2026/11/02
【第13回】技術革新を起こす設計DX
~試行の速さが競争力を生む~
求められる開発スピード
これまでに述べてきた「原価」「プライシング」において設計者は重要な役割を担う。設計の上流段階から原価を作り込むとともに、製品の付加価値向上に直結する技術革新が求められるからだ。しかし、設計者を取り巻く環境は非常に厳しい。市場ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短縮により、製品開発にはこれまで以上にスピードが求められている。一方で、品質や安全性への要求はますます高まり、開発の複雑性も増している。このような環境下で、設計者には継続的に技術革新を生み出す力が求められている。
近年大きな技術革新を起こした企業の1つにSpaceXが挙げられる。SpaceXはロケットの再利用を商業レベルで実用化し、従来は使い捨てが当たり前だったロケット運用の常識を覆した。その結果、打ち上げコストを従来の約1/2~1/5まで低減し、世界全体の打ち上げ回数や衛星投入数の約半数を担うまでに成長している。しかし、SpaceXの競争力の源泉は、再利用ロケットという革新的な技術そのものではない。従来の業界常識の「失敗しないために時間をかける」文化から、「小さく作り、速く試し、速く失敗し、そこから学ぶ」という開発モデルを徹底したことにある。設計・製造・試験・打ち上げを高速に繰り返し、その過程で得られた膨大な知見やデータを次の設計へ素早くフィードバックする。この高速な学習サイクルこそが、SpaceXの技術革新を支える原動力となっている。
もっとも、現実の製品開発では、実機試作や実験には多大な時間とコストを要するため、リアルな世界だけで試行回数を増やすことには限界がある。そこで重要となるのがデジタル上で試行回数を飛躍的に増やすことである。設計、解析、シミュレーション、製造性検証などをデジタル空間で繰り返し実施し、得られたデータを蓄積・統合して次の開発へフィードバックする。この「試行→学習→改善」のサイクルをデジタル活用して高速で回すことが、製品開発の競争力を左右する。
次回以降、AIや3Dモデルを活用した設計DXによる抜本的プロセス改革のポイントについて論じていく。
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