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【歴史に学ぶ】30年前の「全社OA化」ブームから、DXへの向き合い方を考える

1980~1990年代の「全社OA化」ブーム

日本企業は、1960年代からビジネスにコンピュータを少しずつ活用してきましたが、80年代になると、コンピュータの処理速度・データ保持能力が大きく伸び、その結果、ビジネスへの適用範囲も拡大しました。
この流れは、90年代にかけてのオフィス・オートメーション(OA)ブームとなりました。「全社OA化」「1人1台パソコン」という標語が踊り、「EDP(電子データ処理 - Electronic Data Processing)」や「BPR(業務プロセス改革 - Business Process Re-engineering)」がトレンド化、「情報処理技術者は2000年に54万人不足する」と通産省が警鐘を鳴らす過熱ぶりでした。現在もまた、「2030年に59万人のIT人材が不足」と言われています。

【図1】1990年代のOA化ブーム

OA化を支えた、「情シスの生き字引おじさん」

OA化は、「自社でソフトウェア開発」する形で推進されました。
要は、各現場で発生する紙伝票を電卓で集計していたプロセス、その全体をIT化したのです。現在の言葉では、「デジタライゼーション」でしょう。
これを支えた生き字引のおじさんが、情報システム部門にいました。
この生き字引は得難い存在でした。何せ、社内のシステム構成と構築経緯、ユーザの人となり等が頭の中に全て入っているのですから。
・こんな業務処理をシステムに加えたいのだが
・こういう帳票が欲しいのだが
そう言われただけで、「システムのここを直せば」「費用・工期はこの程度」「影響するユーザ部門に断りを」などを即答できるのです。
社内のOA化を自分で実行したからこそ輩出できた「生き字引」でした。

30年前のOA化と変わらないDXになっていませんか

DXコンサルをしていると、「このお客様はいまも『全社OA化』の呪縛下にあるのでは」と思うことがあります。
具体的に申しますと、
・DXとは、「業務プロセスを他人がOA化」するものである
そう思いこんでいはしないか、と。
考えても見てください。「業務プロセスのOA化」は、30年も前からやっていること。とっくに終わっているはずで、残っているとしてもマニアックな利便性向上程度のはずです。
その証拠に、経営層と会話をすると「システムの老朽更新とやらに、初期導入時以上の投資が必要というのは、理解できない」と言われます。DX名でもう一度OA化をし直しているのなら、経営層のこのご認識は正しいのです。

こんな時にこそ頼りになる生き字引は、困ったことにもういません。
OA化が一巡する2000年頃までに、情報システム部門はIT子会社として切り出され、生き字引も引退してしまったのです。
これが、「DXに成功する日本企業は10数%」と報道される背景です。

FAにみるDXのヒント

では、どうしたらよいでしょうか。今度は、ファクトリー・オートメーション(FA)を題材にしてみましょう。
日本の製造業は、高度経済成長期の70年代にFAに乗り出し、工場の機械化・自動化・省人化を実現してきました。
これとほぼ同時に行われたのは、機械稼働状況の視える化と遠隔集中制御です。
製造設備にトラブル(閾値異常)が起きると、設備がパトライトのような光や音を出すことで、作業員が駆け付けられます。さらにこれが遠隔集中制御に進化すると、究極的には新興国の工場のように無人化されます。
このように、プロセス自動化の次に来るのは、閾値をベースにした視える化と遠隔集中制御なのです。
視える化と遠隔集中制御を可能にしたのは、デジタルデータです。ここに、DXのヒントが隠れています。

また、FAでは開発部門や生産技術部門が、生き字引として活躍しています。

DXの中核たるERPと、よみがえれ生き字引

FAは、概述すると【図2】のように進化してきました。

【図2】FA化の進展

着目すべきは「段階①」です。FA化の際に、従来の手作業を忠実に自動化すると、機械をオーダーメイドせざるを得なくなり、コストメリットが出ません。
一方で、機械のアウトプットである自社製品のオリジナリティは絶対に妥協できません。
結果、コストメリットとオリジナリティのバランスを考え、大部分のプロセスは汎用機械の組合せで標準化、一方で「オリジナリティの源泉」に重点投資することになったのです。

OAと対比してみましょう。
「段階①」は、30年前にやった「全社OA化」そのものです。しかし当時は、「従来の手作業を忠実に自動化」する方向に進んでしまいました。
これは、30年前のOAソリューションが貧弱で、汎用的に組合せられるほどの選択肢がなかったためです。
しかし、30年経過した今は、「新・段階①」「段階②」「段階③」までを一気に実現する環境が整ってきました。
その環境こそが、RISE with SAPを始めとしたソリューション群です。

DXを実現するIT投資

企業のシステムは、「業務システム」と「意思決定支援システム」に大別できます。
「業務システム」は、FAでいう自動化領域、「意思決定支援システム」は、遠隔集中制御領域に該当します。
FAになぞらえると、「業務システム」は汎用ソリューションの組合せで標準化、「意思決定支援システム」は競争力の源泉として重点投資をする領域になることでしょう。

こうなると、「業務システム」の導入方法は従来と全く違ったものになります。
これまでは、現在のプロセスを調査し、汎用ソリューションとの違いをどう解決するか、というアプローチでした。
これからは、「意思決定支援システム」で出したいアウトプットを決め、そのデータを集めるために汎用ソリューションをどう組み合わせるか、というアプローチになります。たいがいのソリューション組み合わせはEAI(企業内アプリケーション連携 - Enterprise Application Integration)によってローコード/ノーコード実現が可能です。
FAと同じく、システムへのインプットに焦点を当てるやり方から、アウトプットに注目する方法に変わると言ってよいでしょう。

なお、遠隔集中制御領域の人材は、「意思決定支援システム」が出すアラート等のデータに基づいてビジネス献言・指示出しをすることになります。
すなわち、自社ビジネスプロセスを理解し、「ビジネスのここを直せば」「費用・工期はこの程度」「影響する社内外関係者に断りを」などを即答できる人材であるべきです。
最近はこの人材のことを「ビジネス・トランスレータ」と呼ぶことが増えてきました。DX時代の「新・生き字引」と言えましょう。
OA化の経験に基づけば、成熟した生き字引が出現するまでに10年程度の時間が必要と言えそうです。

【図3】DXを実現するIT投資

どのような世界が待っているか

最後に、上記が実現できると、どのような世界が待っているでしょうか。
A社では、売上が数年前の1.5倍になりました。しかし、固定費は全くの横ばいです。これは、業務システムを世界で標準化したため、ビジネス規模が大きくなっても、業務ボリューム増を業務システムが吸収できてしまうためです。

B社では、世界中の拠点の状況把握・指揮命令を、意思決定支援システムのデータに基づいて行っています。客観的な同一データに基づいて遠隔地との会話ができるため、ストレスなく状況把握し、的確な指揮命令が可能となっています。

OA化やFAの歴史に学ぶことが、DXのイメージづくりの一助となれば幸いです。

【図4】OA化とDXの対比

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