BPOを大規模システム導入の前に行うメリットとは?
各社、事情は様々ですが、システム導入まで維持されたプロジェクト体制が効果を出すところまでは維持されず、結果的に尻すぼみで終わってしまうケースが多いと思われます。
(大規模)システム導入は、一世一代の大勝負
近年ではRPAや軽めのDXツールの導入など、数日~数か月程度で実施できるものも多くありますが、依然として大規模企業における基幹システム更改などの大規模システム導入は数年かかるケースが多く、企業から見ても10年~20年に一度の一大イベントであり、携わる業務部門の従業員からすれば一生に一度程度しか経験することのない大仕事となっています。
当然、そうした大規模システム導入に慣れた業務部門メンバーなどほぼ存在しないので、我々のようなコンサルタントがナビゲートをしながら必要な意思決定をしてもらうのですが、序盤の最重要ポイントは、システム導入プロジェクトの目標を決定するところです。
システム導入は非常に大掛かりな改革ですが、システムを導入しただけでは改革とはなり得ないのも事実です。「システム導入後にうまくいっていない」とご相談を受けた某企業では、システムが変わったのにも関わらず、業務はまるで変わっていませんでした。旧システムのフォーマットから新システムのフォーマットにExcelツールを変えただけで、新システムで自動化された業務さえ、相変わらずExcelオペレーションを継続して、システムの処理結果が正しいことを手作業で確認していました。
業務部門がプロジェクト目標を決定する際には、システムが変わることを前提としつつも、それに乗って業務を変革するという強い意志が伴っていることが望ましいと言えます。
【図1】大規模システム導入でも、目標意識はこんなに違う
予定通りの稼働こそ正義!?
システム導入プロジェクトが中盤に差し掛かると、大抵問題になるのが、今のままの要件では予算に収まらない、という問題です。多くの場合、優先順位をつけて予算に収まるように調整して先に進むという対応を取ることになります。
優先順位をつけるのは当然のことですが、往々にして今できていることが優先され、改革目標の実現のための必要度合いが優先順位付けの観点から落ちてしまう場合もあります。
終盤に起きる問題はもっと深刻です。単に品質が悪いので稼働できないという場合もありますが、テストをしてみたら今の仕様では運用に耐えないことが分かって、どうしても仕様変更をしたいとか、業務部門の巻き込み不足でこのままではシステムは動いてもユーザーがついてこない、あるいは、移行データが作れないといったケースもあります。
稼働時期を遅らせて対応する場合は、まだ幸いと言うべきかもしれません。稼働時期が延びれば当然コストも膨らみ、効果の発現も遅くなるわけですが、実現できることや品質、ユーザーの準備は一定以上のレベルになる場合が多いからです。
稼働時期を変えず・・・何が何でも稼働させるんだ、と頑張るケースもよく目にしますが、このような場合は大抵、改革目標の実現などは、稼働時期を守るという大義名分のもと、忘れ去られてしまいがちなように見受けられます。
【図2】予算不足という危機に呉越同舟で乗り切った結果、どこに着くのか
そもそも業務部門の参画が足りないケースは多い
システム導入プロジェクトがうまくいかない原因は様々ですが、それを解決しようとした際に、業務部門の意思が通っていないかのような優先順位付けや、意思決定がなされてしまう事があります。その理由の一つに、業務部門の参画が不足しがちであることが挙げられます。
不足する理由は簡単で、そもそも人員に余裕がない(現業で手一杯な)ので、業務部門からプロジェクトに参画させるメンバーを捻出することができません。期間が経てば現業のほうに代わりの人を入れて余力を作り、数名の専任メンバーをプロジェクトに参画させることができる場合もありますが、プロジェクトの前半と後半では必要な人数も違うので、多くのプロジェクトで常に業務部門からの参画は不十分となっていると思われます。
結局そのツケは稼働後に回ってきます。
システムは動いているが運用に耐えられない、システムは動いたが周辺業務が変わらず効果が出ない、システムの機能が足りない・あるいは考慮漏れがありシステム外業務で対応する・・・
どれも、システム部門にとっては、システム導入が完了したと言えなくはない状態なので、これで終わってしまうケースもありますが、業務部門にとっては(会社全体としても)システム導入の目的を果たしたとは言えない状態です。
実のところ、システムが動いただけで効果が出ないのは別におかしなことではありません。システムが動いてからこそが、成果を出していくための活動を行っていく本番なのです。しかしながら、システムが稼働するとプロジェクトは解散してしまい、活動の引継先となるべき業務部門には思いも経験も伝わらずに、忘れ去られてしまうことが多いという大変残念な状況が伺えます。
【図3】業務部門の参画は、大抵常に足りていない
大規模システム更改前にBPOを導入するメリット
大規模システム導入を控えている場合、今BPOを導入するのが良いか、新システムになってからBPOを導入するのが良いかと迷われるお客様が一定数いますが、現行業務のまま少しでも早く・・・少しでも良いのでBPOを進めてシステム導入プロジェクトに費やせる工数を確保されることをお勧めします。
システム導入プロジェクトでユーザー部門が充分に参画することで得られるメリットに比べたら、BPOのコストなどたかが知れています。(大規模)システム導入プロジェクトは一大イベントなのですから、そこに人を出すためだけにでも・・・一定期間、BPOを利用してでも、プロジェクトに参画するメンバーを捻出する価値はあります。
システム導入プロジェクトへの業務メンバー捻出のメリット
- 自社業務メンバーの成長(大規模システム導入に参画した経験)
- 自社業務部門内に新システムの仕組みがわかる人間(最低でも、相談先が誰だかわかる人間)ができる
- システム仕様が業務要件をより反映したものになる
- 結果的に、ユーザーテストや稼働後の負荷が低くなる
3.4.には当社のようなコンサルティング会社の活用も効果的(業務部門の方と業務コンサルタントが共に検討する場合が最も効果が高い)ですし、一定程度は業務部門の方の参画が弱くても補うことは可能ですが、1.2.に関しては、自社メンバーが参加して初めて得られるメリットとなります。
【図4】大規模システム導入は、業務部門でも社員育成のチャンス
倦まず弛まずのチューニングもBPOにお任せ
また別の観点として、大手素材メーカーのA社では、当社のコンサルタントがシステム導入プロジェクトをご支援したことがきっかけで、稼働後にそのシステムが正しく動き続けるようにするためのお手伝いをBPOとして受託させていただいています。
稼働当初は、何が起きるか分からないため、コンサルタントが常駐し、様々にアンテナを張って、想定外の事象が起きないかを監視しておりましたが、安定運用となってからは、過去に発生してしまったインシデントが今月発生していないかをチェックし、必要であれば対応を行う業務を、BPOスタッフがご支援しています。
当然、運用をしていれば新しい取り引きが入ってきて新しい事象が発生しますし、システムの設定、システム運用の業務も適度に見直しが必要ですが、新しい業務に適するようにシステムの設定を変えたり、稼働時には必要だったが運用が安定したことにより不要となった業務は、エラーの発生実績を見ながら廃止していったりすることを、当社のほうから提案して実施しています。
システムは使いながら最適化しつづけなければ、老朽化する一方です。
酷い場合は、プロジェクト体制が解散して、システム子会社に運用が渡った瞬間から「よくわからないからできるだけ設定変更はしないようにしよう」という力学が働き、老朽化が始まってしまいます。
そうさせないためには、業務部門(我々のような外注も含め)がシステムを理解し、システムの最適化をリードしつづける必要があります。
ここまでご精読いただきありがとうございました。ご興味をお持ちいただけましたら、是非お問い合わせください。
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この記事の執筆者
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青柳 智子経営管理事業部 兼 BPO事業部
バイスマネージングディレクター -
石井 未宇BPO事業部
シニアコンサルタント
職種別ソリューション