生産部品表(M-BOM)の再構築

レイヤーズ・コンサルティングの生産部品表(M-BOM)の再構築における支援事例をご紹介します。

◆ この事例のポイント

  • クライアント:大手自動車メーカー
  • 課題:属人運用とグローバル対応不全が経営課題に
  • 対応:基盤刷新と部品表の役割再定義で、実行系から管理系へ転換
  • 成果:属人運用を統一基盤へ刷新し、グローバル展開への土台を確立

国内生産を前提に構築されてきた生産部品表(Manufacturing BOM)は、事業拡大とグローバル化の進展により、大きな転換期を迎えていました。海外生産の拡大や基幹部品の輸出業務の増加に伴い、製品供給の形態は大きく変化。従来の国内中心モデルでは想定されていなかった管理要件や業務フローが増加し、BOMに求められる役割は高度化・複雑化していきました。

 

一方で、その基盤となるシステムは30年以上前に構築されたものであり、部分的な改修を重ねながら運用が継続されてきました。その結果、システム構造は極めて複雑化し、全体像を把握できる人材は限られ、ブラックボックス化が進行。システムで吸収しきれない差異や例外は人手で補完され、属人化と業務負荷の増大が常態化していました。

 

本プロジェクトの目的は、単なるシステム刷新にとどまらず、時代に即した業務プロセスとシステムの再設計を通じて、人依存の運用から脱却し、今後の海外展開の拡大や製品進化にも柔軟に対応できる将来志向のBOM基盤を構築することにありました。過去の延長線上にある改修ではなく、「これからのものづくりを支えるBOMとは何か」という原点に立ち返り、抜本的な再構築に挑んだ取り組みになります。

クライアントが抱えていた課題

クライアントが利用していた生産部品表システムは、30年以上前の生産規模・事業構造を前提に構築されたものでした。当時は生産品種も限定的で、生産拠点も国内1工場のみ。対面での密なコミュニケーションを前提とした運用が可能な環境であり、システムもその前提のもとに設計されていました。

 

しかしその後、品種の増加に伴い製品構成は飛躍的に複雑化。さらに海外生産の拡大とグローバル供給体制への移行により、部品表に求められる情報量・管理精度・連携範囲は質・量ともに大きく変化しました。

 

一方で、基盤システムは部分的な改修を重ねながら延命されてきたものの、構造そのものは旧来の設計思想のまま。増え続ける例外処理や個別対応をシステムで吸収しきれず、部品表の精度維持は実質的に人手に依存する状態となっていました。臨時対応や運用部門への追加作業依頼は頻発し、それが常態化。結果として、業務負荷は慢性的に高止まりし、担当者の経験や暗黙知に支えられた属人的な運用構造が固定化していました。

 

さらに、開発当時は単一工場での生産を前提としていたため、部品手配に必要な最低限の情報しか保持しておらず、海外工場に十分な製造情報を連携できないという構造的制約も抱えていました。その結果、拠点ごとの追加確認やBOMの再作成が必要となり、グローバル生産における効率性・正確性の確保が大きな経営課題となっていました。

レイヤーズのアプローチ

本プロジェクトは、当社参画前にすでに発足しており、開発も一定程度進んでいました。しかし、度重なる遅延によりマスタースケジュールの再策定が不可避な状況に陥っていました。

 

当社がまず着手したのは、プロジェクト全体の徹底的な棚卸しです。表面的な進捗確認にとどまらず、遅延要因を構造的に分析。要件未確定の放置、意思決定プロセスの停滞、検証工程の想定不足など、複合的に絡み合った課題を可視化しました。その上で、是正施策を実行しながら現実的なマスタースケジュールへと再構築し、プロジェクトの立て直しを図りました。

 

次に取り組んだのは、「実力に即した計画」への転換です。当初計画は、ユーザー側に十分な検討リソースがあることを前提とした体制・プロセスとなっていました。しかし実態としては、要件や仕様を具体化・決定できるメンバーは限られ、一部担当者への負荷集中がボトルネックとなっていました。

 

そこで各ワーキンググループに当社の推進担当を配置し、要件定義・仕様詳細化の議論に深く入り込みました。論点整理、資料化、合意形成までを一体で支援し、単なるファシリテーションにとどまらず、「ともに作り上げる」形で具体化を推進。検討の停滞を解消し、意思決定スピードを高めました。

 

さらに、要件・仕様の決定プロセスそのものも見直しました。ユーザー体制を過大評価した承認フローや検討ステップを現実に即した形へ再設計し、意思決定可能な人数・スピードに合わせた運営へ転換。加えて、一括検証型から段階的検証プロセスへ切り替えることで、早期に不具合や仕様齟齬を顕在化させる仕組みを導入しました。

 

システム検証フェーズにおいても、当社はユーザーとともに実行主体として参画。机上確認にとどまらず、実データを用いた徹底的な検証を行い、本番稼働に耐えうる完成度まで品質を引き上げました。

 

また、本番移行後の影響管理にも注力しました。部品表刷新は多数の関連部署や周辺システムに波及するため、移行後の業務影響を網羅的に洗い出し、実運用レベルでの確認を徹底。その過程で一部部署に想定外の影響が発生しましたが、即座に対策チームを組成し、迅速な改修対応を実施しました。結果として、全社的な混乱を招くことなく安定稼働へと移行することができました。

実施内容

本プロジェクトでは、単なる機能追加や部分改修ではなく、基盤構造そのものの見直しから着手しました。

 

まず、1970年代から続くホスト中心の従来環境を刷新し、将来的な拡張性・柔軟性を備えたオープンシステム基盤へ移行。ブラックボックス化していたシステム構造を徹底的に可視化し、機能の分解・モジュール化・標準化を推進することで、今後の機能追加や海外展開にも耐えうるアーキテクチャへと再設計しました。これにより、改修のたびに複雑性が増幅する構造から脱却し、持続的に進化できる土台を構築しました。

 

さらに本質的な改革として、部品表の役割そのものを再定義しました。従来の部品表は、「どの部品を、どのラインで、いつから使用するか」が決定された後に、部品手配や調達を実行するための“実行系システム”でした。すなわち、確定情報を処理することが主目的であり、その前段階にある検討・調整・技術判断は人の経験や属人的な運用に委ねられていました。

 

これに対し、新たに構築した工場部品表は、「どのラインで、いつから使用するかを決めるために必要な情報」を管理する“管理系システム”へと進化させました。量産確定前や設計変更適用前の段階から、変化点、影響範囲、関連部位、適用条件といった技術情報を体系的に作成・共有・検索できる仕組みを構築。従来は口頭や個人の判断に依存していた情報をデータとして構造化・蓄積し、意思決定を支える基盤へと転換しました。

 

その結果、人の経験や暗黙知に依存していた確認プロセスは標準化され、グローバル拠点間でも同一情報に基づく判断が可能となりました。部品手配のためのシステムから、ものづくり全体を支える情報基盤へ――生産部品表の位置づけを根本から変革する取り組みとなりました。

成果と顧客満足

本プロジェクトにより、従来は人の経験や属人的な運用に依存していた生産部品表の管理は、グローバル生産を前提とした統一的な仕組みへと生まれ変わりました。業務の見える化と標準化が進み、設計変更や量産立ち上げにおける混乱や手戻りは大幅に低減。顧客からは「将来の事業拡大を見据えた基盤が整った」「安心して次の改革に踏み出せる」と高い評価をいただいています。

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