二つのビジネス・トランスフォーメーション(BX)の進め方
~ビジネスモデルとビジネスプラットフォームの変革を如何に進めるか~

現在のビジネスを変革しようと、ビジネス・トランスフォーメーション(BX)を進める会社が増えてきております。BXは、ビジネスモデル・トランスフォーメーション(BMX)とビジネスプラットフォーム・トランスフォーメーション(BPX)の二つがあり、BXにおける車の両輪の役割を果たし、同時に進めていかなければいけません。
今回は、この二つのBXの進め方のポイントを解説します。

ビジネス・トランスフォーメーション(BX)は2つある

ビジネス・トランスフォーメーション(BX)の推進を謳っている会社が増えてきておりますが、BXと言っても色々な意味で使っているケースが多く、場合によっては単なる業務改革のことを指しているケースもあります。

レイヤーズ・コンサルティングではBXを、下図にあるようにバリューチェーンにおける<Layer1>ビジネスモデル・トランスフォーメーション(BMX)と<Layer2>ビジネスプラットフォーム・トランスフォーメーション(BPX)として定義しています。

【図1】二つのビジネス・トランスフォーメーション

2つのBXは、BXにおける車の両輪の役割を果たしますので、同時に進めていかなければいけません。

ビジネスモデル・トランスフォーメーション(BMX)とは

1つ目のBXであるビジネスモデル・トランスフォーメーション(BMX)は、ビジネスモデルそのものを変革したり、新たなビジネスモデルを創出したりすることです。今回は、このビジネスモデルの変革・創出のための1つの方法をご紹介します。

ビジネスモデルは、ビジネスのやり方のパターンです。従って、ビジネス要素の組み合わせを変えることによっても、新しいビジネスモデルが生まれます。当社では、ビジネスモデルの変革に当たっては、下記のバリューマップを利用します。

【図2】バリューマップ

先ずはバリューマップに検討対象の市場における顧客セグメントと市場プレーヤーをマッピングし、更に市場におけるビジネス要素を、バリュー、利用・使用、提供、モノ、ソフト、サービス、保守・メンテナンス、ファイナンスに分けてマッピングします。この時、できるだけ広く市場を考えてビジネス要素をマッピングした方が事業アイディアの創出につながります。また、ビジネス要素と合わせてそれぞれの収益・コストもプロットすることにより、収益・コストマップも出来上がります。

次に既存のビジネスモデルの組み合わせを明らかにします。例えば、自動車市場におけるカーシェアリングならば「マンション居住者、便利に買い物、低コスト、所有の煩わしさ、車両、駐車スペース、予約システム、車両メンテ、時間貸し、サブスク(個人)」、レンタカーならば「旅行者、楽しく旅行、移動の煩わしさ、楽しい音楽、車両、ナビ、オーディオ、店舗、車両メンテ、時間貸し、レンタル」などとなります。

次に新しいビジネスモデルの組み合わせを考えます。既存のビジネスモデルに別のビジネス要素を追加することも有効です。例えば、「カーシェアリング」+「リモートワーカー、ブース、車内テーブル、Wi-Fi、充電、サブスク(法人)」で「リモートワークペース・シェアリング」とかアイディアを出来る限り出していきます。

その中から収益獲得の大きい有望なビジネスモデルのアイディアをビジネスモデルキャンバス等に整理・具体化し、事業化に繋げていきます。

【図3】ビジネスモデルキャンバス

ビジネスプラットフォーム・トランスフォーメーション(BPX)とは

2つ目のBXであるビジネスプラットフォーム・トランスフォーメーション(BPX)は、ビジネスプラットフォームを変革することです。ここで言うビジネスプラットフォームとは、ビジネスを行うための制度・ルール、組織、業務運用基盤等の共通インフラです。新たなビジネスモデルが生まれても、下図のようにこのプラットフォームに乗れば事業運営がスムーズに行えるようにするものです。こうすることにより、各ビジネスユニットは事業の探索と深化に専念でき、身軽な事業運営を実現することができます。

【図4】ビジネスプラットフォームのイメージ

ビジネスプラットフォームは、調達、生産、販売、サービス等のフロント系のプラットフォームと、人事・労務、会計・財務、経営管理等のバック系のプラットフォームがあります。

また、ビジネスプラットフォームの要素は、例えば生産領域であるなら、下図のように制度・ルール、プロセス、組織、情報・ICT、モノ、リソース等の要素から構成されます(他の領域でも同様の要素から構成されます)。

【図5】生産領域のビジネスプラットフォームの構成要素

ビジネスプラットフォームは、各事業ユニットが共通して守ったり、利用したりするインフラであり、各ビジネスユニットが物事を正しく行うために必要なものです。当然ビジネスモデルによっては、このビジネスプラットフォームだけでは足りない部分も出てきますので、そこに限定してそのビジネスモデルの固有の仕組みを構築していきます。

日本企業はこのビジネスプラットフォームの考え方が弱いと言えます。例えば、ERPをグループ全体で導入しても、このビジネスプラットフォームの考え方が弱いため、結果として同じERPであるがグループ各社で設定やマスタ等がバラバラとなり、ERPのメリットを最大限に活用出来ていない企業も多くあります。また、海外企業から会社を買収した際に、買収後に海外企業のビジネスプラットフォームからその会社が切り離されてしまい、慌ててその会社用のプラットフォームを用意するといったことも多く見受けられます。

また、日本企業の収益性の低さは、このビジネスプラットフォームの構築が遅れているからとも言えます。例えば、経理、人事等の機能はグループでSSC化して、最小のリソースで運営すべきですが、各子会社に残してしまい、グループとしての規模の経済を享受できずコスト高になってしまっています。日本企業は、モノづくりの現場では非常に優秀なコスト競争力を有していますが、このビジネスプラットフォームの構築が遅れているため、全体としては国際的コスト競争力を失っていると言えます。

以上のようにBXを進めるためには、二つのBXを進める必要があります。ビジネスプラットフォームの変革は時間がかかるために、ビジネスモデルの変革が先行しがちです。しかし、ビジネスプラットフォームを構築しないと、新たなビジネスモデルのコスト競争力がなくなり、市場から撤退を余儀なくされてしまいます。二つのBXを同時に進めることは大変な苦労が待ち受けますが、皆様とBXを推進し日本企業の復活を実現していきたいと思います。

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