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ヒューマンエラー対策は仕組みづくりが9割
~原因を現場のせいにしてませんか~

近年DX等の活用により業務の自動化が進んでいますが、人手作業も残っており、業務品質を損なうヒューマンエラーは根絶されていません。
品質管理部門では「現場が悪い」と、そこでの改善ばかりに目を向けています。
孔子は「罪を憎んで人を憎まず」と言っています。
現場のせいにせず、ヒューマンエラー対策として起こさない仕組みを作ることが重要です。今回はそのキホンをご紹介いたします。

なぜヒューマンエラーに着目するのか

昨今、多種多様な業務のシステム化が進み、人の行う作業をシステムが正確に自動処理できるようになってきました。その結果、一見すると品質は高まっていてミスやエラーは少なくなったように見えるかもしれません。しかしながら、実際の業務の進め方を見ると、判断や調整を行うシステム化が難しい業務、ノウハウが必要で複雑な業務は依然として人手で行っていることが多いのが実態である企業が多いようです。
例えば、非常に多くの商品・サービスを扱うコンビニエンスストアのレジ業務ではPOSを始めとしてシステム化が進んでいるように見えますが、代行収納票等の紙をベースとした人手のオペレーションは残っており、ミスが発生するリスクが残っています。
このような現場のオペレーションの実態は、経営層や本社の品質管理部門が描いているような(理想的な)オペレーションと乖離が起きていることも多く、経営層や本社部門にとっては想定していなかった大きな品質トラブルが発生するリスクがあります。
この品質の確保に関わるリスクを低減し、業務品質を確保するためには、残っている人手によるオペレーションに対してデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用や作業内容の簡素化、アウトソーシングサービス化(BPO)によるリスクの外部化等を検討して人手の作業で発生しうるミス(ヒューマンエラー)を低減することが重要です。

【図1】コンビニエンスストアのオペレーションの複雑化

【図1】コンビニエンスストアのオペレーションの複雑化

品質管理は現場よりも体制に問題あり

業務上のヒューマンエラーの問題について、責任はどこにあるのでしょうか。
一般的には、ミスをしたら、ミスをしたその人が悪い、と考えることが多いと思いますが、企業の業務におけるヒューマンエラーについては経営者や本社の品質管理部門の責任と考えることが重要です。
現場で発生したヒューマンエラーは、ヒューマンエラーが起こるような業務やシステムを設計したこと、きちんと教育やフォローを行わなかったこと等の体制や制度に問題があり、それを甘受して放っておいた経営者に責任があるのです。
また、新サービスや新システムの導入時によくある事例として、新業務やシステムを設計するだけで満足してしまい、現場への導入やフォローが十分になされないことがあります。たとえ素晴らしいシステムであっても、適切に使われなければ期待した効果の実現や業務品質を向上することはできません。こういった場合でも、システム稼働時の導入をおざなりに行った経営者たちに責任があると言えます。

それでは、次節より、ヒューマンエラーの撲滅に向けて、ヒューマンエラーの発生を防ぐエラーモード分析と、発生したヒューマンエラーへ対策を講じるためのインシデント・アクシデント分析の手法を紹介します。

【図2】予防と事後のデュアルアプローチ

【図2】予防と事後のデュアルアプローチ

予防的アプローチ:エラーモード分析

エラーモード分析は、ヒューマンエラーが発生する前に、業務プロセスを分析してインパクトの大きなヒューマンエラーのリスクを抽出し、対策を設計する方法です。今後起こりえるエラーを評価し、対策を講じるという点から予防的アプローチと言います。
まず、業務プロセスを作業レベル(動作:一挙手一投足)まで分解した上で、作業ごとにヒューマンエラーが発生するリスクのあるものを抽出します。
ここでは、緻密なリスク予測が必要になります。エラーが起こるリスクが限りなく低そうであっても、網羅的にリスクを洗い出すことが重要です。
次に、ヒューマンエラーが起こりうる頻度×影響度×検知難度などの項目でリスクごとに重み付けを行ったリスク優先指数(RPN)を算出して、総合的にリスク対応の優先順位を設定し、リスク優先指数が高い作業・リスクを特定します。
経営者や品質管理部門はリスク優先指数の高いものから、そのリスクを予防するための対策を設けて、ヒューマンエラーを未然に防ぐことが可能になります。

【図3】エラーモード分析の進め方

【図3】エラーモード分析の進め方

事後的アプローチ:インシデント・アクシデント分析

インシデント・アクシデント分析は、これまでに発生したヒューマンエラーの真因を特定し、それに対策を講じることで再発を防ぐ方法です。
インシデント・アクシデント分析は、ヒューマンエラーが発生したときの状況を正確に・精緻に把握して記録することから始めます。そのうえで、過去一定期間に発生したヒューマンエラーのすべての事案について、発生した際の状況を整理しながら業務プロセスへマッピングします。
次に、ヒューマンエラーが発生した事象や業務プロセス内の作業ごとに「真因」の分析を進めます。多くの場合において、このステップが最も重要かつ難しいステップとなります。例えば、ある業務で、新人の担当者が業務の進め方が分からずミスしてしまった場合、新人の担当者が業務を理解していなかったことが「原因」ですが、この場合の「真因」は業務を進める際のルールが明確になっていなかったこと・ルールがあっても順守されていなかったこと、もしくは忙しさのためにチェックを怠ってしまったことなどが考えられます。目先の「原因」に囚われず、深層にある「真因」を探ることが重要です。
最後のステップとして、m-SHEL分析や戦略的エラー分析といったフレームワークを利用し、インシデント・アクシデントへの対策を抽出します。その上で、対策の即応性・重要性に応じて順次対応していくことが必要になります。

【図4】インシデント・アクシデント分析の進め方

【図4】インシデント・アクシデント分析の進め方

ヒューマンエラー撲滅事例

最後に、ある機械部品商社のA社の請求業務における業務改革をご支援した事例を紹介します。
A社では、取り扱う商品の種類が非常に多く、また顧客訪問時等での新規受注や追加・変更等も発生していました。このような状況から、受注から納品・請求するまでの事務処理が煩雑になっていて請求エラーが頻発していたため、請求業務の正確性を確保するために業務改革が必要になりました。
取り組みの最初のステップとして、エラーモード分析を用いて業務のフローや作業内容を精査した結果、請求エラーのリスクは、システム化が進んでいる請求書の作成・発行ではなく、受注時の申請→審査→承認の部分にエラーの発生頻度が高く、影響が大きいことが分かりました。
次に、過去の請求エラー事例を整理・分類して深堀分析した結果、営業担当者は作業の効率性を重視しており、ルール順守の必要性やそれを逸脱したときの影響を正しく理解しておらず、ルール外の処理を行ったことが原因のエラーが全体の70%を占めていました。
これらの結果を受け、下に示す「業務施策検討の視点」に基づき検討を進めました。まずは「①やめる・なくす」ために転記ミスや抜け・漏れのリスクがあるExcel申請書を廃止して、電子ワークフローを導入しました。その他「②できないようにする」ために、入力項目のマスタ化や自動入力機能を活用することで請求エラーの発生リスクを低減した上で、「④やりやすくする」ために顧客訪問時にそのまま受注申請が行えるようにモバイル対応を行いました。
さらに、見直し後の業務内容を説明時に、「⑥認知・予測させる」等のために、各項目が後続業務でどのように使用されるか等の正確な処理の必要性を説明することで、担当者の意識改善を図りました。
その結果、請求エラーの発生確率を10分の1以下に低減できました。
このように、ヒューマンエラーを撲滅する品質管理のためのアプローチは、従来の効率化を目的とした業務改革に近いものがあり、業務品質を担保することで業務改革の効果を底上げすることにつながります。
詳細については、是非お問合せください。皆様と一緒に品質管理体制強化を実現したいと思っております。

【図5】業務施策検討の視点

【図5】業務施策検討の視点

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