あなたの周りの"スーパーマン"に頼りきりになっていませんか?
ーナレッジマネジメント成功のコツー

どんな職場にも困ったときに頼りになるスーパーマンがいらっしゃいます。
製造業の現場においても、“ベテラン設計者”、“匠の技術を持つ現場監督”、“不具合分析のスペシャリスト”等、多くのスーパーマンが“ここぞという時”に課題を解決し、企業を支えています。
 
こうしたスーパーマンが持つ“知識や経験”を形式知化する『ナレッジマネジメントの必要性』は、これまでも強く叫ばれてきましたが、実際には一過性の取組みになったり、ナレッジが陳腐化し使われなくなっている企業が多いのが実情です。
 
本日は、ナレッジマネジメントを本当に成功させるための一歩踏み込んだコツを紹介します。

ナレッジマネジメントはなぜうまくいかないのか?

企業にはベテラン社員を中心に今までの勘・コツ・経験により蓄積された暗黙知となっている企業にとって非常に有用な情報があります。ナレッジマネジメントは、この暗黙知を形式知化して活用できる環境を提供することであり、「①日々の業務データの蓄積⇒②ナレッジ情報の整備と維持管理⇒③ナレッジ情報の業務活用とスキル定着」のサイクルを回し続けることで実現します。
このサイクルが上手く回らなければ、「せっかくナレッジ情報がデータ化されても現場で活用されず、維持管理もされなくなり、たちまち陳腐化していく」といった負のサイクルに陥ってしまいます。

ナレッジマネジメントサイクルが機能しなくなる最大の理由は“業務負荷”です。各ステップをデジタル技術で抜本的に効率化することで、絵に描いた餅にならない『本当に実践できるナレッジマネジメントのサイクル』を構築する事が可能になります。

次章からは、各ステップにおけるナレッジのデジタル化のポイントをご紹介します。

【図1】ナレッジマネジメントの実現サイクルと業務負荷ポイント

日々の業務フローをデジタル化してナレッジの源泉データを蓄積すべし

ナレッジは、日々の製品設計や工程作業改善、不具合対策等の業務の中で生み出されます。こうした日々の業務情報を経緯(考えられた案やそのメリット・デメリット等)まで含めて、改めて掘り起こす事は非常に労力がかかり、結果として担当者の頭の中やPCにしか残ってない情報となりがちです。

この様なナレッジの源泉となる重要な情報をデジタルデータとして、いかに効率的に蓄積できるかが1つ目のポイントです。

例えば、新製品開発における課題管理を例にご説明します。
デザインレビューや実験/試作で判明した課題と対策の情報は、他製品や次製品開発における重要なナレッジとなります。
多くの企業では、この課題管理をExcelで行っており、管理している内容も「課題とステータス、対策結果」のみで、当時の検討資料などは担当者のPCの中にしか残っていません。

これらを全てデジタル化することで「業務の効率化」と「情報の蓄積」の両方を実現する事が可能になります。
発生した課題をシステム上で起票し、考えられる対策案やその検討資料、対策結果の写真等を全てシステム上に登録していきます。
部門間の業務連携(検証・評価依頼等)もワークフロー機能で連携することで、課題のステータス管理も可能になります。
1件1件のステータスを集計し、ダッシュボード機能で表示する事で、製品開発全体での課題対応状況を可視化し、報告資料を作成することなくDRの実施も可能となります。

この様に日々の業務自体をデジタル化し、ナレッジに必要な情報が自然と蓄積されていく仕組みを構築しなければ、ナレッジ情報の整備と維持管理業務が形骸化してしまうケースが非常に多くなります。

【図2】製品開発プロジェクトの課題管理のデジタル化

最新のデジタルテクノロジーを活用し、効率的に有用なナレッジを生成すべし

いくらナレッジの元となる業務データをデジタル化しても、そのままではナレッジとして不十分です。現場が活用できるナレッジとして加工/生成する必要があり、この労力が非常にかかるため、ナレッジが陳腐化する大きな要因になっています。

蓄積された業務データから“ナレッジ”を生成する場合においても、最新のデジタルテクノロジーが活用できます。

ナレッジマネジメントに有効なデジタルテクノロジーの1つに“データマイニング”と“機械学習(AI)”が挙げられます。業務データから、傾向と関連性を導き出し、ナレッジを自動的・効率的に生成することが可能になります。

例えば、品質不具合の『現象/原因/対策』のテキストデータを蓄積し、その傾向と関連性を学習させることで、「どの様な不具合が発生した場合に、何を確認して、どこを対処すべきか」といった不具合対応事例集を自動的に生成する事が可能になります。

また、検査時の画像データと検査結果を照合することで、ベテラン検査員が経験則的に判断していた検査項目と基準を体系的に可視化することも可能になります。
更に、工場ラインや設備からセンシングデータを取得し、検査結果との関係性を学習させることで、稼働状況に応じた「設備の補正条件」や「作業チェック項目」を導き出すことも可能になります。

この様に、デジタルテクノロジーの活用で、これまでベテランの暗黙知とされていた業務/作業を科学的に可視化することができる様になってきています。こうした技術も活用して効果的・効率的にナレッジ情報を整備していく事が、ナレッジマネジメントを一過性の取組みにしないための、2つ目の重要なポイントです。

ナレッジデータベースと業務システムを連携させて、徹底活用すべし

これまで『ナレッジの源泉となるデータの管理』や『デジタルテクノロジーを活用したナレッジ整備』についてご紹介してきました。しかし、最終的にナレッジが現場で活用されなければ、ナレッジの価値が下がり、たちまち陳腐化してしまいます。

一方で、現場で良く耳にするのは「情報がどこかにあるはずだけど、探すのに時間がかかるため、人に聞いた方が早い」という声です。

現場でのナレッジ活用を促進するためには、ナレッジの活用局面を明確化しておくことが重要です。「誰が、何の業務を行う際に活用すべきナレッジか」や「どの様な困りごとの際に見るべきか」といった活用局面の複数のキー(検索条件)を、ナレッジとあわせてナレッジデータベース上で管理することが必要です。

更には、ナレッジデータベースと業務システムを連携させ、活用局面のキーで業務システム上で“必要なヒトが、必要なタイミングで、必要なナレッジ”に簡単にたどり着けるようにすることで、活用度が飛躍的に向上します。

例えば、製品設計を行うCADやPLMシステムとナレッジデータベースを連携させ、『ユニット分類/材質/工程・工法』等のキーで、“原低アイディア集”や“チェックリスト”、“過去トラ”等をピックアップしてプッシュ型で情報提供を行うことも可能になります。

この様に、『業務や作業』や『活用対象者(部署/役職/ランク)』、『製品/部品や工程/設備の分類』、『不具合事象』等の切り口でナレッジの活用局面を明確化し、各部門の業務システムと連携させることで、日々の業務におけるナレッジを活用が定着化されていきます。

【図3】ナレッジデータベースと業務システムの連携

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