BPOを活用したリモート可能化のメリットと取組事例

「スキルのある人を中途採用しようとしているが、なかなか採用できない」という声をよく聞きます。応募者が誰もいない、というよりは、“条件を満たす人”がいないということのようです。
スキルや給与水準はそもそも条件を外すと採用目的が果たせませんが、ロケーション制約であれば、条件の緩和は検討の余地があるのではないでしょうか。
 
事務系の職種に限った話にはなりますが、ロケーションの制約を外すことができれば、採用市場は何倍にも広がります。
本稿ではリモート可能化のメリットと実践ポイントについてご紹介したいと思います。

労働市場の変化

総務省統計局の「労働力調査」によれば、日本の就業者数は2018年までは年々増えており、2018年からほぼ横ばいとなっています。
人口、特に生産年齢人口(15~64歳)は1995年頃をピークに減り続けているのですが、特に60歳以上の方や女性の就業率が高まることで就業者数が維持されてきている状態です。

しかしながら現在の50歳の人口が200万人であるのに対し、40歳は150万人、20歳は120万人と減っていきます。2022年の出生数は80万人を切ったほどですから、将来的には就業者数は下がっていくであろうことが容易に想像されます。(総務省統計局より公表されている「人口推計」(2022年10月1日現在)の値を参照)

また、地域的な分布を見ると、東京通勤圏と考えられる南関東に31%が集中していますが、逆に考えれば東京への通勤が必要なければ、残りの69%も採用の候補となり得ると考えられるのではないでしょうか。

所在地が南関東以外であればさらに効果は高まります。
東京よりも地方のほうが、そして、大企業よりも中小企業のほうが高齢化の進み具合も早く、採用の厳しさも高まっているかと思いますが、「居住地がどこでも構わない」という条件に変えることができれば、究極世界中から採用することが可能です。

IT系のエンジニアなどであればフルリモートの求人情報は既に珍しくはありませんが、近い将来の労働市場を想像するに、パソコンを使って仕事を行ういわゆる事務系の職種全般にこうした動きが広がってくることが予想されます。

【図1】日本の就業者の分布

二極化するリモート可能化の進み具合

当社の独自調査によれば、2021年には上場企業勤務者(工場労働者などを除く)のリモートワーク率は29%、2022年には31%だったものが、コロナが第5類となった2023年には22%まで減少しました。
しかしながら、もしリモートに切り替えると会社が判断したら切り替えられるかという質問に対しては、65%の人がリモートワークに切り替えられると回答しており、コロナ禍においてリモート可能化が進んだことが伺えます。

対して非上場企業ではリモートワーク率の変動も大企業ほどではなく、リモートワークには切り替えられないと答えた人が60%に上りました。
統計的に処理する都合上、上場企業と非上場企業に分けて集計しましたが、非上場企業の中にもリモート可能化が進んでいる企業はあるため、上場非上場の違いというよりも、リモート可能化が進んでいる企業と、進んでいない企業の二極化現象が起きているのではないかと想像されます。

リモート可能化が進んでいる企業や業務であれば、もし必要であれば前項で述べたように居住地を限定せずに採用活動を行うことが可能です。逆に言えば、リモート可能化を進めていかなければ、自社の通勤圏という限られたパイを、リモートワークが可能な遠隔地の企業とも争うことになってしまう可能性があります。

【図2】リモート可能化が進んだ企業も多い一方で、取り残されている企業もある

ハード面だけではない、リモート可能化のポイント

2020年にコロナ禍の最初の緊急事態宣言が出た当初は、紙書類や押印、外部からの社内ネットワークへの接続など、ハード面の対応ができていないのでリモートワークにできない(あるいは非常に限定的)ということが大きな課題でした。

半年、1年経つと、今度はリモートワークで果たして仕事はしやすいのかとか、プロセスが見えづらいので評価がしづらいといった、リモートワークが常態化したことで顕在化したソフト面の課題が話題となりました。

総合して、概ね下記がリモート可能化のポイントであると考えます。

<ハード面>

  • 現物(紙書類、在庫、現金同等物等)管理業務の廃止(ペーパーレス化等)、あるいは外注化
  • 業務に必要なパソコン等の機器の社外への持ち出しに必要な対策(主に紛失等を想定したセキュリティ対策)
  • 社外からの社内ネットワークへの接続に必要な対策
  • リモートワーク用の職場環境(社員の自宅などのホームオフィス環境)の整備

<ソフト面>

  • リモートワークやリモートコミュニケーションに関する社内ルールの制定・啓蒙
  • チーム内、上司部下間でのリモートコミュニケーションを前提としたコミュニケーションルール(例えば状況に応じた役割分担の見直しをリモートで円滑に行うための調整方法)の検討
  • 社内の他部署等とのリモートコミュニケーションを前提としたコミュニケーションルール(例えば、社内問い合わせ用のツールの導入)の検討
  • 雑談などの業務外のコミュニケーションをリモートでも実施しやすくなる方法の検討

前項で述べた「リモートワークへの切り替えが可能」な状態は、ハード面の課題は一定以上解決された状態であるはずですが、ソフト面については必ずしも解決に至っていないケースがあると想像されます。
災害などで一時的にリモートワークにするだけであればそれで充分ですが、採用の条件からロケーション制約を外すとなれば、常態的なリモートワーク勤務者がいることを想定した仕組み作りが必要です。

ニアショアを活用したリモート可能化の取組事例

最後に製造業A社でニアショアを活用してリモート可能化を推進した事例についてご紹介します。

A社では紙を多用したやり方で業務を実施していらっしゃいましたが、Horizon One(レイヤーズがベルシステム24ホールディングスと設立した間接業務BPOのジョイントベンチャー)に業務の一部をアウトソースするにあたって、ペーパーレス化を同時に推進しました。

最初にA社のオフィスにHorizon Oneのメンバーがお伺いして業務説明を受けるのですが、その際に、紙を使わない業務の組み立てを行いました。
一例をあげると、従来、「紙が回ってきて机の上に置いてある」ことが業務開始のトリガーだったのですが、ExcelやTeamsを使って、業務の開始タイミングを知らせるとともに、紙回付の時には一緒に綴じられていた関連情報を、貼ってあるリンクをクリックするだけで確認できるように簡易ツールを作成しました。

同じオフィス内で実施する前提で組み立てられている業務をリモート可能な状態にする際に、例えば紙ならそのまま郵送するというやり方もありますが、A社の場合はペーパーレス化に取り組みたいという意向もありましたので、「ニアショアに外注するのだから紙は止めなければならない」というのを基本的な考え方とすることで、ペーパーレス化に強制力をもたせて推進した事例となります。

 

ここまでご精読いただきありがとうございました。
BPOを活用したリモート可能化に興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。

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