労働力人口減少2030年の崖に備えよ
~第1回 改革人財の確保~

日本の生産年齢人口のピークは1995年、総人口のピークは2008年でしたが、労働力人口のピークは2030年頃と予測します。2030年を過ぎると何が起きるのか、その前に何をしておくべきか、3回シリーズでお伝えしたいと思います。
 
第1回の今回は、なぜ2030年を労働力人口のピークと予測しているのか、2030年を過ぎると何が起きるのかの予測とともに、その対策を行うための改革人財の確保の方法についてご説明いたします。

日本の人口動態

日本の人口が減少していること皆様ご存知の通りかと思います。
では、生産年齢人口(15歳~64歳までの人口)がピークであった1995年に比べて、生産年齢人口は14%も減っているにも関わらず、労働力人口(就業者数と求職者数を足した人数)は3%ではありますが、増えていることはご存じでしょうか。

1995年にはまだ6割~7割程度だった女性の労働力人口比率(※1)が8割を超えたことと、長寿も含めて65歳以上の労働力人口が倍になっていることが要因です。
面白いことに、男性の労働力人口比率(※1)は、98%に近かったものが95%程度まで下がってきています。「サラリーマンの夫と専業主婦の妻」という高度経済成長期を支えた家族像に当てはまらない家庭が増え、比率的には低いものの、就業せずに家族を支える選択をした男性も一定数いることがうかがえます。

なお、労働力人口は1995年と比較すれば微増、と記載しましたが、ここ4年ほどでいえば横ばいが続いています。労働力人口比率は上がってはいるものの、人口自体の減少の影響もあり、数としては横ばいにとどまっている状態です。

日本の総人口の推移については、国立社会保障・人口問題研究所のWebサイトのトップページ(https://www.ipss.go.jp/)にある、人口ピラミッドのアニメーションが非常にわかりやすいため、是非ご覧いただければと思います。
1970年には確かにピラミッドだったものが、中ほどが膨らんだ壺型を経て、紡錘形に変化していく様子を見ることができます。

(※1)労働力人口比率は、総務省統計局の労働力調査の結果より、25歳~34歳、35歳~44歳、45歳~54歳の3つの年齢階層の値について記載しています。

【図1】労働力人口の推移

労働力人口2030年の崖

人口ピラミッドの推移を見ていただくと、明らかに人口が減っていくという動きが見て取れたかと思います。第一次ベビーブーム世代(1947年~1950年生まれ)、第二次ベビーブーム世代(1971年~1974年生まれ)と1年に200万人以上が生まれていた時期がありましたが、第二次ベビーブーム世代の子どもたち…単純計算では1995年~2000年頃でしょうか。その前後の時期の出生数の減少に比べれば横ばいの印象はあるものの、出生数が増えるには至らず、以降は減る一方となっています。
第二次ベビーブーム世代のリタイアによって、日本の労働力人口は減少の一途を辿ると考えざるを得ません。

労働力人口の維持から減少への変化点は、私は第二次ベビーブーム世代が60代に差し掛かる2030年から始まると思っており、労働力人口減少期の始まりを「2030年の崖」と名付けたいと思います。

【図2】人口ピラミッドの推移

2030年を過ぎたら何が起きるのか

労働力人口減少期に入ることで、何が起きるでしょうか。
まず当たり前ですが、人手不足が深刻化します。

今でも人手不足の地域や業界も多いと思いますが、今はまだ、大企業を中心に余剰人員を抱えているという声もよく聞きます。今はまだ、人材のミスマッチやリスキル、場合によっては流動化(出口創出)のニーズも多いのですが、2030年以降は絶対数の不足というのが一番の課題となると思われます。

リタイアしていく人数に比べて採用できる人数が少ないため、同じ業務のやり方のままでは引き継ぐことができず、何も手を打たなければ、失われていく知見も一定数あるものと予測されます。
第一次ベビーブーマー世代がリタイアした際も、特定の重要なシステムの管理をずっと一人の人がやってきて、そのままやめてしまったので何の資料もないブラックボックスとなっており、動いてはいるがゼロから新しいシステムを作るしかない、などという話を聞いたことがありますが、今回も同じようなことが起きる可能性があります。

人手不足を解消するため、一部の企業ではリモートワークを前提とした遠隔地採用も進むものと考えられます。リモートワークができない企業にとっては、採用市場はより厳しいものとなるでしょう。

【図3】2030年の崖

2030年の崖を乗り越えるのにまず必要なのは「改革人財」

では、2030年の崖に向けて何をすれば良いでしょうか。
人手不足が起きることで怖いのは、何らかの変革を起こすための余力が真っ先に削られてしまうことです。

DX化の進展を見ても、変革を起こせなければ今の業務はやがて古くなり、それが足枷となって競争力を低下させるのは明らかです。労働力人口が減り続ける環境にあっても変革のための活動を実行し続けていける仕組みづくりが必要です。

今すでにそういった機能が業務運用部隊の中に根付いており、日々の改善活動が十分できていて老朽化する心配がないのであれば、その活動を続けていただければ良いのですが、多くの企業では、日々の改善活動どころか、現時点ですでにシステムや業務が古い、マニュアルやシステムの仕様書といったドキュメントの更新も追いついていないと聞きます。
大きな変革を実行するにはまとまった工数が必要ですから、このような場合は2030年までを目途として実行する方が良く、まずはそれを推進するための改革人財を確保することが必要です。

企業により行うべき変革は違いますが、一般論であれば、改革人財は下記の要件を満たしていることが望ましいと考えます。

  1. 実行しようとしている変革について、十分な知識があること
  2. 会社あるいはグループ全体の経営課題と、自部門のミッションや業務のつながりを理解していること
    (会社あるいはグループ全体の方向性を理解し、その方向性に即した形で自らが実行しようとするタスクの方向性を判断することができること)
  3. 改革意欲があること、他部門を巻き込む力に長けていること
  4. 会社あるいは特定の事業について、利益やキャッシュフローの最大化を図る上での要点を理解している、あるいは、計画立案や実績分析、シミュレーションを通じてその要点を導き出すことができること
  5. 業務やシステムを俯瞰的に理解しており、業務改革を行う上で適切な判断ができること
    (廃止すべき業務にお金や時間を費やして自動化してしまうなどの誤った判断をしないこと)
  6. 検討した施策が業務運用者にとって実行可能であるかを冷静に判断し、実行可能な施策(業務運用者のスキルアップを含む)となるまで諦めずにブラッシュアップできること

「改革人財」を確保・育成する方法

いかがでしょうか。
貴社に2030年までに取り組むべき課題がある場合、それを実行するのに足りる「改革人財」は貴社の中にいて、なおかつ、改革のための取り組みに十分工数を割くことはできそうでしょうか。

質・量ともに十分確保できるという企業もあるかと思いますが、ここでは質と量がどの程度不足しているかのケースに分けて、改革人財確保の方法をご紹介します。

【ケース1】改革人財の要件を満たす人財はいるが、手が空いていない

このケースでよく見受けられるのは、改革人財に対してミッションは与えられているが、このような人財は実務のスキルも秀でていることが多く、実務上のトラブル対応などで結局手が空かず、取り組みが進まないという問題です。

実務ももちろん重要ですが、一時的にでもBPOを活用することで、改革人財の手を空け、課題解決に注力できるようにすることが有効です。

【ケース2】改革人財に育成したい人財はいるが実力は不十分

当社にご相談いただくケースでは、これが一番多いかもしれません。
実力が足りないのでコンサルを入れ、ついでにコンサルと一緒に取り組ませることで改革人財の育成も行おうとお考えの場合も少なくありません。

【ケース3】改革人財は候補も含めて全然いない

規模の小さいところですが、稀にこういったお話もいただきます。
実務は何とか回っているが、回すので精一杯。ただし、手が空いたとしても実務以上のことができるとは思えない、というものです。

このようなケースでは、2030年以降になると機能を維持していくこと自体が難しくなってくる可能性があるため、機能しているうちにBPOベンダーに業務を委託してしまうことが望ましいと考えます。

【図4】改革人財の確保

BPOを導入した後、今いる人をどう活用するのか、という問題もあるかと思いますが、Horizon One(レイヤーズ・コンサルティングがベルシステム24ホールディングスと設立した間接業務BPOのジョイントベンチャー)では、今業務を実施している方も業務と一緒にお預かりし、リスキルプログラムを受けていただくサービスも提供しておりますので、興味がおありの方は是非お問い合わせください。

ここまでご精読いただきありがとうございました。
次回本シリーズの第2回目では、2030年の崖を乗り越えるための取り組みの2つ目として、労働力人口減少に負けない効率的な業務への変革の仕方についてご紹介します。

この記事に興味をもったらメールで送信して共有! ×

この記事の執筆者

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。