CX戦略・CRM構築

コロナ禍で企業に対する顧客接点は大きく変化しました。どの業種・業界においても例外なく、オンラインでの顧客タッチポイントの維持、顧客接点のデジタル化への取り組みの強化は余儀なくされ、企業のマーケティング部門やDX部門は真新しいテクノロジーを探索し、採用・導入を推進しているのが実態です。しかし、ツールありきでCX戦略・CRM導入を行ってしまっては効果が限定的となります。ターゲット顧客に応じた有効な施策を構築し、その実現に向けて必要なツールを適切に採用することで、顧客との長期的かつ有効な接点を構築することが可能となります。

見込み顧客を放置するとかなりの確率で競合に流れる

Sirius Decisions社の調査によると、獲得した見込み顧客の内『75%は直近で購買検討には至らない』という結果が出ている一方で、購買意欲がないためフォローを継続しなかった見込み客の内『80%は2年以内に競合企業から製品を購入している』という結果が出ています。すなわち獲得した見込み客の60%は競合企業に流れていることになります。これも衝撃の調査結果ですが、心当たりがあり悔しい思いをした営業担当者の方はたくさんいるのではないでしょうか。しかし、数多くの見込み顧客を営業担当者がすべてフォローするのは現実的には非常に困難です。
このような状態を未然に防ぐためにも、デジタルテクノロジーで顧客行動の変化を常時把握し、適時にアクションを講じることが重要となります。

【図1】放置した見込み顧客が競合に流れる割合

CX戦略、CRMを構築する上での重要視点

ビジネスにおいて既存顧客の囲い込みも重要ですが、提案などを行った見込み顧客のフォローも将来獲得利益の最大化においては非常に重要です。顧客行動の全体像を捉え、顧客接点ごとの施策と必要となるデジタルテクノロジーを設計し、効率的かつ有効なCRMを構築していくことが重要です。

顧客は何にお金を払うのか?

企業が提供する製品やサービスに対して、顧客は2つの価値を感じています。
 
1つが「合理的な満足」です。顧客が利用する前に抱いていた期待値に対して、それを満たしているかを客観的・合理的に判断する思考プロセスです。機能・性能・価格・情報の質などを、製品・サービスの利用を通じて検証し、自身が払った価額に見合った満足が得られているかを検証しています。相手の事前期待に到達できていればリピートオーダーを得られますが、これだけでは他に機能面や価格面で優れた代替品が出てくると、すぐに乗り換えされてしまうリスクを内包しています。
 
もう1つが「心理的・感情的な満足」です。顧客が事前に期待したよりもはるかに優れた体験価値を享受できると、人は感動し、他には替え難いロイヤリティ・愛着の心理を持つのです。非常に主観的な基準ですが、これは差異化・固有化につながるとともに、人に紹介してくれるという副次的な効果(ロイヤリティの移転)を生み出すのです。

【図2】顧客が感じる2つの価値

エクスペリエンス・デザイン・シンキングにより顧客体験プロセス設計

顧客の一連のプロセスの中に、いかに体験価値を埋め込むかを検討するにあたって、デザイン思考の手法を使ったプロセス設計が有効です。お客様の購買シーンに限定せず、お客様が製品・サービスを探してから購入し、利用して結果・効果を享受するまでの一連のプロセスを棚卸し、各シーンの中でのお客様が抱く感情を抽出していきながら、それぞれのタッチポイントの在り方を設計していきます。
 
ここで重要になるのがプロトタイピングです。実際に簡易なプロトタイプを構築して、主人公(お客様)の視点で実際に体験してみることで、新たな発見や発想が生まれ、プロセスの進化につながっていくのです。

【図3】エクスペリエンス・デザイン・シンキングのアプローチ

マーケティング施策へのテクノロジーマッピング

顧客接点を中心としたマーケティング変革の必要性は理解しつつも、個々の改善施策が山積みになっており、全方位で取り組むリソースがない中で、どこからデジタルマーケティングを強化するべきか悩んでいる企業も多いのが実態です。
 
まずは顧客行動プロセスとマーケティング施策のマトリックスを用いて、CRM構築の全体像を明らかにすることが必要です。自社ではまだ未導入のソリューションをマッピングしておくことも重要です。ソリューション間の連携も明確にし、欠落や重複がないか確認が必要です。

【図4】顧客行動×マーケティング施策へのテクノロジーマップ

レイヤーズのCX戦略・CRM構築ステップ

CRM構築は、①計画フェーズ ②実行フェーズ ③運用フェーズ に分けて進めます。
 
計画フェーズでは、まず現状の実態・実力を分析した上で、戦略シナリオ・カスタマージャーニーマップをアップデート、テクノロジーマップを作成し、戦略を具体化します。具体化したマーケティング施策を基にソリューションを選定し、実行計画を策定します。
 
実行フェーズでは、選定したソリューションの導入(導入済みの場合は機能改修)と必要に応じてパイロットで有効性を検証します。また上述で成果を得られない要因でも挙げているように、改善効果を定量的に検証するプロセスを事前に設計しておくことが重要です。
 
運用フェーズでは、設定したKPIに目標値を設定し、運用状況をモニタリングします。モニタリングはできる限り短いサイクルで、計測~分析~改善のプロセスを回すことが重要です。
 
顧客の購買プロセスにおいては、今後もデジタル化は進行し、デジタル完結する未来もそれほど遠くないと予想されます。ビジネス環境の変化に合わせて顧客接点のデジタル化を再構築し、高い次元でCRMを実践することで、持続的な成長への貢献が期待できます。

【図5】CX戦略・CRM構築の進め方(例)

CX戦略・CRM構築に関連するセミナーアーカイブ

CX戦略・CRM構築に関連するセミナーアーカイブ動画を配信しています。ご興味をお持ちいただけましたら是非お申し込みください。

顧客起点のビジネスイノベーション
~顧客接点DX・データ活用の新常識~

良い製品を作って売るだけの時代は終焉を迎え、顧客との良好かつ長期的なつながりから収益を獲得するビジネスモデルへ移行するため、日本の企業は顧客接点のデジタル化に取り組み、顧客ニーズ・行動の理解を深めてきました。しかしながら、顧客の変化を正確に把握し、入手した情報を自社ビジネスの成長に活用できている企業はまだまだ少ないと言えます。顧客のライフスタイルや購買行動が絶え間なく変化する中、顧客接点DXを最適化し、顧客データ活用を進化させ、顧客を起点にしたビジネス変革が求められます。   本セミナーでは、基調講演に株式会社クレディセゾン 執行役員 磯部 泰之 氏をお招きし、顧客データを本業のコアオペレーションで有効活用し、顧客のLTV最大化まで貢献するカードビジネスでの構造改革の実践的手法と、これからのDXに求められる人財育成についてご講演いただきます。   レイヤーズ・コンサルティングからは、以下について講演致します。   【講演Ⅱ】「顧客起点のビジネスモデル変革」 顧客接点を最適化し顧客体験価値から新たな収益を獲得する方法について   【講演Ⅲ】「CX/EX/未来視点によるDX構想の描き方」 事業を成長軌道に乗せるためのDX構想の策定方法について

データドリブン経営の実践
~データ・ビジネス・カンパニーへの変革~

DXブーム以降、成功事例として、データを駆使して収益・生産性を飛躍的に向上させている企業がありますが、それは一握りで、その陰で大半の企業は、失敗・苦戦、又は、そもそも実践に移せてすらおらず、成功企業と失敗・出遅れ企業で二極化している状態です。 もはやDXは、単なるブームではなく、全ての企業が乗り越えるべき変化であり、かけ声やポーズで終わらせず、いかに実践して、いかに成果に結びつけるかが求められています。   基調講演では、株式会社JALカード 西畑社長をお招きし、JALグループのDX事例を交えながら、DX成功のキーファクターと取るべきアプローチを、ご講演いただきます。   1. JAL史上最大の、旅客基幹システム刷新「SAKURA プロジェクト」成功の鍵 2. 新たな価値創発の場「JALイノベーション・ラボ」から見えたイノベーションの本質 3. JALカードでの挑戦として、データ・ビジネス・カンパニーへの変革     レイヤーズ・コンサルティングからは、データドリブンによるビジネスモデル変革や、データ活用によるマネジメント変革の事例と実践ポイントをご紹介いたします。   【講演Ⅱ】 「データ・マネタイゼーションの実践」 “次なる金脈”と言われるデータを収益化していく為の実践ポイントをご紹介   【講演Ⅲ】 「データ駆動型でのオペレーショナル・エクセレンスの実現」 データ活用でのオペレーション改革に向けた着眼点と実践ポイントをご紹介