ワーク・エンゲージメントを理論で捕まえろ
~従業員の心に熱き炎を灯すには~

日本企業は、少子高齢化の進展による人財不足やグローバリゼーションによる海外企業との比較の脅威に晒されています。もはや、継続的に生産性を向上させなくては企業存続の危機に陥る可能性すらあるでしょう。
生産性向上に向けたアプローチには様々ありますが、その中で特効薬とも言えるのがエンゲージメントです。これまで数多くの研究によって、エンゲージメントと様々な指標(組織コミットメント、仕事のパフォーマンス、自発性、離職率・定着率、健康 等)の間には、ポジティブな相関があることが分かっており、注目すべき人事戦略上の課題の1つと言えるでしょう。
今回は、効果的なエンゲージメント向上施策を実行するためのポイントを解説します。
 
※本記事では、様々なエンゲージメントの中でも、ワーク・エンゲージメントに関して記述しています。

そもそも、エンゲージメントって?高めるための仕組みとは?

エンゲージメントという捉えどころのない概念

エンゲージメントという言葉が日本で流行してから既に数年が経過し、サーベイを行われている企業も増えており、自社のエンゲージメントがどの程度の水準にあるのかを把握されている経営者や人事部門の方は多いと思います。
しかし、「貴社のエンゲージメント向上を阻害する真因はなんですか」という問いに、明確に応えられる企業は少ないのではないでしょうか。

厚生労働省が紹介する「JD-Rモデル」

令和元年、厚生労働省が「労働経済の分析」を発表しました。
今後ますます進展する人手不足によって、従業員の働きがいや意欲が低下することが懸念されており、企業においては「働きがい」をもって就労できる環境整備に取り組むことが、重要な人事戦略上の課題であるとされています。同時に、働きがい(=ワーク・エンゲージメント)を包括的に捉え、向上させる要因を明らかにするため、JD-R(仕事の要求度-資源)モデルを紹介しています。

このモデルによれば、それぞれの仕事を遂行するための“仕事の資源”(裁量、パフォーマンスへのフィードバック、コーチング 等)や“個人の資源”(自己効力感、楽観性 等)が豊富であればエンゲージメントを高めることができ、ポジティブなアウトカムに繋がることが示されています。
つまり、ハイレベルな仕事であったとしても、会社からの豊富な支援が得られ、従業員個人の強さが発揮できるのであれば、圧倒的な生産性を発揮することが期待できるということになります。

【図1】エンゲージメントを予測するJD-Rモデル(厚生労働省「令和元年度 労働経済の分析」をもとに、当社作成)

エンゲージメントモデルに基づいたピープル・マネージャー

獲得・損失のスパイラル

また、JD-Rモデルの特長として、アウトカムは仕事や個人の資源に影響を与えるインプットにもなっている“スパイラル構造”であることが挙げられます。
エンゲージメントが高位であれば、仕事の成果に繋がり、ますます自信やモチベーションを高めることができるという良い側面がある一方で、エンゲージメントが低位にあると再び向上させることは至難の業になり、一人では立ち直れないという状況になりかねません。
例えば、仕事での大きなミスがあると、次も失敗してしまうだろうと弱気になってしまい、弱気になることで仕事に集中できない、という経験がある方も多いのでは無いでしょうか。

【図2】「一人では立ち直れない」スパイラル構造(厚生労働省「令和元年度 労働経済の分析」をもとに、当社作成)

一人ひとりの“個人”へのアプローチが鍵

そのため各企業では、従業員一人ひとりへの緻密なアプローチを通して、個人の心理的状態や会社に期待する支援の把握、一人では対処できないほどに過度にストレスフルな状況になっていないかを把握、対策を打てるようにする必要があります。

経歴や評価結果を元にしたフォローアップを実施されている企業は増えてきていますが、もう一歩踏み込んだ施策が必要です。
従業員それぞれを“組織目的の達成に向けた資源・リソース”というだけで捉えるのではなく、共に会社の価値を高めるための重要な資産、会社と対等な関係にある存在として捉えた上で、真摯に接し、実際に現場に足を運んでキャリアや悩みを相談できるような「ピープル・マネージャー」が必要であると、我々は考えています。

【図3】ピープル・マネージャーの役割

事例:某大手飲料メーカーのHRBP

某大手飲料メーカーでは、HRBPの大きな役割としてエンゲージメントの向上を掲げ、キャリア自立支援やライフイベントとキャリアパスの一致を行うために、新卒・中途入社問わず、現場の全ての従業員との面談を実施しています。
元々、支店長や工場長 等であった「現場の痛みや苦労、実態、業務知見」を誰よりも知っている「頼れる兄貴、姉貴」とも言える方々が、全営業所・工場を行脚し、直接面談を行うことで、キャリア志向 等を傾聴・質問し、あれこれ指示をするのではなく、従業員自らが「目標のために何をすべきなのか」を見つけるサポートを行っています。
また当該活動の中で知り得た状況はタレントマネジメントシステムでデータ管理を行い、人事異動 等での重要な情報として活用されています。

エンゲージメント向上を加速する組織・DX

エンゲージメント向上のため、今検討すべきことは何か

これまで紹介してきたように、エンゲージメントを向上するためには、従業員一人ひとりの価値観や仕事観を明らかにしながらも、仕事の要求度合いによって今まさにどのように感じているのかを視える化することが重要です。

また、ピープル・マネージャーがタレントマネジメントシステムを活用することで、個々人のキャリア志向・スキル 等の情報に基づいて、キャリア開発機会の提供やスキルアップの方向性に関するアドバイスやコーチング 等が行えるので、継続的に成果を発揮し続けるための後押しになります。
さらに、年に一度のエンゲージメントサーベイではなく、リアルタイムで従業員の心理的状況を把握するためのパルスサーベイを組合せることで、「今、まさに現場で何が起こっているのか」「どの現場で問題が発生しているのか」も認識できるようになるでしょう。

そして、これらの情報をBIツールで組合せ、可視化することで、経営・HRBP・現場で一貫した情報に基づいた双方向の対話が可能になるものと我々は考えています。

詳細なナレッジ・事例を紹介します

弊社では、エンゲージメントに関するナレッジ、HRBP組織・機能設計、豊富なタレントマネジメントシステムやBIツール導入事例 等の情報提供が可能です。ぜひ、一度お問い合わせいただけましたら幸いです。

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この記事の執筆者

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