ホワイトカラー生産性向上のキホンのキ
~タイムマネジメントの実践~

ホワイトカラーの生産性が低いと言われて久しいですが、生産性の向上に成功した会社があまり多くないのも実態です。その要因としてワークマネジメント、タイムマネジメントが出来ていないことがあげられます。世界でも有数の生産性を誇る日本のものづくりの現場では当然の作業標準やそれに基づく時間管理などが、事務系職場では全く出来ていません。
今回は、ホワイトカラー生産性向上のキホンのキとして、タイムマネジメントの要諦をご紹介します。

まずは、時間を管理せよ

ホワイトカラーの生産性の向上を実現するためには、どこにメスを入れるべきなのか?
もちろん、生産性向上のためAI、ビッグデータ、ロボットといった最新テクノロジーを徹底活用することも必要ですが、まずは生産性向上を実現するための〝基礎固め〟が重要です。

日本企業の労働生産性は著しく低く、特にサービス業はアメリカの比較にならないほどの低水準です。これを少しでも上げていくためには、生産性を阻害する根本原因を探り出し、対策を打たなければいけません。
そのためには、社員1人1人が、どの仕事に、どれだけの時間を費やしているのかを徹底的に〝見える化〟することです。即ち、ホワイトカラーの現状の生産性の〝見える化〟が第一歩になります。

体重計に乗らない人がダイエットに成功したり、現金出納帳を付けない人が金持ちになったりすることがあり得ないように、時間の使い方をしっかり管理できていない企業が生産性を向上させることは不可能です。
特に日本企業においては、ホワイトカラーの時間の使い方が不透明であることが多いようです。例えば、日本のホワイトカラーは本来やるべき仕事の傍ら、さまざまな雑務をこなさなければならず、そうした仕事については指示や実績の記録がほとんど残らず、生産性管理という観点で見ると〝野放し状態〟になっているからです。

日本の生産現場においては、「どれだけの工数を使って、何をいくつ加工する」という厳密な生産指示や、それに基づく生産実績がきちんと記録され、実績に応じてカイゼンしていくという厳格なPDCAサイクルが回っています。しかし、残念ながらホワイトカラーの仕事については、そうした仕組みがまったくといっていいほど整っていません。
これが、製造業の生産性は世界的に見て高いものの、サービス業に至っては著しく低いという日本の生産性のいびつな構造を形作っている要因の一つであるといえます。

タイムマネジメントの三種の神器

PDCAサイクルをしっかりと回しながら、時間という最高重要資源を生かしていく取り組みをしない限り、生産性向上は絶対に実現しません。
では、具体的にどうやってタイムマネジメントを行えばよいでしょうか? 

そのために活用したいのが

  • WBS(Work Breakdown Structure)
  • オブジェクトコード
  • タイムレポート

のタイムマネジメントの三種の神器です。

【図1】タイムマネジメントの三種の神器

WBS(Work Breakdown Structure)とは

WBS(Work Breakdown Structure)は、特定の目的達成のために必要な仕事を分解していき、体系化していくことを指します。システム開発などのプロジェクトマネジメントにおいては一般的な手法ですが、ホワイトカラーの仕事においても活用できます。

WBSには、体系化した仕事の一つ一つに、仕事内容、タイミング、品質基準、成果物など記述して仕上げていきます。そして作成したWBSに基づき、担当者の割付とスケジュールの作成を行い、具体的な作業指示を明確化していきます。定常業務については、年次・月次・週次といったタイミングで作業指示を行い、非定常業務についてはその都度指示していくことになります。

【図2】財務管理におけるWBSのイメージ

社員にとっては、WBSに記された品質基準や納期に沿って、計画時間通りに成果物を仕上げていくことが仕事の目標となります。

オブジェクトコードとは

オブジェクトとは、仕事をする上での対象、目的、目標、テーマなどを指します。例えば、営業部門なら商談や顧客、商品企画なら商品企画テーマ、システム部門なら開発プロジェクト、管理部門なら社内プロジェクトなどが代表的なものです。

【図3】情報システム部門におけるオブジェクトコードのイメージ

オブジェクトコードは、WBSの仕事をオブジェクトに区分けするために利用します。例えば、経理部門で、4月決算、5月決算といったようにオブジェクトを設定し、月中の仕事が4月分か5月分かを区分したりします。

WBSとオブジェクトコードで、それぞれの社員が、どの対象に対して、どの仕事で、何時間を使ったかが、見える化できるベースが整います。

タイムレポートとは

タイムレポートは、どの対象に対して、どの仕事で、何時間を使ったか報告する制度です。すべての仕事において、WBSやオブジェクトコードごとに、全社員の全就業時間を把握することが重要です。
時間はすべての社員に共通する唯一の最重要資産であるからこそ、そのマネジメントは適切に行わなければいけません。

当社のようなコンサルタント会社は、1人1人の時間の使い方が全体の生産性に大きく影響するので、昔からタイムレポートの導入は不可欠でした。
しかし、企業でタイムレポートを導入した例はこれまでにもありますが、社員の抵抗感が強い、正確性が保てない、継続するのが難しい、などの理由で中々定着しなかったのも事実です。

タイムレポートは、社員を単にコントロールするものではなく、社員の働き方をカイゼンし、より良い仕事の成果をもたらすものです。従って、タイムレポートを定着させるためには、トップマネジメント自らその重要性を説き、社員の納得感を得ることが重要です。

また、昨今では、デジタルテクノロジーが発達し、プロジェクト管理系、スケジューラー系、勤怠管理系といった様々特徴をもったクラウドサービスがありますので、それらを使ってタイムマネジメントを行ってみては如何でしょうか。

【図4】タイムマネジメントのためのデジタルツール

仕事の実態を〝見える化〟せよ

「WBS」、「オブジェクトコード」、「タイムレポート」の三種の神器を整え、どの対象に対して、どの仕事で、どれだけの時間を費やしたのかということを全社員・全業務時間で記録すると、価値を生む仕事とそうでない仕事のバランスが見えてきます。

例えば、下図は機器メーカーの全営業職及び営業アシスタント職の一カ月間の業務を内容別に分析したものですが、図表からわかるように、顧客と接する本来の営業活動は全体のわずか18%にすぎません。それ以外は提案書作成業務、社内間接業務などに時間を取られています。
弊社の経験でいうと、営業職が営業活動に専念できる時間は全就業時間の2割程度です。そして残りの8割は直接的には価値を生まない仕事に忙殺されていることも珍しくありません。

【図5】機器メーカーの営業部門の時間分析

このように日本企業の仕事は間接業務があまりにも多く、とりわけホワイトカラーの業務に占める間接業務の割合が極端に高いことがわかります。
しかし見方を変えれば、日本企業のホワイトカラー業務は、改善の余地が非常に大きく、最新テクノロジーなどを活用すれば、飛躍的に生産性が向上する可能性を秘めているともいえます。まさに〝宝の山〟です。

以上のように生産性の高い超効率経営を実現するためには、徹底的なタイムマネジメントによって、仕事の実態を見える化し、改善ポイントを明確にしていくこと、まずはこれをファーストステップとして推進していくことが重要です。

今回はホワイトカラー生産性向上のキホンのキとして、タイムマネジメントの要諦をご紹介しました。詳細については是非お問合せ下さい。是非皆様のホワイトカラー生産性向上に貢献していきたいと思っております。

この記事に興味をもったらメールで送信して共有! ×

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。