データで営業の働き方を変えることはできるのか

2010年頃よりビッグデータという言葉が使われ始め、データドリブン経営やデータサイエンティスト等関連した言葉がメディアを賑わせましたが、近年その座をAIに奪われ、あまりそれらの言葉を目にする機会は無くなりました。
それは一過性のブームとして消え去ってしまったのでしょうか。ビッグデータを活用することが経営の日常的なこととして浸透し、当たり前のこととなってしまったからなのでしょうか。
その答えとして、様々な企業経営の現場では、データの利活用はもとよりデータの蓄積や管理が十分にできていない場面をよく目にします。
顧客接点をはじめ、企業経営の様々な場面で発生するデータを蓄積し、データを利活用することで、企業経営の現場に隠れている真の価値を見つけ出し、その価値を最大限生かす可能性がまだまだ多く見逃されているのではないかと思います。
今回は、営業に焦点を当て、データを活用した営業の働き方の変革についてご紹介します。

営業現場におけるデータの有用性

営業の現場では、営業自身が担当する企業、提案の内容、過去の契約履歴、そしてお客様がいかに製品やサービスに満足しているか等々、様々なデータが発生しています。このような情報を正確にとらえ、活用することは、ビジネスにおいて非常に重要です。
 
例えば、企業情報や業界情報、その会社の規模や資本金、事業内容等のお客様の静態情報や過去の購入履歴や問い合わせ履歴、コンタクト履歴等のお客様の動態情報を蓄積し分析することにより、どのお客様がいつどのような製品・サービスを購入する可能性が高いのかを予測するモデルを作成することができるようになります。
 
このモデルを活用することにより、自分が担当するエリア内で特定の製品・サービスを購入する確率が高いお客様は誰なのか、これから訪問を予定しているお客様はどのような製品・サービスに購買の意向が高いのか、どのような提案ツールがこのお客様には適しているのかといったことを事前に確認することができるようになり、効率的に効果的な営業計画を立てることが可能になります。

【図1】営業データの活用

購買予測モデルの作成と活用

実用的な購買予測モデルを作成するには、単に利用できそうなデータを収集するだけでは不十分です。有効な購買予測モデルを作成するためには、社内外の様々な情報を整備する必要があります。併せて営業計画からアプローチまでの参照情報を集約し、分析できる仕組みを構築する必要があります。
 
また、単に営業担当者にツールやデータを渡すだけでは、営業活動に有効に生かすことはできません。データに基づく計画を策定し、営業担当者一人一人に対してどのような情報を引き出すことができるのか、どのように活用するのか等コーチングやマネジメントを実施することが必要不可欠です。
 
このようにデータに基づく効果的なアプローチができるよう組織としてプロセスを策定し、仕組みを構築することでより効果的な営業活動を実現することが可能になります。具体的には、的中率の高いターゲットリストに基づき組織としての案件発掘率の向上や顧客情報収集、提案シナリオ立案の時間短縮等が可能となります。
その上で、データを分析し、実績データを基に継続して改善をし続けることにより、自社を取り巻く環境にいち早く適合し、変化し続ける市場ニーズに合わせた商品やサービスを提供することが可能になるのです。

【図2】購買予測モデルの活用

営業におけるデータ活用の効果

図に示すように、前章にて記載した購買予測モデルを活用し、購買予測モデルが導き出したお客様をカバーすることにより、平均的な営業がカバーする場合に比べ、少ないお客様のカバーからより多くの有効商談を発掘することが可能となります。
 
その他にも営業にデータを活用することには以下のような効果が考えられます。

  • ナレッジの蓄積による属人的な営業業務からの脱却
  • 営業活動の効率化による生産性の向上
  • 開拓されていない販売網を捉えること
  • 市場のライフタイム・供給量の予想
  • 数値に基づく意思決定

 
もちろんデータ活用の検討にあたっては、コストや業務プロセスの改善、人材の育成等の課題も考えなければなりません。しかし、複数の研究からデータの活用が企業活動によい影響をもたらすこと、また、企業におけるICTの導入に伴う人材や組織改革等がそのよい影響をより強めることが示唆されています。
組織としてデータ活用を検討することには大きなメリットがあるのではないでしょうか。

【図3】購買予測モデルにおける有効商談の発掘数

データ活用の成功事例

製造業のお客様において、その企業の実際のお客様企業の企業情報や取引履歴等の情報を基に購買予測モデルを作成し、試行した際の事例になります。
 
縦軸に有効商談の発掘数を、横軸に対象市場のお客様企業数を設定しております。特定のエリアの企業総数5,600社に対して購買予測モデルを適用した結果、購買確率の高い約1,700社が抽出されました。その全体の約3割にあたる購買確率の高い企業の中から、420社の企業にて対象とした商材の有効商談を発掘することができました。これは、有効商談が発掘された企業の総数約600社の約7割にあたります。
 
しかし、成功している企業では、初めから大規模なシステムを構築して、取り組みを行っているわけではありません。PoC(Proof of Conceptの略。概念実証)を通して、どのような静態・動態情報が自社の購買行動予測に活用できるのか、どのような予測アルゴリズムが適切なのか、現場の営業にとって、どのような説明変数が理解しやすいのか等を検討し、効果を検証しながら、適用する営業部門や商材の範囲を広げています。

【図4】購買行動予測の仕組みの活用による効果

おわりに

データで営業の働き方を変えることはできるのか、という問いに対する答えは“YES”と言えますが、決してデータだけで営業の働き方を変えることはできません。
 
営業としてのマネジメントプロセスを整備した上で、日々の活動を通した案件や活動のデータを蓄積し、営業の可視化をした上でデータに基づくコーチングが重要となります。
 
このような営業の基本を徹底した上で、データを活用することで営業の働き方を変えることを実践する企業が増えています。

【図5】営業のマネジメントプロセス(例)

この記事に興味をもったらメールで送信して共有! ×

この記事の執筆者