死蔵しているデータを活用し、BtoB営業の働き方を変革する

企業が蓄積するデータは活用されているのか

2000年代にビッグデータという言葉が登場し、2010年頃を境にITのトレンドを表すキーワードとしてもてはやされてきました。

その後、ビッグデータはAI(人工知能)やIoT(Internet of Thingsの略、モノのインターネット)等の潮流の中で影を潜めつつあるものの、企業の持つデータを経営に活用する観点で重要なテーマであることに変わりありません。

しかし、企業が保有するデータは、経営に活用されているのでしょうか。

【図1】は、ここ5年間における「分析に活用しているデータ」の動向を表しています。5年前に比べて、POSデータやeコマースにおける販売記録データの活用は飛躍的に伸びています。

アマゾンや楽天に代表されるeコマース企業では、事業を横断して顧客データを統合し、顧客接点で生じる顧客データを蓄積・分析することで、潜在的な顧客のニーズを探り出し、マーケティングやセールスプロモーションに活用しています。

【図1】分析に活用しているデータ

また、データ活用の仕方については、データの集計や相関分析等での活用が中心となっており、AI等を活用しての高度な予測や最適化等に取り組んでいる企業は多くありません。【図2】

【図2】データの分析手法

先に紹介したアマゾンや楽天をはじめ、BtoCビジネスを展開する多くの企業では、以前よりデータベースマーケティングとして、データを蓄積し、高度な分析を行っている企業が多くあります。

それに対して、法人企業に対するBtoBビジネスでは、マーケティングやセールスプロモーションにおいて高度にデータを活用することが中々根付かない傾向があります。

BtoB営業の場合にも、セールスフォース・ドットコムに代表されるMA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援)、CRM(顧客関係管理)といったツールを導入し、営業活動の可視化や最適化等、BtoB営業への科学的な営業手法適用の機運は高まりつつあります。

しかし、実際のBtoB営業の現場では、顧客企業と担当する営業部門や営業担当者との関係性に依存する部分が大きいことから、データを活用した科学的な営業への抵抗感は強く、高額なツールを導入しても、データはタイムリーに投入されず、十分に活用されないケースは少なくありません。

そのため、経営から見た場合、BtoB営業の現場はブラックボックス化し、大きな改革が進んでいない領域だと言えます。

死蔵するデータを活用し、法人顧客のニーズをあぶり出す

効率的に法人顧客企業をカバーする

一方で、BtoB営業の領域においても、企業内に蓄積される様々なデータを活用することで顧客行動を分析し、顧客の購買ニーズや購買意欲等といったカスタマーインサイトの獲得に成功しているBtoB営業部門も少なくありません。

【図3】顧客企業の静態情報・動態情報からカスタマーインサイトを獲得する仕組み

顧客企業の基本情報といった静態情報と、顧客企業と自社の取引実績や商談の進捗状況、営業実績等を統合し、過去の顧客企業の購買動向や同業他社等での購買動向の変化を捕捉し、顧客企業が求める購買ニーズや購買意欲を予測することが可能になります。

特定の商材やソリューション別に、購買意欲が高い順に顧客企業や部門をリストアップして出力したり、担当する顧客企業や部門において、どのような商材やソリューションに対するニーズがあるのか、購買意欲が高い順にリストアップをしたりすることが可能になります。

これにより、購買ニーズがある商材に関して、購買意欲の高い顧客に対して優先的にアプローチすることで、効率的・効果的に顧客企業をカバーすることが可能になります。【図4】

【図4】 購買行動予測の仕組みによる効率的商談の発掘

リモートワークでもBtoB営業のスキルの底上げを支える

また、購買ニーズが明らかになることで提案すべき商材やソリューションが明確になるため、その提案に必要な「過去のベストプラクティスの提案を、蓄積した知的資産から抽出して提供する」といったことも可能となります。

BtoB営業では、営業手法を標準化することが難しく、営業活動が属人化する傾向があります。コロナ禍においてリモートワークが続く中、営業活動の可視化が更に難しくなり、営業活動が属人化する傾向は強くなっています。そこで、このような仕組みを活用することにより、バラつきが出てしまっている営業活動のスキルの底上げをすることで、組織全体の営業の質を向上させ、営業のパフォーマンスを向上させることが可能となります。【図5】

【図5】 購買行動予測の仕組みによる営業のスキルの底上げ

データを活用し、BtoB営業の働き方を変革する

では、顧客企業の購買行動予測の仕組みを活用することで、どれだけの効果が得られるのでしょうか。

購買意欲の高い顧客企業をリストアップし、購買ニーズが高い商材を重点営業先としてアプローチした際の効果を示したのが【図6】になります。

【図6】購買行動予測の仕組みの活用による効果

縦軸に成約できた商談数を、横軸に対象市場の企業数を設定しております。

購買行動予測を活用せずに成り行きで営業活動したケースと、購買行動予測を活用し、営業活動をしたケースでの比較になります。

購買行動予測を活用し、購買意欲の高い顧客企業に対して重点商材で営業活動した際は、約3割の顧客企業にアプローチした段階で、約7割の成約を得られることができました。

これにより、まだアプローチをしていない残りの約7割の顧客企業に対してアプローチすることに変え、より購買意欲が高い他の市場の顧客企業にアプローチすることで、貴重な営業時間を有効に活用することが可能となります。
ただし、仕組みを構築し、闇雲に営業すれば効果が上がるかというと、そうではありません。
以下のようなBtoB営業としての働き方の基本を徹底することが必要です。

  1. 日々の営業の活動計画と実績を適時にSFA等に登録する。
  2. 日々発生する案件や案件の進捗を適時に正確にSFA等に登録する。
  3. 営業マネージャーは、上記の情報に基づき、営業担当のコーチングやマネジメントを短サイクルで実施する。

成功している企業では、初めから大規模なシステムを構築して、取り組みを行っているわけではありません。PoC(Proof of Conceptの略。概念実証)を通して、どのような静態・動態情報が自社の購買行動予測に活用できるのか、どのような予測アルゴリズムが適切なのか、現場の営業にとって、どのような説明変数が理解しやすいのか等を検討し、効果を検証しながら、適用する営業部門や商材の範囲を広げています。

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