ポスト2027年の基幹システム

自社のITに関する取り組み、本当に"自社"にあっていますか?

「社会や経済の変化に対応するためにシステムを構えておきたい」という思いは強くあるものの、自社ノウハウ不足によるベンダー依存(=ベンダーロックイン)、開発リソース/リテラシー不足等により思い切った開発に踏み込めない。そんなもんもんとした経営層の方、システム部門の方も多いのではないでしょうか?
本記事では、「IT組織・人財」の観点からそういった課題を深掘り、現状打破の糸口を考えてみたいと思います。

こんな状況に陥ってませんか?
~IT組織・人財・プロジェクトの現状~

もはや会社経営になくてはならないシステムですが、「社会的なDXの促進」「基幹システムの保守切れによる更改」等、今後の会社の事業発展/強固な経営管理の構築には自社システムの更改/新規開発を成功させることが非常に重要だと考えられます。新技術や新しい開発方法論も出ている中、それを盛り込んでシステム刷新しよう!と意気込んだものの、蓋をあけてみれば結局現行機能のストレートコンバージョンのみ、にも関わらずコスト/期間がふくらみ、社内の中では“炎上プロジェクト”と言われる顛末。「何をやらなければいけないかは分かっているのに、なぜだかうまくいかない」そんな風に思っているシステム開発プロジェクトの担当者の方々、IT担当役員の方々も多いのではないでしょうか?そこには3つの大きな課題があり、この課題で悩んでいる企業も多いのではと考えています。

①自社システムにも関わらず細かい仕様が分からない(ノウハウがない)
②部門横断でビジネス/業務が分からない
③システム部門が事務処理部門となってしまっている

【図1】システム開発プロジェクトの現状と課題

3つの課題認識

もう少し課題を深掘り、何が原因なのかを見てみましょう。

【自社システムにも関わらず細かい仕様が分からない(ノウハウがない)】

現在のシステム開発は(特に大手企業となれば)ベンダーを抱えて開発することが主流です。開発にかかるドキュメントはベンダーが作成したものが多く、更にパッケージを導入したとしてもアドオン開発でよりシステムは複雑となってしまうことも多々あります。結果として、自社内の人間では細部まで理解/把握することができず、次の開発も同じベンダーに頼らざるを得ない状況が生まれてしまいます。(=ベンダーロックイン)

【部門横断でビジネス/業務が分かる人財がいない】

新しいシステム開発を行う際、この先の自社の事業展開の見通し、それに合わせた業務の変化は必ず必要となってきます。業務/ビジネス×システムを会社全体で見て、判断/推進できる人財が理想的と言えるでしょう。しかしながら、システム知識だけでなく、マネジメントスキルも必要となり社内育成では時間がかかるかつ外部人財も枯渇しているため、システム構築を内製化する体制を構築できないという状況が常態化してしまいます。

【システム部門が事務処理部門となってしまっている】

本来システム部門は、システム開発プロジェクトの核となり、ベンダーの手綱を握り、プロジェクトを成功に導くため全体マネジメントを行う部門だと考えられます。しかしながら実態は、ベンダーへの発注処理や各部門から出てくる要望の取りまとめ役となることが中心で、プロジェクト全体の推進役にはなりきれていないのではないでしょうか。

【図2】システム開発にかかる理想と現実

ITに関する組織・人財の見直しポイント

では、どうやってこの状況から脱却していけるのでしょうか。糸口は、「自社の環境/文化を見つめ直し、自社にあったやり方を見出すこと」にあると考えています。システム開発を全社的な重要取り組み事項と位置づけるためにも、以下に見直すべきポイントについて述べていきます。

A.システムプロジェクトに対する全社的な意識・社内の位置づけ

経営戦略の中で、「IT戦略」や「システム開発」はどれだけ重要な取り組みと位置づけられているかがプロジェクト推進の鍵となります。小さなことですがシステム開発に関わる社員が自分事と捉えられるか、その意識を醸成するためにどれだけ知恵を絞れるかが非常に重要なポイントになってきます。

B.組織・プロジェクト体制

例えば、DXを例にとると、「事業や業務をデジタルデータで横断改革する」ことが大きな目的と考えられます。従来の体制(=各事業/部署の縦割り)では上記目的を実現するのに限界があります。関連する部署から専任の担当者を付けるに足らず、ビジネス/IT/業務を横断的に見て、判断/議論できる(議論を促す)組織や体制をプロジェクトの基盤として構築することが重要となります。

C.人財

この先システム開発やDX推進を成功させるキーマンとなるのは「経営的視点(経営戦略)」から「必要なIT(例えばIT戦略)」を導き出し、「現場の業務を構築」できる人材だと考えられます。加えて、ベンダーロックインからの脱却を目的に自社内ノウハウを蓄積するためには(=内製化)、エンジニアも相当数が必要になります。社内教育だけではなく、外部の人財登用も考慮に入れて自社のITを実現するための人財構成を考えるべきでしょう。

【図3】見直すべき重要ポイント

企業の取り組み例(一例のご紹介)

最後に、システム開発やDXプロジェクトを全社的な重要事項として成功のための“知恵出し”の結果として企業が行った取り組み例をご紹介します。ある大手メーカーでは、「データを中心としたビジネスモデルへの変革」をデジタル戦略の目玉として掲げていました。上記戦略を実行するため、以下のような取り組みを行っています。

【事業横断の組織設立による文化醸成】

  • 「データ活用を企業経営」を実現するために、全社(トップ~現場まで)にデータ活用の文化を醸成することをゴールとして設定。
  • 上記実現のため、トップ(経営層)/ミドル(事業部長)/ボトム(専門家)の3層でそれぞれに横串組織を構築。
  • 全て同時進行で進めることにより、全社(トップ~ボトム)まで「データ活用の文化」を漏れなく醸成。また、社長自らが社内外に向けて発信を行うことにより“失敗を恐れない”雰囲気作りを実施。

 

上記に記載したのは、あくまで一例です。取り組み例の中で重要なキーワードは、やはり「トップダウン」「組織横断の取り組み」「同時並走により全社漏れなく意識醸成」だと考えられます。自社の文化/環境を分析/理解した後、自社に適した有効打を絞りだす必要があります。まずは自社に最適なやり方はどういったものなのか、今一度見直すことがこの先のITを考える第一歩になるのではないでしょうか。

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この記事の執筆者

  • 山中 和樹
    山中 和樹
    DX事業部
    マネージャー

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