2026/08/05

【第5回】日本の製造業のポテンシャルを解放せよ
~設計・原価・プラインシングの改革~

#日刊工業新聞

第4回で述べた原価企画の実行ポイント3つ「①コストデータの鮮度・精度の向上、②コストゲート管理の徹底、③原価企画の専任組織とそれを支えるシステムの構築」のうち、今回は「コストデータの鮮度・精度」について詳述する。

「BOM」と「コストテーブル」が重要

コストデータの鮮度・精度を決めるのは、「BOM(部品構成+工程)」と「コストテーブル(購入部品単価、内製工程レート・工数)」の2つに尽きる。
企画構想→設計→生準→量産と進むにつれ、BOMは”生モノ”のようにどんどん変化・詳細化する(構想BOM→E-BOM(ver1、…、確定)→M-BOM)。この鮮度が落ちた瞬間、企画原価も賞味期限切れになる。フェーズ毎の最新BOMと部品・工程のコストテーブルを反映できるかが勝負どころだ。情報が古ければ、それは「今」の実力を表す原価ではなく「過去」の原価でしかない。

フロントローディングの肝は「設計初期」にあり

大幅なコスト低減は商品仕様の改善で決まり、仕様の大半は設計初期段階で固まる。
しかし設計初期はBOMもコストテーブルも未熟で、コストを見積もるのは難しい。そこで有効なのが、トヨタも採用する要求仕様(≒顧客価値)とコストを結びつけたコストテーブルである。

コストと相関の高い”コストドライバー”となる要求仕様を見抜き、それを軸にコストを理論値として算定する「仕様パラメトリックコストテーブル」を整備する。モーターであれば出力(W)やトルク(Nm)、回転数などが候補となる。仕様とコストは必ずしも一直線とは限らないが、過去実績から関係式を丹念に導き出す必要がある。
近年目覚ましく発展するAI技術を活用すれば、コストドライバーの特定は従来より格段に容易になると考える。これにより設計初期からコストをにらみながら仕様を取捨選択し(=スペックコントロール)、勝てるコストを作り込める。まさにフロントローディングによるコスト作り込みである。

【図1】仕様パラメトリックコストテーブル

これを機能させる条件は3つ。
①関係式を導くための過去実績データの蓄積、②感応度分析との併用—仕様の揺れがコストにどう跳ね返るかの可視化が設計初期のスペックコントロールの生命線、③詳細設計以降や量産後のBOM・実績データのフィードバックによる更なる精度向上。

まずは原価インパクトが大きい部品、変動が激しい部品から狙い撃ちで整備し、段階的に広げるのが賢明だが、AI技術を活用すれば一気に整備することも十分可能だ。そのためには要求仕様とBOM・コストの実績データを蓄積・管理することが極めて重要となる。

次回は残りの実行ポイントについて述べたい。

この記事の執筆者

円子 貴義
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
SCM事業部
ディレクター

光学系精密機器メーカーや農林業機械メーカー、住宅設備メーカー、造船業、自動車部品メーカー等、グローバルコストマネジメントのコンサルティングを数多く行うとともに、太陽光発電パネル製造メーカーに対する需給調整・PSI業務構築、食品メーカーに対する開発・品質・製造・営業などの全社業務視える化など、SCM領域のコンサルティングを多数手がける。
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