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VUCA時代における仕事の流儀
~プロシージャ型からパーパス型へ~

今仕事の現場では何が起こっているのか

昨今、コロナ禍においてリモートワークが増えるなか、仕事のやり方の議論が多くなっています。また、多様性の確保や人的資本の流動化のために、雇用形態として「JOB型」雇用も議論されています。日本企業は今後どのように仕事を変革していくべきでしょうか。

今から100年以上前、経営学者フレディリック・テーラーが工場の生産性向上の成果をまとめた「科学的管理法の原理」を出版しました。テーラーは、客観的、科学的な分析に基づく生産性向上を唱え、task management、work studyによる作業の標準化等を提言しました。
こうした科学的管理法は、20世紀の自動車産業を中心とした工業化の流れのなかで大きく進展し生産性を飛躍的に向上させました。しかし、科学的管理法における過度なtask management、work studyは、労働強化と人間性不在を招いたとも言われています。

日本においては、戦後招かれた経営学者エドワーズ・デミングが統計的な品質管理手法を提唱し、工場におけるQC活動やTQC活動として浸透していきました。こうした中で、有名な「トヨタ生産方式」が生まれました。
「トヨタ生産方式」には有名な「かんばん方式」「JIT」などがありますが、最も重要な点は「人」を中心としたカイゼンです。アメリカ流の科学的管理法が「分業化→標準化」によって顧客を分からなくした「作業(固定化された標準化)」を生んだことに対して、「標準化」は出発点であり「人」のやる気と工夫によるカイゼンで「進化し続ける標準化」を目指している点です。

しかし、昨今の仕事のやり方に関する議論においては、科学的管理法への先祖返りの要素も多く見受けられます。日本企業は、旧来より仕事が属人的に行われていたことが多かったため、今ある仕事を「標準化」して行こうとする動きです。そのため、現状の「今行われている業務」を分析し、業務フローや業務記述書を作成していくというプロシージャ型の仕事の定義が行われています。これも決して間違った方法ではありませんが、VUCAと言われる環境変化が激しい時代においては、科学的管理法の罠に陥らないために「人」に着目した仕事の変革を考えていくべきではないでしょうか。

真に仕事を変えていくために

レイヤーズでは、「仕事」を下図のように定義しています。即ち、「仕事」とは、特定の「目的」達成のために、社員が「貢献意欲」を持って、「有形・無形の資本」を活用し、「工夫」しながら「作業」を行い、「成果」を上げることです。
日本の生産性が低いのは、この仕事のモデルのどこかに欠陥があり、成果が十分出ていないためです。例えば、仕事が属人的に分業化されたが故に、社員がその仕事の「目的」を見失い、ただ単に「決められた作業」をしているだけになってしまっているからではないでしょうか。

価値を生み出すものは「人」の「貢献意欲」

「仕事のモデル」では、消費価値(労働価値+利用した資本)とその結果創出された価値は不等価です。企業活動において、消費価値よりも創出価値が大きくなる源泉は、社員の「貢献意欲」です。
従って、価値創造には、社員の「貢献意欲」を創出することが不可欠であり、そのためには仕事自体を社員の「貢献意欲」を創出させる仕事に変革することが必要と言えます。

パーパスは、社員の「貢献意欲」の基盤

昨今、企業において「パーパス(存在意義)」の重要性が訴えられてきていいます。社員の「貢献意欲」を引き出すためには、企業経営においてこの「パーパス」を示すことが不可欠です。

また、企業の活動は、バリュー・チェーンとも呼ばれます。バリュー・チェーンは、インプット・プロセス・アウトプットを一つの輪(仕事)として定義し、これを鎖のように繋げていくイメージです。バリュー・チェーンを定義すると一見物事がスムーズに流れていくように見えますが、チェーン(鎖)を押したらどうなるか想像してみてください。鎖は、グチャグチャになるだけです。即ち、バリュー・チェーンを無駄のないピーンとした状態にするには、プッシュ型(自己都合型)でバリュー・チェーンを考えるのではなく、アウトプット即ち最終的な価値創造からプル型(顧客価値・市場価値型)で考えることが必要です。

企業としての最終的な価値創造は、「パーパス」ともいえます。従って、この「パーパス」からバリュー・チェーンを考え、それを構成する仕事の「目的」を定義し、そこから仕事を考えていくパーパス型アプローチが重要です。「パーパス」は、仕事まで落し込んで浸透させなければ、「貢献意欲」の向上にはつながりません。即ち、このパーパスから導き出された仕事の「目的」を明確にして、社員に「仕事」の裁量権を委譲し、「パーパス」実現のために何が本当に大切か=付加価値は何かを常に考え行動し「成果」を挙げるパーパス型の仕事のやり方が求められているといえます。社員が「何のために働くのか」「働くことでどう自分を高めるのか」を意識し向き合う仕事のやり方ともいえます。

こうした考えはドラッカーのいう「マネジメントとは物事を正しく行うことであり、リーダーシップとは正しい事を行うことである」に通じる考え方です。前述のプロシージャ型は「正しく行う仕事のやり方」とも言えますし、パーパス型は一人一人が「正しい事を行う仕事のやり方」とも言えます。VUCA時代においては試行錯誤を繰り返すことが必要であり、そのために社員の一人一人がリーダーシップを果たしていくシェアド・リーダーシップが求められていることからも、パーパス型の仕事のやり方が適していると言えます。

昨今ESG・SDGsの潮流から企業はより社会的な存在として注目されております。企業がこうした社会価値創造の主体になっていくためにも、社会価値創造の貢献する「パーパス」を明確にして、社員一人一人がそのために仕事を変革し、より高い「貢献意欲」で仕事に取り組むことが重要となってきているのではないでしょうか。

パーパスを仕事に落とし込むということ

また、「パーパス」を仕事に落とし込むということは、単に仕事を再定義することだけでなく、「パーパス」を踏まえた心掛け・こだわりを行動まで繋げて明示化し、具体的に実践出来るようにすることです。
具体的には、企業の「パーパス」と各組織の「パーパス」を明らかにし、それらを踏まえて社員の仕事において、「心掛け・こだわるべきこと・大切にすべきこと」と「その理由」を明確化し、これを「具体的な行動・着眼点」まで落としこむ必要があります。

仕事における形式知と暗黙知

今回は、形式知を如何に組織的に定着させるかについてご紹介しましたが、暗黙知についてはまた別の機会に御紹介いたします。

製造業における仕事の再定義

ある製造業では、人材の多様性を確保するJOB型雇用に向けて仕事を定義する必要がありました。しかし、それぞれの社員が行っている仕事は、長年の組織変更や人の異動に伴う仕事の異動等によって様々なものが行われており、こうした仕事の区分けの曖昧さから部門の対立も発生していることが判明しました。この様な仕事を現状から整理しても多大な労力が掛かるだけに終わってしまうことに成り兼ねないため、そもそもの機能のパーパス(存在意義)から考え直すことが近道であるとの結論になりました。そこで、会社のパーパスを再度明確にした上で、機能のパーパス、それを達成するための仕事の目的と内容の定義、仕事での心掛け・大切にすべきことを明確にしました。こうすることにより、組織の壁が低くなり、自部門中心的な考え方から、各部門が助けあう利他の文化も生まれてくるようになりました。

以上のように、VUCA時代においては、今までのような「固定化された標準化」ではなく「進化する標準化」を目指すべきであり、そのためにパーパス型の仕事のやり方を組織に根付かせなければいけません。仕事の見直しを単なる業務記述書の作成だけにとどめていたのでは、日本企業が失われた数十年を取り戻し、復活を遂げることはできません。

是非皆様と一緒に仕事を変革し、人・組織を変革し、絶え間ない価値創造を実現していきたいと思っております。

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