2026/09/07
【第10回】一律価格発想からの脱却
~顧客が感じる価値に合う価格差~
一物一価を捨てよ
一律価格はデフレ時代の発想
デフレ時代には、顧客の価格抵抗を抑え、営業現場を管理しやすくするため、価格を統一する方向に力が働きやすかった。同じ製品には同じ価格を付ける。一律の価格表を作り、値上げする場合も同じ改定率を適用する。一見すると公平で分かりやすい。しかし、顧客が感じる価値も、価格を受け入れられる余力も同じではない。本体製品であれば、24時間稼働の工場と低稼働の工場では投資効果が違う。通常納期と短納期、標準仕様と特注仕様、単品購入と複数台導入でも価値とコストは変わる。国や地域によっても、競争環境、購買力、物流費、関税、税制は異なる。価格統一は、管理を簡単にする一方で、価格戦略の自由度を奪う。
一物一価が生む二つの損失
一物一価には二つの機会損失がある。一つは、本当はもっと高く買ってもよい顧客から、価値に見合う対価を得られないこと。もう一つは、もう少し安い商品や仕様があれば購入する顧客との取引を失うことである。本体製品であれば、機能を絞った廉価版、標準版、高機能版を設ける。導入価格を抑え、利用量や保守契約から収益を得る方法もある。部品では、代替困難な専用品、高頻度消耗品、高額基幹部品で価格感度が異なる。新品、再生品、セカンドブランドを用意し、価格帯を広げることで、これまで取り逃していた需要を獲得できる。
価格差を戦略として設計する
価格を顧客ごとに変えることは、恣意的な値付けを意味しない。顧客の価値認識、支払余力、用途、数量、納期、地域、仕様、サービス水準などを基に、価格差を合理的に設計することである。単一価格だけでなく、顧客グループ別価格、機能別メニュー、地域別価格、バンドリング、サブスクリプション、成果報酬など、価格の取り方は多様である。ただし、営業担当者の裁量だけに任せれば、個別最適ではなく場当たり的な値引きになる。価格差の基準と承認ルールを設け、値引きには数量拡大、長期契約、仕様標準化などの見返りを求める必要がある。インフレ時代に必要なのは、一律に高くすることではない。価値と価格感度に応じて、価格を精緻に変えることである。
次回は、価値に見合う価格に引き上げていくための着眼点や進め方について論じていく。
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