採用難をチャンスへ。
BPOで人材流動化と業務効率化を実現。

◆この記事の要約

BPOと聞くと、コスト削減のための業務外注やリストラ手段などにイメージされがちですが、人材不足が叫ばれる昨今、企業競争力の維持・強化手段としても有効です。そこで本稿では、レイヤーズ・コンサルティングとベルシステム24ホールディングスが共同設立した新会社(Horizon One)が提供する、業務効率化と人材配置最適化の成功事例を紹介します。BPOはボリュームゾーン業務をコスト削減目的で業務代行に出すだけではなく、人材不足への対応策としても位置付けられ、企業競争力の維持・強化に寄与します。

  • BPOの目的: 理系人材の採用難にともなう人材不足に対し、労働移動を起こす。
  • アプローチ: バックオフィス業務をBPO化し、フロントオフィスに人材を集約する。
  • 業務移管: 小規模多品種のものを多く含む約150の業務を対象に、各業務平均2か月で移管をAs-Isで実施し、BPO内で効率化を図る。
  • 成果: 55FTE相当の業務を3割削減した40人体制で運用。納期遵守率100%、正確性99.8%を達成。
  • 運用体制:オペレーターの多能工化を推進。タイマーツール導入や定期的な1on1面談を通じて、生産性管理による効率化とスキルアップを実施。
多くの日本企業は、①業務の継続性(採用難、高齢化等)、②業務の効率化(DX活用による手作業の廃止、属人化の可視化等)、③人材の流動化(専門業務へのシフト、運用コストの見直し等)が求められています。対応策としてBPOは余力を創出し、人材を流動化させて業務プロセスを改革することができます。ポイントは、全ての管理業務のBPOや多品種少量業務もBPOを通じ、担当者からオペレーション業務を100%オフロードすることにあります。そこで本稿では、レイヤーズ・コンサルティングとベルシステム24ホールディングスが共同設立したBPO会社である、Horizon Oneが提供するBPO事例を紹介します。

人材不足に直面する業界のBPO

某大手建設関連企業では、理系・技術職人材の採用難と、時間外労働の上限規制等の法改正により、工事現場の施工等を担う人材不足という課題がより深刻化しており、潜在需要があるにも関わらず、受注活動を制限せざるを得ない状況に陥っていました。

この課題解決に向けて、まずは営業や施工等の顧客対応業務を行う部門をフロントオフィス、フロントオフィスのサポートを行う部門をミドルオフィス、経理・人事等の管理業務を行う部門をバックオフィスと定義しました。そのうえで、バックオフィス部門の社員の中にも、業界固有知識やフロント業務に精通している人材や元技術者がいることに着目しました。

そして、バックオフィスで行っている管理業務をBPO化することにより、バックオフィス人材をミドル・フロントオフィスへシフトさせる全社的な人材流動化の方針を打ち出しました。現在は経営層の強いリーダーシップのもと、約100人月分のバックオフィス業務のBPO化を目指されています。このように、当社は顧客のビジネス成長のみならず、管理業務のプロセス改革や安定的な業務運用にも寄与しています。

【図1】BPO導入背景の概要

人材流動化の肝は多品種少量BPO

人材流動化によりフロントオフィスの体制拡充を実現するためには、伝票起票や経費精算等の経理業務や、給与計算や勤怠等の人事業務のようなボリュームゾーンの業務だけをスコープにした取り組みだけでは不十分であり、専門性の高い業務や少量多品種の業務も含めたバックオフィス業務全てをBPO化するというチャレンジングな取り組みが必要となります。

そのため某企業では、本社・各支社・営業所の管理業務機能を担う全ての部門を対象とした業務調査を実施しました。その結果、経理・人事のボリュームゾーンを対象とした移管・運用開始を皮切りに、一年間で営業事務、業界固有業務、情報システム、不動産事業、調達等と多岐にわたる領域で約150種類の業務移管・BPO開始を実現しました。

これらの各業務は複数フェーズに分け、各業務平均2か月の短期間で移管を実施しています。また、このうち約130種類は年間1人工以下と多品種少量の業務です。そして現在もさらなる業務のBPO化に向けて、業務分析や業務可視化、移管等のコンサルティングを継続的に実施しています。

【図2】全バックオフィスBPO+多品種小ロットBPO

マッハBPOと業務改革による効果創出

現在当社が運用している約150種類の業務は、業務調査票上では約70FTEのボリュームに相当しますが、業務量削減・効率化の取り組みを行うことにより、約30%削減した約50名での運用を実現しています。
ボリュームゾーンに加え、専門性が高いものも含めた多品種少量の業務を、どのように業務量削減・効率化に取り組んだかについて、こちらの章ではご紹介します。

集約化・標準化のアプローチ

BPOに向けて業務移管する場合、まず顧客内部で業務集約・標準化・効率化してから外部委託しなければならないとお考えの企業様も多くいらっしゃいますが、当社では現状業務プロセスのままで早期に引継ぎを行い、BPO内で業務効率化・削減に取り組むことを実現しています。そこで某プロジェクトでは、大きく2つのやり方で業務効率化を実施しました。

1.各支社で管轄・実施していた業務をBPO化する機会に、本社直轄へ管轄部署を変更し、本社の号令の下、支社ごとに独自ルールとなっていた部分をあぶり出し、統一基準の設定・平準化を推進する手法。

2.当社から各支社・営業所へヒアリングを行い、業務手順の比較・対象をして、各所の業務手順のメリットを抽出したうえで、全体最適の業務プロセスを設計し、全支社・営業所へ水平展開する手法。

効率的な運用体制

ボリュームゾーンの業務だけを受託する場合、BPOメンバー全員を同一業務にアサインすれば済みますが、1人工以下の小規模多品種の業務をお預かりしている場合、一人が複数業務を担当する多能工化が不可欠です。しかし、メンバーに一任した場合には、属人化・ブラックボックス化を招き、運用体制が弱体化させかねません。そのため、生産性管理と機能的な運用体制を構築することが肝要です。そこで某プロジェクトでは、以下の4点の取り組みを実施しました。

1.生産性ツールの導入:管理者がリアルタイムで各メンバーがどの業務を実施しているかを把握するため、ブラウザ上で動作する生産性ツールを導入しました。その後、各メンバーにアカウントを付与し、各自の担当業務が個人画面に一覧として表示されるようにしました。その結果、自身の担当業務に着手する前に、業務名の横にある時間計測ボタンを押すことで、管理者からは各自がどの業務を実施しているかの把握に加え、各業務への投下工数も一覧で集計できるため、処理件数で割ることで生産性を数値化して把握しています。これにより、業務改善ポイントやメンバーのスキル不足を抽出し、後述の1on1でのフィードバックにつなげています。また、手待ち時間もタイマーを押す仕様のため、日別・人別の業務多寡を把握し、最適な業務配分を実現しています。

2.全体統制:当社では熊本・京都BPOセンターで従事するメンバーを軸に、日本各地でリモートにて業務運用する社員も多数在籍しており、全体の方向性を共有させることを重要としていますが、本プロジェクトでも、チームごとにオンラインで朝会を実施し、その日に実施する業務の詳細や方針の明確化を行っています。また、定期的に各チームで複数のオペレーターをまとめるリーダーを集めた会議を行い、自分たちのチームだけでなく、全体としての方針や課題を明確化することにより、広い視野で業務を実施できるような体制を整えています。

3.業務の徹底的な定型化:上述のようにメンバーの多能工化を進めるにあたり、マニュアルのテンプレート化に力を入れております。複数のメンバーが多種多様の業務を行うので、多種多様なマニュアルがあっては業務理解に支障をきたします。そのため、テンプレートを1つにして明確にすることで、どの業務でも早期の理解を促進するとともに、運用中に手順等に変更が生じた場合でも、誰でも更新することができ、情報の適時性を確保しています。

4.定性面のフォローアップ:2か月に一度、管理者が各メンバーと1on1面談を行い、上述の生産性管理から抽出したスキル不足等も含めた業務のフィードバックを行っています。加えて、個々人の現在の課題や悩みを吸い上げ、スキルアップをサポートする体制を整えています。

上述のとおり、生産性管理の徹底と機能的な配置を行うことで、約150の業務を平均2か月間で移管し、納期遵守率100%、正確性99.8%と、短期間でのクライアントの手離れと品質の高いサービスレベルを当社のサービスは提供可能としています。

【図3】マルチタスク運用体制(イメージ)

【図4】BPO後の業務効率化(イメージ)

まとめ

BPOはコスト削減を目的とした単なる業務代行、またはリストラ手段としてではなく、企業競争力の維持・強化の機能としても位置付けられています。特に人材採用がますます困難になり、新市場の開拓が求められるトレンドの中で、ビジネス成長に寄与する領域へのリソースシフトや、バックオフィス業務のDX等を活用した業務効率化の必要性は高まっています。

そのためには、担当者の業務を全てBPO化することが重要であり、専門的な業務、多品種少量な業務、業界固有業務等もその例外ではありません。今回ご紹介した本事例は、採用に苦戦されている多くの日本企業にも有益なBPOアプローチと考えています。

ソリューションに関するオンライン相談ソリューションに関するオンライン相談 最新情報をお届け!メルマガ登録最新情報をお届け!メルマガ登録

この記事の執筆者

  • 岡田 恵
    岡田 恵
    BPO事業部
    マネージャー
  • 古屋 大和
    古屋 大和
    BPO事業部
    コンサルタント
  • 河口 亜慧
    河口 亜慧
    BPO事業部
    コンサルタント

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。