グローバル生産戦略の再構築
レイヤーズ・コンサルティングのグローバル生産戦略の再構築における支援事例をご紹介します。
◆ この事例のポイント
- クライアント:医療機器メーカー
- 課題:需過剰生産能力と人材・競争環境の複合課題
- 対応:暗黙知の構造化から経営承認まで、意思決定の再構築
- 成果:属人的判断を再現可能な型へ昇華
市場環境の変化が加速する中、このクライアント企業では、「どこで・何を・どれだけ生産するか」という生産戦略に関する明確な判断基準が定義されておらず、重要な意思決定に時間を要するという課題を抱えていました。
これまで生産拠点や生産配分に関する意思決定は、その時々のリーダーの経験や判断に委ねられており、意思決定の背景となるロジックや評価基準は組織として体系化・共有されていませんでした。その結果、生産戦略が明文化された形で整理されておらず、担当者や経営層が変わるたびに議論が振り出しに戻る状況が生じていました。
加えて、生産戦略をロジカルに検討してきた蓄積が十分でなかったことから、戦略策定に必要なデータや評価軸も整備されておらず、迅速かつ客観的な意思決定を行うための基盤が不足していました。
こうした状況を踏まえ、我々はまず現行の生産戦略(これまでの意思決定の結果)を精査し、その前提条件や意思決定構造を可視化しました。その上で、市場環境の分析、各工場のQCD観点での実力評価、競合比較による競争力分析を実施し、構造的な課題と解決テーマを体系的に抽出しました。
さらに、具体的なシミュレーションを通じて短期・中期の打ち手を立案し、実行計画の策定から実行フェーズまで一貫して伴走支援を行いました。
クライアントが抱えていた課題
クライアント企業では、生産戦略が明確なロジックとして整理されていなかったことに加え、中長期の需要見通しの誤りによりグローバルで生産能力を過剰に拡大してしまったという構造的な課題を抱えていました。将来的な需要拡大を前提に各国で工場新設や能力増強を進めたものの、実際の需要は想定に届かず、一部拠点では稼働率が大きく低下。固定費を十分に吸収できず、実質的に赤字構造へと陥っていました。その結果、グローバル全体での生産能力配置のバランスが崩れ、地域間で過剰と不足が混在する非効率な体制となっていました。
加えて、需要シナリオそのものも揺らいでいました。これまで成長ドライバーとして依存してきた中国市場の売上が伸び悩み、将来の柱と期待していたインド市場の拡大も想定を下回る水準にとどまりました。前提としていた中長期需要見通しが崩れる中で、能力拡張の意思決定は結果として過大投資となり、全体最適ではなく部分最適の積み上げになっていました。
さらに、生産能力だけでなく「人材スキル」の偏在も深刻な課題でした。日本の設計技術力・生産技術力を基盤に海外展開を進めてきたものの、主力生産拠点の海外移行が進む中で、日本側の技術蓄積は相対的に弱まりました。一方で、高度な自動化技術などのコアスキルは特定の海外拠点に集中し、スキルの地理的偏在が進行。その結果、「どこで・何を・どれだけ作るか」を検討する際にも人材制約を織り込まざるを得ず、日本で増産したくても担い手が不足する、先端自動化を進めたくても該当スキルが海外にしかない、といった制約が戦略の自由度を狭めていました。
加えて、競争環境の変化も戦略前提を大きく揺るがしていました。これまで脅威と見なしていなかった中国メーカーが、コスト競争力に加え技術面でも急速に力をつけ、従来型の商品企画や既存技術の延長線上では優位性を維持できない状況が顕在化しました。さらに、中国市場の低迷を背景に競合企業が欧米市場へ進出を強めたことで、各地域の競争は一段と激化。市場ごとの競争構造が変化する中、生産戦略もグローバル競争を前提に再構築する必要に迫られていました。
このように、需要・能力・人材・競争環境という複数の要素が同時に変化する中で、従来の属人的かつ場当たり的な意思決定では対応が困難となっていました。グローバル全体最適の視点から、生産戦略を抜本的に再設計することが不可欠な状況に追い込まれていました。
レイヤーズのアプローチ
需要見通しの揺らぎ、生産能力の過不足、人材スキルの偏在、そして競争環境の激化という複合的な課題に対し、我々が取り組んだのは単なる分析支援ではありませんでした。クライアントと一体となり、「意思決定構造そのものを再構築する」という挑戦に向き合いました。
まず着手したのは、これまで暗黙知の中で行われてきた生産拠点配置や生産配分の意思決定ロジックを、クライアントメンバーと共に棚卸しすることでした。過去の判断を一つひとつ振り返り、「なぜその決定をしたのか」「本当にその前提は妥当だったのか」を率直に議論。属人化していた判断基準を言語化し、組織として再現可能なロジックへと構造化していきました。
その上で、市場環境分析や需要シナリオの再整理、各工場のQCD観点での実力評価、競合比較による競争力分析を、各拠点のキーパーソンを巻き込みながら実施。単なる外部評価ではなく、クライアント自身が各拠点の強み・弱みを直視し、将来の役割を考えるプロセスを重視しました。最終的には、グローバル全体最適の観点から複数の戦略シナリオを共創しました。
本プロジェクトでは、三現主義(現場・現実・現物)を徹底しました。各拠点の現場に足を運び、設備稼働や作業実態、人材スキルの実情をクライアントメンバーと共に確認。時には厳しい事実にも向き合いながら、日々議論を重ね、方向性を定めていきました。そのプロセス自体が、組織の変化を生み出していきました。
加えて、新たな生産戦略を実行に移すためには、経営陣の理解と承認が不可欠でした。専門的な議論をそのまま提示するのではなく、クライアントメンバーと共に論点を整理し、「ものづくり出身」ではない経営者に対しても伝わる提案内容にしていきました。「なぜ今この再配置が必要なのか」「なぜこの投資が将来の競争力に直結するのか」をストーリーとして編み直し、現場と経営をつなぐ橋渡しを行いました。
成果と顧客満足
本プロジェクトを通じて、生産戦略の立案ロジックと意思決定構造が明確に定義され、これまで属人的であった判断基準は、組織として共有可能な「再現性のある型」へと昇華しました。その結果、担当者や経営メンバーが変わっても議論が振り出しに戻ることはなくなり、共通言語のもとで建設的な意思決定が可能となりました。
また、生産移管、仕向け地変更、設備投資といった重要テーマに対しても、複数シナリオを前提とした合理的な比較検討が可能となり、意思決定スピードは飛躍的に向上。従来は感覚や経験に依存していた議論が、データと構造に基づく経営判断へと進化しました。
さらに、新生産戦略は経営陣の納得と承認を得て正式に採択され、現場レベルにも浸透。単なる戦略文書の策定に留まらず、グローバル全体最適を志向する経営基盤の再構築につながりました。
三現主義を徹底し、現場と経営の双方に向き合いながら泥臭く伴走した結果、「戦略が腹落ちし、実行に移せる状態を作れたこと」が最大の成果であり、クライアントからも高い評価をいただいています。


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