予算作成、うまくいっていますか?
~目標達成のための戦略的予算策定~
企業活動が複数の従業員の行動から成り立っている以上、これは、それぞれの従業員が予算達成につながる行動を確実にとれているかにかかっています。
そのためには、そもそもの予算が絵にかいた餅ではなく、いかに達成の道筋が見えるものであるか、つまりどこまで戦略を込められているかが非常に重要になります。
VUCA時代といえども、何の計画も戦略もなく行動していては、目標達成はできません。様々な従業員を動かし成功するためには、戦略を込めた予算を策定し、それぞれがそれを腹に落として行動するということが必要です。
今回は、会社が成長していくための目標達成につながる、戦略的予算策定方法についてご紹介します。
業績管理上の問題の多くは、実行前の予算策定が原因
月次、四半期の業績報告、活動報告において、こんなことが起こっていませんか?
- 各部門の活動報告上は目標達成しているのに、業績は目標に届いていない。
- 予実差が恒常的に発生し、十分な解決策があがってこない。
- 聞きたい内容と、報告される内容がずれている。
一方の報告者側の立場からすると、
- そもそもなぜ自部門はこの目標値なのか納得感がなく、達成のための道筋が見えないまま数字だけが割り当てられている。
- 毎回報告した内容とは別の情報の報告を求められ、そのための情報収集、数字の作り込みに時間がかかってしまう。
- 報告の場では、できていない部分について対応策を求められるが、解決に向けたアドバイスはなかなかもらえない。
こういった問題は、日々の事業活動の前に、そもそもの予算策定のやり方が原因で発生していると考えられます。
あなたの会社では、予算策定をどんなプロセスでどのくらいの時間をかけて行っていますか?
報告を受けるマネジメントは、報告者の状況、認識する課題をどのくらい理解しているでしょうか?
また、最終的な予算をどの社員も納得して、腹落ちした上で日々の業務を行っているでしょうか?
そもそも予算策定はどうやるべきか
予算は一般的に、マネジメントや経営企画部門等が設定し、現場部門に伝えるトップダウン方式と、現場が予算の原案を決定し、経営企画部門等でまとめ上げるボトムアップ方式があります。トップダウン方式は迅速な予算策定が叶う一方、予算がノルマのようになったり、現実味のない数値になりがちですし、ボトムアップ方式だと現実的な数値になりますが、達成しやすいハードルの低い数値になりがちというそれぞれのメリット、デメリットがあります。
そのため、ある程度の規模の会社ではトップダウン方式とボトムアップ方式を融合した策定方法をとっているのではないでしょうか。
【図1】トップダウン・ボトムアップ融合方式による予算策定プロセス
ただこの「融合」という部分が非常に難しく、ここに問題の原因が潜んでいるのです。
一つひとつのプロセスについて、発生している問題の原因と対処方法を見ていきましょう。
①トップダウン:経営者は現場への働きかけを行い、戦略を示す
経営者は、会社として目指すべき方向性から、来期はこれだけ会社としてストレッチしていきたいということを、各現場部門に伝えます。このWHYの部分の伝え方がまず重要になってきます。
長期ビジョンや中期経営計画を示しているから、それを理解して現場も同じ方向を見ているはずだというのは少し乱暴です。
中期経営計画等で示す大きな戦略と、現場の従業員が日々向き合う状況には大きな隔たりがあります。生み出される日々の実績の積み重ねには、実行部隊となる現場部門の納得性が何より大事です。
したがって、経営者として、WHYについて、自分の言葉で直接、皆がやる気になるような表現で、繰り返し伝えるということが重要です。
また、予算達成のためのHOWはまさに戦略です。これをすべて現場に任せるのではなく、トップの視点でどれだけHOWの頭出しをできるか、それがボトムアップの施策との融合を深める鍵となります。
②ボトムアップ:現場は方向性に納得した上で目標・アクションを具体化する
現場部門としては、WHYが腹落ちできればあとはHOWを詰めていくという作業になります。
どう目標達成するか、事業別、商品別、顧客別といった単位で施策を検討していくことになりますが、その際にまずKGIからブレイクダウンし、KPIを設定していく作業を進めることになります。
この整理をきちんと行わず、今現在向き合っている課題から考えついたままに施策を並べると、メンバーの活動が業績につながらない、施策の必要十分性が客観的にわからず調整が難航するといった事態につながります。
KGI、KPIの整理にはツリーを使います。
KPIを各メンバーのアクションにつながるレベルまでブレイクダウンし、一人ひとり日々の活動で何を意識しないといけないか明確にします。
また、そのKPIを達成するための施策をアクションプランとして設定するという流れになります。ここで、アクションプランに、現場の意思、知恵を反映させることが重要です。トップが頭出しした戦略に、現場の考えを加えてより具体的で効果のあるものに昇華させていきます。
また、整理したKPIツリーを、会社全体できちんと共有し、報告を受ける側の立場の人間も、それぞれのアクションがどのKPIに影響し、どのKPIはどのKGIへつながるのかということを理解する必要があります。また、現在の状況に照らすとどのKPIを重点的に管理すべきかということも共通認識にしておきます。
スタート地点の認識を合わせておくことで、自分が重要だと認識している数値が報告されないとか、報告者からすると報告した内容と全然違う方向から指摘が飛んできて、そのための弁解や情報収集に時間を取られるという自体に陥ることを避けられます。
【図2】KGI・KPIツリーの整理とアクションプランの策定
③調整:経営企画部門はただの調整役ではなく、融合のための触媒となる
現場部門が仕立ててきた予算を調整する際に大事なのは、各部門から出てきた数字の帳尻を合わせることではなく、ツリーの理解とともに、予算(KGI)達成のためのKPIとして妥当な目標が設定されているか、KPI達成のためのそれぞれのアクションプランが有効かを確認し、フィードバックする作業です。戦略の有効性を検証していく非常に重要なプロセスです。
現場に作らせた予算をマネジメントが承認するのではなく、設定されたKPIやアクションプランの適合性や整合性、必要十分性を議論し、不十分なら、トップダウンとボトムアップそれぞれの視点で、共通の指標の理解のもと、有効な施策を検討するための知恵を出し合う。経営企画部門等は、そのための推進役となるべきです。
予算策定プロセス改善のために予算管理システム等のツール導入を検討される企業は多いですが、ツールを導入するだけで改善するのは、数字を収集・集計する作業にかかる工数だけです。
その前に、自社の予算策定プロセスが、達成への道筋を共通認識化し、会社として十分に戦略を盛り込めるものになっているか見直してみるべきではないでしょうか。
レイヤーズでは、ツール導入だけでなく、それ以前の予算策定プロセス改善、KGI・KPIの整理やアクションプランの見直しからその運用管理までご支援させていただきます。冒頭に述べた事象が起こっているという場合、ぜひお問い合わせください。
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この記事の執筆者
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佐藤 美穂子経営管理事業部
ディレクター -
杉野 林太郎経営管理事業部 兼 ERPイノベーション事業部
ディレクター
公認会計士 -
大橋 遊経営管理事業部
マネージャー
職種別ソリューション