リーダーシップって本当に必要?
~100年続く企業に変わる~

変化できない企業は滅ぶ、イノベーションのない企業は衰退すると言われています。また、日本経済、日本企業の長期の停滞の理由が、イノベーションを起こす力の衰えとも言われています。イノベーションは誰が起こすか、イノベーションの創出にはリーダーの存在が大きく関わっています。
 
今回は、イノベーションを起こし続け100年続く企業になるために、リーダーはどうあるべきか、リーダーシップをどう発揮すべきかのポイントをご紹介します。

リーダーシップとは何か?

リーダーシップとは、組織を率いる資質や能力を言います。
リーダーシップのタイプには、ビジョン型、コーチ型、関係重視型、民主型、専制型など様々なタイプがありますが、組織を率いるまたは組織のメンバーに影響を与えるということでは共通しています。

【図1】リーダーシップのタイプ

では、企業においてイノベーションや変革は誰が起こすのでしょうか。リーダーでしょうか、リーダー以外のメンバーでしょうか。

今回は「リーダーがイノベーションや変革を起こすと考える組織」と「個々の組織メンバーがイノベーションや変革を起こすと考える組織」について考察します。

リーダーが変革を起こすことは必然か?

まずは、「リーダーが組織を引っ張って変革を起こす、変革を起こすことがリーダーの役割だと考える組織」について考えます。

ここでは、当然強いリーダーの存在が、変革のため不可欠になります。
古今東西の歴史を見ても強いリーダーが国や軍を率いて勝利していく姿に心躍らせることがあります。強いリーダーがいたからこそ、必然的に勝利し、その国や軍を繁栄させていったのだと。
一方その陰では、強いリーダーがいたにも関わらず負けて消えていった国や軍があります。多くの歴史家がその違いを考察していますが、起こった結果から原因を考察していますので、勝つのも必然、負けるのも必然、歴史にはIFはないといったことになります。

しかし、逆から考えると、無数の選択肢からたまたま偶然でその結果に至ったとも考えられます。例えば、勝率8割でも10回連続で勝てる確率は1割にすぎません。つまり、勝つのも偶然、負けるも偶然であり、リーダーの存在は多くの原因の中の1つに過ぎなくなるのではないでしょうか。こう考えると、必ずしも変革はリーダーが起こしたとも言い切れません。

【図2】勝率8割でも、10回連続で勝てる確率は1割

また、なぜ強いリーダーに率いられた組織が、時とともに永続せず、衰退し滅んでいくのでしょうか。それはリーダーを引き継いだ次のリーダーのリーダーシップが弱いせいでしょうか。

リーダーが組織を硬直化させる?

強いリーダーが率いる組織は、多くの場合ピラミッド型組織になります。
ピラミッド型組織は少なからずリーダーへの依存性が存在します。具体的には、意思決定の一部を上位者に依存する関係です。この依存性が、組織の硬直化を招きます。
古今東西の強いリーダーのもと繁栄した組織が、その後硬直化(官僚化)してダメになった事例は枚挙にいとまがありません。

では、なぜ硬直化を招くのでしょうか。ここでは3つの点から考えてみます。

【図3】リーダーへの依存性が組織の硬直化を招く

1点目は、意思決定の「複雑化」です。
通常、組織において意思決定は分権化(委譲)されますが、上位者への依存性により相互の意思決定が関連し複雑化し、意思決定に時間を要し、変化が遅れるのです。日本におけるハンコ文化やすり合わせ文化はこれを象徴しています。

2点目は、意思決定の「限定合理性」です。
意思決定の一部が必ず上位者に依存するため、下位者の意思決定が限定合理性しかもたないということです。意思決定において限定合理性しかない場合、意思決定の失敗を招きやすくなります。このため、今度は下位者が意思決定を回避・躊躇するようになり、変化が起こりにくくなります。

3点目は、「失敗への恐怖」です。
自分の失敗を認めることで今の権威や地位などを失う恐れから、失敗の本質から目を逸らすことです。これは自分の失敗ではない、他責なのだと。これにより組織は失敗の本質を学習せず、同じ過ちを犯し続け、変化できなくなります。

こうした組織の硬直化を変えられるのは、強いリーダーしかいません。しかし、強いリーダーの存在が、組織の硬直化を招き、また強いリーダーを必要とするという皮肉な結果になるのです。逆説的に言えば、リーダー自らが永続性を阻害していることになります。

リーダーのいない組織とは?

もう一つの考え方は、「イノベーションや変革は個々の組織メンバーが起こすと考える組織」です。

そこにおいては、組織を強力に率いるという意味でのリーダーは不在です。
経営理論にシェアードリーダーシップという考えがあります。組織の複数の構成員、または全員がリーダーシップを発揮するという考え方です。天敵がいるかもしれない海に最初に飛び込むペンギンをファーストペンギンと呼びます。ペンギンの群れにはリーダーはおらず、みんなが最初の人になれるのです。
シェアードリーダーシップにおいては、メンバー全員がリーダーとしての役割・意識をもち、お互いに積極的に「知」の交換を行います。そして衆知の中から、新しい「知」=イノベーションが生まれると考えるのです。

こうした組織はどんな組織でしょうか。フレデリック・ラルーによって唱えられたティール組織(Teal)がこれに近い組織です。

【図4】フレデリック・ラルーの5つの組織
「Reinventing Organizations(フレデリック・ラルー著)」より当社にて作成

ティール組織は、組織を一つの生命体のように考えます。ティール組織は、進化する目的(パーパス)、ホールネス、セルフマネジメントを特徴としています。ボスがいない自律分散型組織とも言えます。
代表的な企業としてパタゴニアが有名です。日本では「丸見え経営で日本一の安さを追求」を謳うメガネ21も管理者がいません。

イノベーションや変革も偶然的要素が強い?

では、なぜこのような組織でもイノベーションや変革を起こしていくことができるのでしょうか。

イノベーションや変革は、偶然が生み出す要素も強いのです。
生物の世界で2:8の法則があります。例えば、蟻の群れには必ず他の蟻より働かない蟻が2割いる、その2割の蟻を取り除くと、また2割の蟻が働かなくなるといった法則です。働かないというより、別の行動をとると考えると、自ら多様性を生み出しているとも言えます。
これにより、急激な環境変化が起こった時に生き残る個体を確保すると言われています。全部が同じ行動をとって全滅するより、少しでも生存する個体を確保しようとしているのです。
これは、環境の変化に対し、組織の余裕度をもたせ、生存確率を高める方法と言われています。昨今、組織において多様性が求められるのはこうした理由からくるのかもしれません。

イノベーションにも「凡才の集団は孤高の天才に勝る:グループ・ジーニアス(キース・ソーヤー)」と言われるように、衆知のなかでイノベーションは生まれるという考え方があります。
中田有キーエンス社長が、日経ビジネスのインタビューで「衆知を集め、考え抜くことで良い結果が生まれる。こうした積み重ねが、仕事のやりがいや良好な社内風土の維持にもつながる」と語っています。この点で、キーエンスはこうした組織に近いのかもしれません。(日経ビジネス 2022年2月21日号)

この考え方からすれば、イノベーションを起こす環境を作る意味ではリーダーは必要と言えますが、イノベーションにリーダーは必然ではありません。そしてこの環境をずっと維持できれば、リーダー不在であっても、組織はイノベーションや変革を起こし続け、生き残り続けるのではないでしょうか。

今回は、イノベーションや変革を起こす上で2つのリーダーシップの考え方を提示させていただきました。
激しい環境変化の中で、今までの経営理論も通用しなくなってきています。経営や組織を新しい時代に向けてアップデートしなければ、生き残れません。前述のキーエンスでは、経営理念のトップに「会社を永続させる」を掲げ、会社の至ることころに「化石」を置き、永続へのメッセージを伝えています。(日経ビジネス 2022年2月21日号)
レイヤーズ・コンサルティングは、皆様と一緒に100年続くような企業に変わっていくことを実現していきたいと思っております。

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