会計システム刷新

【第32回】業務運用整備フェーズの秘訣は何か(後編)

◆この記事の要約

会計システム刷新における業務運用整備フェーズ(後編)では、ERP/会計パッケージのユーザー教育と業務運用テスト(UAT)を経理財務部門主導で進め、安定稼働を実現する要点がわかります。

  • ユーザー教育:キーユーザー/一般ユーザー/システム運用者に分け、システム操作・新業務手順・ハンズオン・システム設定を体系的に習得させます。
  • 教育のポイント:ユーザーのスキルやサブシステム特性に応じた教育プログラム設計、余裕をもった実施タイミング、Q&A対応の専任窓口・ヘルプデスクなどユーザーサポート体制が鍵です。
  • 業務運用テスト(UAT):業務シナリオに基づき、機能・画面、データ整合性、エラー・例外処理を検証し、標準機能に加えてアドオン機能まで業務運用に耐えるか最終確認します。
  • UATの勘所:適切なテスト参加者(経理財務部門+一般ユーザー+関連部門)を選び、上流システムからのインターフェースデータを含めて一気通貫で検証し、イレギュラー対応まで潰し込みます。
会計システム刷新の業務運用整備フェーズは、導入対象となる製品・サービスを前提に、業務要件定義フェーズで検討した業務改革施策を具体化したり、新システム移行後の業務運用を設計したり、ユーザー教育や業務運用テストなどを実施したりする重要なフェーズです。
 
業務運用整備フェーズは、ユーザー部門である経理財務部門が中心となって行います。新システムの導入に向けて、ユーザー教育や業務運用テストも行っていきます。これらはシステムの本番稼働前の大切な準備ですから、主管部門である経理財務部門が責任(自覚)をもって推進することが不可欠です。
 
そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新」のキホンのキとして、会計システム刷新における業務運用整備フェーズの要諦(後編)をご紹介します。

業務運用整備フェーズとは

業務運用整備フェーズの位置付け
業務運用整備フェーズは、新システム稼働前ならびに新システム稼働後の安定した業務運用を支えるためのフェーズです。

【図1】業務運用整備フェーズの位置付け

業務運用整備フェーズの進め方
業務運用整備フェーズには、新システム導入に向けての業務改革施策(ルール・プロセス・体制等)を具体化する業務改革推進、新システムを前提とした業務マニュアル・手順書等を具体化する業務運用設計、新システムを前提としたマスタ定義、新システムや新業務を行うためのユーザー教育、新システムを実際に使って新しい業務を検証する業務運用テスト(UAT)があります。

【図2】業務運用整備フェーズの内容

その中で今回は、業務運用整備フェーズの後編として、ユーザー教育、業務運用テストをご説明します。

ユーザー教育とは

ユーザー教育は、新システムの円滑な導入と安定稼働を支えるために、新システムのユーザー(利用者)に必要な知識・技能を習得させる重要な活動です。

ユーザー教育の対象者

キーユーザー
会計システム刷新プロジェクトにおいて、中心的な役割を担うユーザーです。
一般的には、経理財務部門から選任されたプロジェクトメンバーが該当します。一般的に詳細なシステム機能や操作方法などを習得し、一般的ユーザーへの教育担当(トレーナー役)にもなります。

また、キーユーザーは、システム要件の確定に参加し、要件の確認や承認なども行います。
したがって、キーユーザーに対しては、選定したERPや会計パッケージの教育を、システム要件定義の開始に合わせて実施することが一般的です。

一般ユーザー
会計システム利用するエンドユーザーです。
一般ユーザーは、会計システムの利用する機能を中心にシステム機能や操作方法などを習得します。
一般ユーザーの教育は、本番稼働前に実施することが一般的です。

システム運用者
会計システムの設定や運用を行うユーザーです。
システム運用者は、パラメーター設定、権限設定、メニュー設定、システム運用設定(スケジューラ―設定等)などを習得します。

システム運用者は、一般的に情報システム部門のシステム運用担当者が該当します。
しかし、昨今のクラウドサービスでは、利用ユーザーとして経理財務部門のメンバーが教育を受け、自ら設定変更していくことも増えてきました。

利用ユーザーである経理財務部のメンバーがどこまで習得できるか否かは、ERPや会計パッケージによって異なりますので、導入時に確認が必要です。例えば、クラウドサービスの中には基本的に利用ユーザーが設定することを前提として、数日から数週間で習得できるものや、従来のERPのように習得に数か月かかるものもあるからです。

教育の内容

教育内容には、下記のようなものがあります。

システム操作の教育
新システムの基本操作や業務フローを教育します。

新業務手順の教育
業務マニュアル等をもとに、新しい業務プロセスや運用ルールを教育し、これらの理解促進を行います。

実機を使ったハンズオン
実際のシステムを操作しながらの実践的な訓練(ハンズオン)をします。
業務運用テスト(UAT)の参加者については、業務運用テストに向け、テストが効率的に実施できるように事前に準備します。一般ユーザーについては、本番稼働に向けて事前に教育を実施します。

システム設定の教育
システム運用者に対し、システム設定の教育を行います。

  • パラメーター設定
  • ユーザー登録
  • 権限設定
  • メニュー設定
  • システム運用設定(スケジューラ―設定等) 等

ユーザー教育の具体的な手順

教育は、下記の手順で実施します。

【図3】教育の具体的な手順

ユーザー教育におけるポイント

ユーザーのスキルに応じた教育プログラムの準備
会計システムのユーザーは、会計について初心者から上級者までいます。初心者から上級者まで、理解度や役割に応じた教育プログラム設計が重要です。

特に、会計システムはサブシステムごとに使用するユーザー部門や会計処理の難易度が異なるため、そうした点も考慮して教育することが必要です。例えば、経費管理サブシステムのユーザーは、会計ルールや会計処理に詳しくない一般社員等であることから、操作ミスや業務トラブルを減らすための丁寧な教育が重要になってきます。

余裕をもった教育の実施
教育の実施タイミングも重要です。教育が本番移行の直前となると思わぬトラブル等により、スケジュールが変更されることもあります。ユーザー部門の業務負荷等を考慮したうえで、余裕を持って適切なタイミングで実施することが重要です。

ユーザーサポート体制の確立
教育に関するQ&Aなどのサポート体制を確立することが重要です。前述のように、会計システムのユーザーは、様々なスキルレベルの方々がいます。ユーザーの質問などに対し、迅速かつ丁寧に答えられる専任のサポート窓口やヘルプデスクを設置します。

また、研修後のシステム利用状況や、ユーザーからのフィードバックを収集し、システムが想定どおりに利用されているかを確認することも重要です。

業務運用テスト(UAT)とは

業務運用テスト(ユーザー受入テスト:UAT User Acceptance Test)は、導入予定のシステムがユーザーの業務要件や期待に合致しているかを確認する最終段階のテストです。

【図4】業務運用テストの位置付け

※業務運用テストとユーザー受入テストは、厳密には異なりますが、ここでは同一のテストとして説明します。

ERPや会計パッケージの標準機能は、システム要件定義フェーズやユーザー教育の中で確認できますが、経理財務部門によるアドオン機能の確認は主に業務運用テストの段階になります。経理財務部門は、業務運用テストで標準機能とアドオン機能を十分に検証し、業務運用に耐えられるか検証することが重要です。

※アドオン機能については、システムテストに経理財務部門も参加し、事前に確認しておくことを推奨します。

業務運用テストの内容

業務シナリオに基づくテスト実施
実際の業務フローに準じたシナリオで新システムの操作検証を実施します。

機能・画面の操作確認
ユーザーが日常的に使用する機能や画面の動作を確認します。

データの整合性チェック
入力・出力データの正確性や一貫性を確認します。

エラー・例外処理の検証
想定されるエラー発生時の挙動やメッセージを確認します。

ユーザーからのフィードバック収集
操作性や業務適合性に関する意見や要望を収集します。

業務運用テストの具体的な手順

業務運用テストは、下記の手順で実施します。

【図5】業務運用テストにおける主な手順

業務運用テストにおけるポイント

適切なテスト参加者の選定
業務運用テストでは、システムの機能ごとにテスト参加者を適切に選定することが重要です。
参加者としては、経理財務部門と一般ユーザーを入れて行う場合と、経理財務部門を中心に行う場合があります。経費管理サブシステムのように多くの一般ユーザーが利用する場合には、一般ユーザーも対象とすることもあります。

また、債権管理サブシステムでは販売部門、債務管理システムでは購買部門、固定資産管理システムでは総務等の設備管理部門というように関連部門が重要な業務を行っている場合には、それらの部門も一緒に業務運用テストを行うことも必要です。

一気通貫での検証
業務運用テストは、上流システムからのインターフェースデータごとに一気通貫で検証を行うことも重要です。テストシナリオの作成にあたっては、上流システムからのデータに応じた形でシナリオを作成し、業務運用テストで業務の成立性を検証していきます。

例えば、購買管理システムから購買データがインターフェースされる場合、購買データを取引先ごとの債務データとして会計システムに取り込み、取引先ごとの支払条件(支払サイト、支払手段等)で支払決定や支払データが作成できるか、といったシナリオとテストデータを用意し、検証します。また、支払を保留できるか、債権との相殺ができるか、といったイレギュラー対応についても検証していきます。

まとめ

今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新」のキホンのキとして、会計システム刷新における業務運用整備フェーズの要諦(後編)をご紹介しました。業務運用整備フェーズは、業務改革施策を具体化し実行に移すとともに、稼働後の業務運用が適切かつ安定的に行われるための重要なフェーズです。業務運用整備フェーズの詳細な進め方やポイントについては、是非レイヤーズ・コンサルティングにお問い合わせください。

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