あるべきPMOの機能

システム開発プロジェクトの実行に苦慮されている企業も多いかと思います。スケジュール遅延や予算超過に加えて、オーナー企業側でやらなくてはいけない作業が大量にあり、どうやったらいいのか、誰がやるのか、見当も付かないということもあるのではないでしょうか。
当記事では、プロジェクトを成功させるために、弊社が考えるPMOの機能について、ご紹介したいと思います。

プロジェクト成否の実態

企業IT動向調査報告書2022(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)によると、開発規模が500人月を超える大規模システム開発プロジェクトの46%が予定よりも遅延、39.4%が予算よりも超過しています。反対に予定どおりの工期で完了したプロジェクトは、わずか13.9%、予算内に収まったのは17.1%にすぎません。
開発規模500人月を金額換算すると、10億円以上の規模ということになります。調査にはありませんが、規模が大きくなるほど、工期や予算の超過が起こりがちではないでしょうか。数十億円以上を費やすような大規模の基幹システム開発プロジェクトでは、おそらく大多数が工期の遅延、予算の超過を起こしていると推定できます。
同報告書によると、遅延や予算超過の原因としてあげられている上位3つは、計画時の考慮不足、仕様変更の多発、想定以上の現行業務・システムの複雑さとなっていますが、端的に言えばプロジェクトマネジメントに失敗したということかと思います。
プラットフォームからアプリケーションまで、主要ベンダー1社が仕切っていたプロプライエタリ―技術、SI全盛の時代であれば、プロジェクトマネジメントもベンダーがしっかりとやってくれましたが、IT技術の変遷とともに、ベンダー側のビジネスモデルも変わり、プロジェクトマネジメントの遂行、インテグレーションは、オーナー企業側の責任という考え方になっています。しかしオーナー企業のシステム部門には、プロジェクトマネジメントの経験者は極めて少なく、また体系的な管理手法やノウハウがあるわけでもありません。入社以来10年以上、一度も大規模なシステム開発プロジェクトがなかったというシステム担当の方々も多いのではないでしょうか。クラウドサービスやパッケージ、ソフトウェアツールを適用したプロジェクトでは、多数の技術やベンダーの組み合わせとなり、求められるプロジェクトマネジメントやインテグレ―ションのレベルもさらに高まっていると言えます。

プロジェクトマネジメントのコストと業務

一般的にプロジェクトマネジメントにかかるコストの割合は、総投資額の15~25%になると言われています。例えば、開発に30億円かかるのであれば、約5億円から10億円になります。このコストは開発コストの外数として見積もる必要があるということです。上記の例では、プロジェクト総予算は35億円~40億円というのが本来想定すべき金額ということになります。
プロジェクトマネジメントというと、1人あるいは複数のプロジェクトマネージャーやチームリーダーが、各チームの進捗をチェックしたり、あがってきた課題を検討したり、プロジェクトオーナーへの定期報告をしたり、契約やコストの管理をしたり、というイメージをもたれるかと思います。教科書的な定義では、プロジェクトスコープやスケジュール、タスク、課題、品質、要員、コスト等々のプロジェクト資源の管理業務がプロジェクトマネジメントということになります。
もちろんプロジェクトの最重要業務ですが、こうした管理業務だけをプロジェクトマネジメントとして狭く捉えてしまうと、先ほど述べたオーナー企業側がやらなくていけないプロジェクト業務が宙に浮いてしまうことになります。

【図1】プロジェクトマネジメント業務(狭義)

「3つの移行」

一般にシステムを開発し、稼働させるためには、「システム移行」、「データ移行」、「業務移行」の3つが必要となります。図表にあるように、それぞれの移行では、オーナー企業自身がやらなくてはいけない作業が、開発工程に沿って存在します。こうした作業の漏れや遅れ、間違いも、プロジェクト全体の失敗につながります。例えば、ユーザテストやデータ移行でのミスや確認漏れが、稼働直前や稼働後でのやり直し作業や緊急対応を発生させ、遅延や追加コストを発生させたり、事前の周知や切替時のサポート体制が不十分で、問合せ対応に忙殺され、円滑な立上げができなかったりといった問題も、残念ながらよく起こっています。こうした「3つの移行」を行うためのコストを、協議のプロジェクトマネジメントコストに加えた金額が、先ほどの総投資額の15~25%ということになります。

【図2】「3つの移行」と必要な作業

弊社が考えるPMOの機能

弊社では、システム開発プロジェクトの遂行にあたっては、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の設置を必ずご提案しています。PMO自体は、ごく当たり前で、いずれの企業でも既に採用されているかと思いますが、弊社では、PMOは、3つの機能を持つべきと考えています。
進捗管理や課題管理、報告資料作成等のプロジェクトマネージャーの管理業務を支援する機能と会議設定やドキュメント管理、公式会議の議事録作成といった事務局機能に加えて、オーナー企業側がやらなくてはいけない、「3つの移行」の支援機能です。
それぞれの移行は、計画、体制確立、実施、評価といった一連のプロセスとして、実行する必要がありますが、開発プロジェクトを何度もやったことがあれば、何をしなくてはいけないか、どのぐらい大変なのか、ある程度、見当も付くのですが、プロジェクト経験が少ないメンバーばかりだと、イメージも湧かず、ついつい後回しになってしまいます。またどんなことが起きうるのか、リスクを予見することも難しく、対応が後手に回ってしまうこともよくあります。
弊社の考えるPMOは、形式的な進捗管理や事務局ではなく、プロジェクトの遂行に必要な業務を、お客様メンバーと一緒になって実行するというものです。複数のプロジェクト経験を持つコンサルタントが、オーナー企業の立場に立って、プロジェクト成功のために活動させていただいています。

【図3】あるべきPMOの機能

この記事に興味をもったらメールで送信して共有! ×

この記事の執筆者

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。