ベンダロックイン
1.ベンダロックインとは
ベンダロックインとは、自社の多くのシステムが特定のベンダの独自仕様になっているため、改修やメンテナンスにおいて他社に依頼すると莫大なコストがかかったり、そもそも他社が引き受けてくれなかったり、他社が参入できなくなっている状態のことです。歴史を遡れば、メインフレームを導入する企業が全ての業務システムについて開発から運用までを特定のベンダに委託していたために、メインフレームからオープン化(システムの分散化)するのに10数年を要した事例も多く発生しました。
このように新しいテクノロジーや、新しいパッケージ、新進のソリューションなどをニーズにあわせて選びたいが、ベンダの技術やソリューションに縛られてそれが実現できない状態をいいます。
2.ベンダロックインの功罪
ベンダロックインが起きている状態では、例えば競争原理が働かないことによる費用の高騰、馴れ合いによるサービスの品質低下、ベンダの得意不得意によるソリューションの選択肢の狭まりなどのデメリットが考えられます。ベンダに対する過度な依存によって、悪循環に陥ってしまうことは何としても避ける必要があります。
一方で、特定のベンダと強固な関係を構築することで、プロジェクトのルール化や役割分担など調整が経験値として企業とベンダ双方に蓄積され、プロジェクトの立ち上げや期間中の調整に伴う効率化が図れるなど良い点もあります。例えば、短期間で新規プロジェクトを立ちあげ、プロジェクト期間中の相互の調整などの時間ロスを低減し、生産性向上が期待できることも事実です。また、中長期のIT戦略やIT投資計画などを共有している場合、それに沿った持続的な提案、協議によるベクトル合わせなども期待でき、多くのメリットが享受できます。
3.ベンダとの良好な関係構築の在り方
ベンダとの息の長い双方にメリットがある良好な関係を構築するためには、前述のベンダロックインに陥らないための、ユーザ企業側におけるベンダへの委託範囲、役割分担、更には技術要件などのガイドラインを定め、IT部門による統制を行うプロセスを構築することが必要となります。そして何より大切なのは、相互に信頼関係を構築しそれを維持するための緊張感ある関係です。
4.IT部門の役割
では、IT部門による統制を行うプロセス構築について、具体的に見ていきましょう
- 特定ベンダの固有技術上に膨大な資産を構築(OS、DBMS、MW等)
- システムの運用保守に必要なドキュメント不足や最新化不備(ブラックボックス化)
- 過度なベンダ依存による内部スキル向上機会の損失やノウハウ空洞化
- 保守をベンダに丸投げし、継ぎ接ぎ対応に陥る(アプリケーションのスパゲッティ化)
このような状態に陥らないためのIT部門主導によるガイドライン作り、そしてベンダとの関係やプロジェクトの内容がそのガイドラインに沿っているかを絶えず点検する必要があります。もしガイドラインから外れている場合には、関係を再構築するための対応を取ることも求められます。
5.ベンダロックイン回避への対処法
ベンダロックインに陥らないためには、CIOやCDOの問題意識、人材、外部活用のそれぞれにおいて取り組みが必要です。
CIOやCDOにおいては、ITの構築だけでなくITの寿命や、やめるコスト(Exitコスト)もITガバナンスとして考慮することです。例えば、特定プラットフォーム上にシステムを構築し運用保守すれば必然的に資産も増加し、プラットフォーム廃止のExitコストも大きくなることを考えておかなければなりません。
人材面では、過度なベンダ依存を抑止するために内部人材の育成、OJTなどベンダからのスキルトランスファーについても進めておく必要があります。最近はシステムの運用保守を外部のベンダに委託するケースも増えてきていますが、運用保守を委託して内部人材の仕事を戦略や企画に充てることは非常に重要ですが、運用保守の内容を正しく理解しベンダをコントロールできることはその大前提となります。
また、外部の専門家によるアドバイス、PMOやオーナーズコンサルなどを活用したプロジェクト運営により、ベンダとの適切な関係を維持する緊張化を導入し、もたれあいにならないプロジェクト運営を行うことも有効です。更に、オーナーズコンサルが第三者として定期的にIT部門とベンダとの関係や稼働資産の状態を点検すること(監査)も有益な点検プロセスになります。
詳細については、以下のページでご紹介しております。
https://www.layers.co.jp/solution/vendorlockin/