2026/08/05

【第7回】日本の製造業のポテンシャルを解放せよ
~設計・原価・プラインシングの改革~

#日刊工業新聞

今回は第4回で述べた原価企画の実行ポイント3つの最後「③原価専任組織とそれを支えるシステム」について詳述する。

「原価専任組織」という司令塔

第6回で述べたゲート管理(デザインレビュー)や追加原低の再割付けも、実行する組織なくしては成立しない。一般的に設計・調達・生技・営業は利害が衝突しやすく、これら部門の横串を通して原価低減を実現するには単なる”仲裁役”では務まらない。求められるのは強力な権限と責任を持つ原価専任組織であり、立上げ当初は社長直轄が望ましい。単なる集計屋ではなく原価低減の“牽引役”となり、全体最適の視点で原低の実施判断を下す。自らも原低アイデアを発信しながら、企画から量産までライフサイクル全体で原価低減を実現する——いわば”利益の番人”である。
第5回で述べたゲート管理の徹底は、「目標未達では絶対にゲートを通さない!」という経営の強い“意志”に加えて、強力な権限と責任を持つ原価専任組織による“実行力”が必須である。それを担うのが原価専任組織である。

トヨタでは「製品の社長」と呼ばれるチーフエンジニアと原価企画部門が両輪となり、原価企画を徹底している。

第5回の記事はこちら
第6回の記事はこちら

【図1】原価専任組織の必要性

デジタル・AIで”儲かる原価”を描き出し“競争的プライシング”を実現

原価企画を阻む元凶のもう1つが、一部の熟練者によるExcelバケツリレーでの原価積算&シミュレーションだ。これでは開発の進捗(企画→設計→試作→生産準備)に合わせたBOM・仕様・コストの変遷を、タイムリーに反映しきれない。だが今やデジタル・AI技術がこの壁を打破できると考える。

ポイントは5つ。①フェーズ毎のBOM・仕様変遷の反映(PLMシステムとの連携)、②最新実力コストの反映(実際原価システムとの連携)、③実績データ×AIによる仕様パラメトリックコストテーブルの整備(第5回参照)、④為替・資材価格などの変動予測の反映、⑤これらを束ねたタイムリーな台あたり企画原価の積算&シミュレーション、である。
“職人芸”による原価積算&シミュレーションに頼った経営には限界が来ている。デジタル・AI技術を武器に設計初期から量産開始までにスペックとコストを徹底的にコントロールし、グローバル市場で勝てる競争的プライシングを実現する好機が到来した。

次回は「プライシング」をテーマに記載したい。

この記事の執筆者

円子 貴義
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
SCM事業部
ディレクター

光学系精密機器メーカーや農林業機械メーカー、住宅設備メーカー、造船業、自動車部品メーカー等、グローバルコストマネジメントのコンサルティングを数多く行うとともに、太陽光発電パネル製造メーカーに対する需給調整・PSI業務構築、食品メーカーに対する開発・品質・製造・営業などの全社業務視える化など、SCM領域のコンサルティングを多数手がける。
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
SCM事業部
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