがあります。アフターサービス業務に対するDXによって、高品質・迅速・低価格なサービス提供を図り、顧客満足度を向上させることで、次回の購入機会を逃さないようにすることが大切です。そこで本稿では、アフターサービス業務におけるDXに向けたシステム構築の重要性・ポイントを解説し、アフターサービスにおける課題を解決するためのヒントをお届けいたします。

アフターサービス部門へのシステム投資の必要性

アフターサービス業務とは、製品の販売後に顧客へ提供する付加サービスに関する業務のことを指し、顧客からの問い合わせ対応や修理対応だけではなく、再発防止策の検討・蓄積や、定期的なメンテナンス業務もアフターサービス業務に含まれます。迅速に高品質・低価格なサポートを提供することが顧客満足度の向上に、ひいては次の製品購入機会につながります。一方で、製造業におけるアフターサービス業務は、特にBtoBビジネスを行っているような企業では、長らく重要視されずに、大きな投資もされていませんでした。そのため、非効率な業務が残存する一方で、不具合情報が有効に活用されていない状況になっていました。しかしながら、日本の製造業における有望な成長事業としてアフターサービスが注目され始めてきています。製品の販売だけではなく、販売後のアフターサービスによって、製品の生涯に渡って稼ぐ利益を最大化することができます。

こういった環境の変化に対応し、会社から求められる成長を実現するためには、アフターサービス部門における業務およびシステムの抜本的な見直しが必要です。そうすることによって、業務内容やノウハウを標準化・可視化でき、生産性が向上し、スピード・品質の向上を追求できます。結果として、低価格でのサービス提供ができ、さらなる収益力向上につながります。アフターサービス業務で発生する不具合情報は、アフターサービス部門のみならず上流業務(開発・販売・生産・調達・品質保証等)への活用が求められています。現行製品の改良だけではなく、次世代の製品に関する貴重な情報であり、製品のライフサイクル全体を見据えた広い視野や情報共有が必要です。

そこで次章より、「アフターサービス業務基幹システム」の導入に関する要諦について解説いたします。

【図1】アフターサービスが生み出す天使のサイクルへ

アフターサービスに必要なシステム機能

「アフターサービス業務基幹システム」としては、下記業務機能を満たしている必要があります。

【図2】アフターサービスに必要なシステム機能

※上記以外にも、売上管理やデータ分析等に関する機能も必要ですが、他システムの機能を活用することで対応可能です。

一般的な基幹システムPKGには上記機能は実装されていないケースが多いため、周辺モジュールかアフターサービス専用のPKGを導入する必要があります。

過去データの移行を乗り越えろ

アフターサービス業務におけるシステム刷新を成功させるための重要なポイントの一つは、過去データを正しく新システムへ移行することです。アフターサービスでは、過去の問い合わせ情報、不具合情報、作業・修理情報が肝であり、この過去データを蓄積・活用することが非常に重要です。このノウハウの宝庫である過去データを、新システム導入においても快適にアクセスでき、検索・参照することが必須です。過去データをナレッジとし、日々のアフターサービス業務に活用していくことで、アフターサービス部門全体のスキルを一定水準以上に担保することができます。つまり、顧客へ安定したサービスを提供することが可能です。

ただし、過去データの移行が重要である一方、過去データを“正しく”移行することは難易度が高く、慎重に取り組む必要があります。過去データは、システム導入以前の紙・個人のExcel・メールで管理しているケースも多く、そういった情報を正しく新システムに移行し、いつでも・誰でも・どこでも使いやすい形にしておく必要があります。移行を成功させるためには、「①移行すべきデータ/する必要がないデータの切り分け」、「②新システムでの活用方法の明確化を事前に整理」しておく必要があります。特に文章データだけではなく、写真データやPDF等のデータも多くあるため、事前の整理が重要です。

なお当社では、過去データの移行ツールを用いて、短期間で移行作業を完了させることが可能です。

【図3】データ移行における留意点

システム導入に向けたポイント

システム導入の効果を最大化するためには、業務の標準化が必須です。
当社クライアントにおいても、製品によってアフターサービス業務のやり方や、アフターサービスで得た知見の管理方法が異なっており、業務が属人化していました。アフターサービス対象製品が増加する一方で、技術者の定年退職者も見込まれるため、早期の知見蓄積・業務効率化が求められていました。
そのため当社支援の下、システム導入前にまず、業務パターンの整理・あるべき業務の整理をしました。

業務標準化に向けた基本的なステップは以下です。
1. 現状の業務内容を棚卸しする
2. 生産性・収益性を上げるためにあるべき業務はどんな姿なのか整理する
3. 現状業務とあるべき業務の比較をして業務課題を抽出する
4. 業務課題を踏まえ現状業務の見直しをして標準業務の検討を行う

現状業務に囚われ過ぎず、柔軟な業務の見直しや業務を支える「アフターサービス業務基幹システム」を導入することで、各アフターサービス担当者の担当領域が拡大し、知識やスキルの向上となりました。

【図4】業務標準化に向けたステップ

まとめ

アフターサービスは、製品の販売後も顧客と長期的につながる、顧客から見ればいわば“企業の顔”ともいえる存在です。アフターサービスで顧客の期待を裏切るようなことがあった場合には、製品だけではなく会社全体の評価をも左右しかねません。その業務を担うアフターサービス部門は、徹底的に効率化され最短のL/Tで、顧客の期待に適切に応えることが必要です。そのためには、人海戦術でのやり方ではなく、システム投資を通じたDX導入を図る必要があります。アフターサービス業務基幹システムの導入は、全社基幹システムを導入する場合と比較し、導入期間や工数を抑えることが可能です。アフターサービスの収益力向上を図るためにも、貴社アフターサービス部門のDXをお考えになってはいかがでしょうか。

ソリューションに関するオンライン相談ソリューションに関するオンライン相談 最新情報をお届け!メルマガ登録最新情報をお届け!メルマガ登録

この記事の執筆者

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。