OODA型のプロジェクトマネジメントが主流に
~これからのプロジェクトマネジメントとは~

2021年8月に『PMBOK』第7版がリリースされ、10月27日に日本語版が発行されました。成果物主義から価値主義に大きく変化しており、業界でも大きな話題になっております。
多くの企業が変革や変化対応のためにプロジェクトを企画、推進されています。しかし、どうしてもつまづいたり、形骸化してしまうことも珍しくなく、弊社が多くの企業から相談を受けているのも事実です。
今回は、プロジェクトに成功するためのプロジェクトマネジメントのあるべき姿について、弊社の考えをご説明させていただきます。

VUCA時代でPDCA型からOODA型へ

昨今、世の中では「VUCAの時代」と言われ、変化が大きく、先が見えず、正解がない時代になっています。タクシー業界やホテル業界のように突然ディスラプターが現れて業界を大きく変革してしまうこともあり、我々は「経済的有事」と捉えています。変化の激しい時代の中では、これまでの常識や当たり前が通用せず、常に変革や変化への対応をしなければなりません。即ち、今までのしっかりと詳細な計画の立案に時間をかけるPDCA型は先が見えない時代では機能しません。状況を見て、判断し、意思決定して、行動してくOODA型に経営スタイルを変えていく必要があります。

【図1】マネジメントは、PDCAからOODAへ

PMBOK第7版が導入 プロジェクトマネジメントの考えが大きく変化

こうした変化の激しい時代において、各企業は、変革やイノベーションを起こすための様々なプロジェクトが企画され推進されております。これらのプロジェクトを成功させるための手法として、プロジェクトマネジメントが用いられています。プロジェクトマネジメント手法は、PMBOKをベースとした体系的に記されていますが、2021年8月に第7版がリリースされ、10月27日に日本語版PMBOKの第7版がリリースされました。

これまでの第6版までとは大きく違い、新しい概念も導入されています。

【図2】PMBOK第7版の改訂ポイント

第6版までは、『どうやって進めていくべきか、どんな成果物を出していくのか』を重視していた「成果物主義」でした。第7版では『何を大切にすべきか』という 価値提供システムという概念が生まれ、『価値を届ける』ことが目的という「価値主義」に代わり、その価値を提供するための12の原則(プロジェクトマネジメントマネジメント・プリンシプル)が定義されました。

また、第6版までは先が見える時代に対応して、『予測型のウォーターフォール』に対応した形でした。第7版では先が見えない時代に対応した『適応型のアジャイル』の考えが色濃くなりました。不確実性という概念が追加され、より不確実な状況を想定した『パフォーマンスドメイン(行動領域)』に着目した管理となっています。

このように、プロジェクトマネジメントにおいても、計画を立ててその計画通りに如何に実行していくか、ではなく、不確実な中で何を大事にしてどんな価値を提供していくのか、というように推進の仕方が農耕型から狩猟型に変化してきていることがいえると思います。

価値をコントロールするプロジェクトマネジメントに必要なPMとは

プロジェクトマネジメントとはどのようなものかを議論する前に、そもそもプロジェクトにおける価値とは何でしょうか。プロジェクトの価値は、そのプロジェクトを通して、その会社やそのサービスを享受するユーザーに対して、もしくはその会社で働く社員に対して、そのプロジェクトが成功したことによって「どのくらい役立つのか、意味のあるものになるのか」が重要となります。そもそもプロジェクトを実施する意義や目的、その目的に至った背景などが明確になっており、全員が腹落ちしていることが重要となります。

今までのプロジェクトマネジメント1.0(PM1.0)は進捗を管理して、To₋Doを管理して、課題を管理して、品質を管理するような事務的プロジェクトマネジメントでした。しかし、これからのプロジェクトマネジメント2.0(PM2.0)は、プロジェクトの意義や目的(パーパス)を如何に、メンバーやステークホルダーに浸透させられるかどうかにかかっています。そして、このパーパス以上に大事になってくるのは、目的や意義を実現する力がどこから生まれてくるのかということです。それは、プロジェクトを実施する現場メンバーの『情熱のマグマ』※です。「このプロジェクトを通して〇〇になっていきたい」「業界No1の品質管理をしていきたい」等々、様々な企業をご支援していてこの情熱マグマこそが、プロジェクトを実施する意義や目的に直結、そしてプロジェクトを推進するエンジンになります。

※『情熱のマグマ』:ソニー再生 平井 一夫 (著) より引用

プロジェクトマネジメント2.0は、パーパス(Purpose)をしっかりと描き浸透させ、情熱のマグマ(Magma)を爆発させることが前提になってきます。

【図3】プロジェクトマネジメント1.0からプロジェクトマネジメント2.0へ

従来のQCD管理に加えて、より大事な新QCD管理とは

QCDの管理がプロジェクトの成否を大きく分けると言っても過言ではない程、プロジェクトマネジメントにおいてQCD管理は重要項目となっています。QはQuality(品質)、CはCost(費用)、DはDelivery(納期)です。

【図4】従来型QCD管理と新QCD管理

これからのプロジェクトマネジメントにおいては、今までのQCD要素だけではなく、「価値」をコントロールし、「不確実性」をコントロールすることが重要です。また、8つのパフォーマンスドメインの①「ステークホルダー」、②「チーム」にあるように「人」の軸も、より色濃く重要さが増しております。

そこで、これからのQCD管理で意識するポイントは、
・QはQuickly(変化に対応をするための迅速さ
・CはConvinced(価値に納得性を持ち、腹落ち・共振する)
・DはDiversity(イノベーションを起こすための多様性
になってくると考えております。

プロジェクトマネジメントを推進していく、プロジェクトマネージャー(PM)及びプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)は、今までのQCD管理にプラスして、新QCD管理も考えていく必要があります。

【事例】プロジェクトのスタートからエンドまで一気通貫のプロジェクトマネジメント

ある企業では、過去何度も「業務改革プロジェクト」を実施しておりました。しかしながら、何の為に業務改革を実施するのか、業務改革の意義・目的を感じておらず、業務改革後の姿が描けておりませんでした。また、多くの企業では組織間の壁は大きく、プロジェクトメンバーの中に縦割り意識がとても強く残っていました。

そこで、プロジェクトの目的や意義を自分事化してもらうために、「想い/仮説」を作るための検討材料(他社事例/第3者目線の意見)を提供しながら、「想い/仮説」を繰り返し絵にしていきました。またこれらのサイクルをクイックに回すことにより、より自分事化され、プロジェクトメンバーへの腹落ちを図りました。

【図5】「想い/仮説」を繰り返し練り上げる

また、組織間の壁にも積極的に入り込んでいくことにより、組織間の壁を破壊しグレーゾーンの潰しこみを実施しました。

【図6】組織間の壁を破壊しグレーゾーンを潰しこむ

さらに、従来的なQCDも疎かにすることなく、プロジェクト失敗要因の大部分を占める、関係者間でのボールの投げ合い、体制肥大化による統制機能不全、コミュニケーションロス・齟齬へのアプローチも、プロジェクト運営ルールの策定から運用徹底、関係者との横串を刺したコミュニケーション管理を行い、結果として、組織の壁を超えたTO-BE業務を描き、全社として約30%の業務量削減を実現することが出来ました。

以上のように、昨今、変革やイノベーションを起こすためのプロジェクトは続いており、どの企業様でも多くのプロジェクトが立ち上がっております。プロジェクトは大きな金額をかけて実施するため成功するか否かによって、大きな影響を会社に与えます。変化の激しい時代だからこそ、しっかりとプロジェクトマネジメントを講じるべきと考えます。是非、皆さまのプロジェクトを成功させるべく一緒に新たなプロジェクトマネジメントを実行していきたいと考えております。

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