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アクションにつなげるための生産性指標

日本企業の生産性向上が叫ばれる背景

日本は米国ギャラップ社の調査でエンゲージメントが低いという結果や、一人当たりの平均労働時間と一人当たりの名目GDPから算出される「時間当り名目GDP」が、先進国比較で米国やドイツに比べて大きく差を広げられているという結果から、いろんなところで「生産性向上」が叫ばれております。

公益財団法人日本生産性本部の『労働生産性の国際比較2021』によれば、日本の時間当たり労働生産性は49.5ドル(5,086円)で、OECD加盟38カ国中23位で、実質ベースで前年から1.1%上昇したものの、順位は1970年以降最も低くなっています。また、就業者一人当たり労働生産性は78,655ドル(809万円)であり、OECD加盟38カ国中28位でした。

総務省統計局『労働力調査』2021年版によると、日本の労働力人口(15歳以上のうち就業者と完全失業者を合わせた人口)は6830万人、前年比38万人もの減少となっており、そもそも生産性のもととなるインプットの労働力人口自体が毎年減少している状況です。そのような中で、各企業は今まで通りのアウトプット、成果、さらには今まで以上の成果を出していくことが求められています。

これらを見ても各企業で「生産性向上」が叫ばれる事態が納得できます。

アクションにつなげるための生産性指標「一人当たり利益」

株式会社people first 代表取締役 八木洋介氏より、弊社CHRO賢人倶楽部の会の中で、生産性を見る一つの指標として『一人当たり利益』をご説明いただきました。生産性を見る一つの指標として「一人当たり利益」を推奨する理由としては、要素分解していくと、アクションにつながる指標、つなげやすい指標という面からとなります。

算式を分解しながら、八木氏の説明内容に弊社の考えも追加してご説明していきます。


利益 =売上-コスト
   =価格✕販売量 - (賃金✕労働力+その他コスト)

ここで、両辺を「労働力」で割ると以下の算式になります

利益/労働力(一人当たり利益:生産性)
   =価格 ✕ 販売量/労働力 - 賃金 -その他コスト/労働力

上記の算式の通り、一人当たり利益(生産性)は1)価格、2)販売量/労働力、3)賃金、4)その他コスト/労働力に分解されます。つまり、生産性を上げるということは、理屈上は、価格を上げる、一人当たり販売量を上げる、賃金を下げる、その他コストを下げる、ということになります。

各要素を改革していくアクション

1)価格
『価格を上げる』、簡単なようでこれは非常に難易度が高くなります。何もせずに価格を上げてしまうと、どうしても販売量が減ってしまいます。そのため、販売量を減らさないで価格を上げるためには「イノベーション」が必要になってきます。顧客価値を創造して価格を高めていくことが求められるため、最近では顧客体験(CX)、ユーザー体験(UX)が注目されております。我々も多くの相談を受けますが、顧客価値創造は本当に簡単なことではなく、各社苦労をしながら推進をしております。

そのような中でご紹介したい事例が「価値獲得型イノベーション」です。これは弊社学術顧問 兵庫県立大学 国際商経学部 教授 川上昌直先生が、著書『収益多様化の戦略: 既存事業を変えるマネタイズの新しいロジック』の中で説明されている内容で、今までのイノベーションのルートである、既存事業から顧客価値創造をして、次にマネタイズしてくために企業価値を獲得するステップ(X1→Y2)を踏むのではなく、既存事業から企業価値を獲得すること(利益をどう獲得するか)を先に考えて、それを実現していくために顧客価値創造を実現してくステップ(Y1→X2)となります。

【図1】価値創造型イノベーションと価値獲得型イノベーション

【図1】価値創造型イノベーションと価値獲得型イノベーション

例えば、既存ビジネスモデルにおいて売り切り型ではなく、サブスクリプション型にすることで生涯収益を高めていくことがその代表例になります。サブスクとして生涯収益を高めるためには解約率を極力ゼロに近づけていくことが求められますから、そのために顧客価値をどう高めていくか、魅力を高めていくかをSTEP2として検討していく流れになります。

また、COSTCO(コストコ)のように、会員制にして年間会費を収益の一部とすることで、儲ける課金のタイミングを変えるといった利益イノベーションを実現して、そのために魅力あるお店にして行くために「アミューズメント✕物売り」型にしていく工夫をしていく、といった例があります。

また、顧客だけではなく、取引先から利益を得ることや、競合から利益を貰うことを考えたときに、例えば自社の保持している社内データが価値あるものであれば、そのデータを取引先や競合に売るビジネスを立ち上げたり、核となるビジネスとは異なる周辺ビジネスは他社と協業することによって利益を生み出すなどがあります。

このように価値創造イノベーションからではなく、価値獲得イノベーションから検討し利益をどう獲得するかを先に考えて、そのためにビジネスモデルをどうするかを検討していくやり方で各社成功している事例があります。

【図2】代表的な30の価値獲得での事業利益の生み方

【図2】代表的な30の価値獲得での事業利益の生み方

少し「価格を上げる」とは話がズレてしまいましたが、販売量を減らさず価格を上げていく、収益を拡大していくためには「イノベーション」が必要で、「価値創造イノベーション」も大事ですがどうしても難易度が高いため、「価値獲得イノベーション」からスタートしていくことがポイントとなります。

収益多様化の戦略

川上 昌直 (著)
収益多様化の戦略―既存事業を変えるマネタイズの新しいロジック

2)販売量/労働力
販売量/労働力、つまり一人当たりの販売量を高めることが、生産性(一人当たり利益)向上につながります。そのために1つの方法は、労働力を下げる、つまり、人員削減、長時間労働の削減などが該当します。しかし、労働力を下げると販売量が減ってしまうことも発生します。よって一人当たりの販売量を上げるために重要なことは、『無駄をなくす』『スキルを上げる(スキルがマッチした配置にする)』『やる気を上げる』ということが大切になります。

-『無駄をなくす』
このためには、やはり業務改革で、無駄な業務、非効率な業務、無意味な作業などは廃止していく、簡素化していくことが重要となります。しかし日本企業はずっと業務改革をしてきておりますので、また業務改革せよ!となると現場からはもう散々やってきた、またか、と他人事のような成果の出ない取り組みとなってしまいます。よって各部門の本来業務が何かを明確にして、本来業務にシフトするために、付加価値の低い業務を効率化していくというステップを踏んでいくことが大事になります。(詳細はこちら:建前で終わらせない本当の日本企業変革 ~組織と人の価値を高める業務改革~

-『スキルを上げる(スキルがマッチした配置にする)』
VUCA時代において状況がどんどん変わっていく中で、昔ながらの営業スタイルでモノ売り営業スキルだけでは対応できないことも多くなってきています。最近ですと「リスキル」「リスキリング」といったワードが流行っておりますが、提案型営業、コンサル型営業などといった形でスキルを向上させることが重要になります。

具体的には、(STEP0)目的、狙い、背景の確認を実施し、(STEP1)要求される知識、行動水準、スキルといったものを再定義して、(STEP2)例えばですが、e-ラーニングと習熟レベルテストを連動させた学習プログラムの設計をし、実行していき、(STEP3)人財のスキル・行動特性を「視える化」して、戦略的に配置していく、ということが求められます。

【図3】リスキリングの進め方事例

【図3】リスキリングの進め方事例

-『やる気を上げる』
やる気が上がれば、成果は2倍にも3倍にもなるとよく言われております。最近では「エンゲージメント」が話題になり各企業も人事部門が中心となって、エンゲージメントを高めるために、まずは「視える化」からスタートしております。ただ、各企業においては「視える化」だけになってしまい、人事部門が主体となってやるのか、各現場が主体となってやるのか、若干押し付け合いにもなっている企業もあるようです。我々は「調査→施策検討」型ではなく、仮説検証型で「施策実行→調査」といった形でエンゲージメント向上へのアクションにつながる方法で各企業を支援しております。

販売量/労働力、つまり一人当たりの販売量を高めるために、強制的に施策無しで残業禁止といった形で推進しても、かえって販売量が減ってしまっては意味がありませんので、しっかりと無駄をなくし、スキルを向上させて、やる気を上げることが重要となります。

3)賃金
これは基本的には手を付けてはいけません。状況にもよりますが極力実施しないことをお勧めいたします。

4)その他コスト/労働力
人件費以外のコスト、基本的には外部から購入しているコストについては、単なるお願いだけして値下げ交渉するのではなく、しっかりとデータに基づいて価格交渉、値下げ交渉をすることが大事になります。我々のようなコンサルが保持するコストテーブルをもとに、市場水準や他社水準との比較の観点から過剰コストを検知して削減してく方法や、品質に大きな差がないものであれば、リバースオークションで、競争入札を実施していく方法や、そもそも論で不要なコストを洗いだし削減をしていく方法などをあわせ技で実施していくことが重要です。しっかりと着実に地道に無駄を排除していくことが大切です。(詳細はこちら:コロナ禍で勝ち残るための間接費用削減(完全成功報酬型コストダウン)

利益/労働力(一人当たり利益:生産性)=価格 ✕ 販売量/労働力 - 賃金 -その他コスト/労働力
をひとつの指標として、アクションにつなげて生産性を高めていくことが重要となります。
生産性を上げるための弊社サービスが様々ありますので、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

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